<Leave the biggest trouble last>
勝ち抜き! 天下一武道会優勝記念パーティ前。
なんだか不穏な空気が染み出してくるような部屋があった。
その前の廊下は通行禁止にされ、メイドも誰も通らない。
そんな部屋の中に誰が居たかというと――つまるところの「腹黒メンバー」ならぬ、暗いところ担当sが集っていた。
勿論中心にいるのはテッドである。
その左右にヨザックと村田だ。
回復したシグールもなかなか黒い気を発しつつ、事情を聞いたクロスも怒っている。
……つまり、まだ常識というか普通の感覚が一部残っていた人々に、「こいつらほっとくと何するかわからないから一室に突っ込んで冷めるのを待とう」という賢明な判断と、決死の行動の結果、まとめられたとも言えよう。
勿論一番の功労者は無敵スマイルでお願いしたセノ――と言いたいところだが、テッドを部屋に押し込んだのはルックの風で扉を閉めたのはジョウイだった。
多分一番の功労者はジョウイである。
まだメンバーの中で本人曰く「普通に近い」二名が己及び周囲の精神安定を優先した結果である。
「とりあえず箱は取り戻したわけだね」
そんなバケモノ扱いな(ことは知らないが)村田が部屋の端におざなりに置いてある箱を見ながら言う。
ちなみにその上にシグールが腰掛けていたりする。
勿論ヨザックが作った「ただの箱」ではない。開けたら最後なパンドラの箱、「風の終わり」である。
……その度胸を讃えよう。
「これを本国まで運ぶわけだけど……」
「どーします? まさかこのまま運ぶわけにも……」
「運ぶなら護衛何人かつけて、ルックが送ればいいよ」
横で聞いていたクロスが言うと、ヨザックと村田は首を傾げる。
「ルックは転移術が使えるから。念のため数回に分けて飛べばいい」
箱の問題はそれで解決なのかな、とクロスが笑い、そうだねぇと村田が気の抜けた返答をした。
色々迷っていたんですが、そんなあっさり解決か。
……今までの苦労は。
「あれ、そーいえばジョウイさんがもう一個箱作ってたんですけどね」
船上での日曜大工のことを思い出したのか、そう言ったヨザックにテッドがいや〜な笑みを見せる。
……シグールと実は類友なんじゃないかと、この場に居た全員が思っているのは間違いない。
「あれは、護送用だ」
「「護送?」」
「さらに言うなら梱包」
「「……梱包?」」
ハモった四名に、テッドは頷く。
「とりあえず、帰る前にあのアンポンタンをひっとらえねーとな」
「アンポンタンって……ウェラー卿のことですか?」
「他に誰がいる」
冷や汗を浮かべたヨザックに即答し、テッドはばん、と両手を机の上にたたきつけた。
「よし、ルックにクロスは箱組。その他はユーリを護衛しつつ本国へ向かう」
「……ウェラー卿はどうするのさ」
村田の問いにテッドは答える。
「今晩は記念パーティだろう?」
「そーだね」
「どう思うシグール」
話を振られたシグールは、足をぶらつかせて言った。
「たぶん来るよコンラート。ユーリに会いに」
「ってわけで来たコンラートをぶん殴って連れて行く。完璧」
何か質問は、と言われて「つまり箱は何に使うんだ?」と聞く者はいなかった。
***
説明的で短いデス。
Leave the biggest trouble last:最大の問題は最後に解決(造語)