<Packing must always perfect>





テッドがテレポートした先にいたのはクロスにセノ。
どこかの空き部屋を失敬しているのだろう。部屋の中は蝋燭の灯り一本のみ。

「お疲れサマー」
「……おう」
相変わらず気絶したままのコンラートを引き取ってもらい、セノの治療を受ける。
これからも相変わらずの強行軍なので、できるだけ体制は万全にしておく必要があった。

コンラートの腕を縛っていたシグールのバンダナを外して普通の縄で縛りなおし、ついでに足も縛っておく。
流石にこのままだと凍死するので毛布を巻いてぐるぐると縛り、仕上げに猿轡をはめた。
一見してもどう見ても芋虫である。


「じゃあ後は頼んだぞ」
「了解」
そっちも頑張ってね、と部屋を出て行くテッドとセノへ手を振る。
その足は小さく呻いたコンラートを再び夢の世界へと送っていた。

縄が緩くないか確認して、クロスは暇そうにしていたルックに声をかける。
「ルック、フタ開けて」
面倒くさそうに足でフタをどけるルックに苦笑して、よいさっと中にコンラートを入れた。

ジョウイが船の上でとんかんやっていた箱である。
砂粒ひとつ零れないようにと密閉された中の暗さは推して知るべし。
もともとこのために作っておいたのだからその頑丈さは抜群である。

ふたを閉めてテープできちんと封をした。
梱包の完成である。
本物の箱も持って帰るためこの部屋にあるが、一見すると本当に宅配便の荷物だ。

テレポートで運ぶだけなのにこんな面倒な事をする必要があるのかという問いはなしである。
何事も気分。



「じゃぁ僕らは先に帰ろうか」
「うん」
でもその前に。
「ルックーv」
「……どうしたの」
「最近二人きりってなかったから」
欠乏症、と呟いて思い切り抱きしめてくるクロスを抱き返して、肩口に顔を埋める。
暗がりで二人きりだから誰にも見られることはない。

顔を少し赤らめながら、僕もと呟いたルックに破顔して、クロスはゆっくりと唇を寄せた。








「……ねぇ」
「何?」
「あれ、さすがに空気穴つけないと、死ぬんじゃない?」

その言葉にクロスはしばしの沈黙の後、ぽんと手を打った。




 



***
これがしたいがための30余話。
そしてこの尻拭いであと○話。
・・・・・・しかし短い。

Packing must always perfect:何事も常に漏れなく行え