<Repentance comes too late>





ユーリは!?
叫んで下りてきたジョウイの側に、布を被った人影とシグールの姿があった。
精彩を欠いたシグールも気になったが、とりあえずヨザックは横たえたユーリの全身を確認する。

「幸い、骨は折れてませんが……あれだけ魔法を使うと……」
「消耗が激しいのか……セノは――箱か」
僕じゃ役に立たないなと呟いたジョウイは、何かの気配を察知してぞわりと産毛が逆立った。
目の前にいたルックも、ぴきんと固まって動かない。

「…………」
「テ、テッド……サン?」
ききき、と音がしそうなほどゆっくり振り返ったジョウイは、猛る魔人とかいうものを目撃した。
オーラが見える。
ドス赤いオーラが見えます。

本当に見えます(真顔

「な……にあれ」
無言でジョウイとルックの横を通り抜けて、ユーリの方へ向ったテッドを見送って、ルックが小声で嘆く。
「なん、だろ」
先日テッドに怒られた二名だが、これほどは怖くなかったぞ!? と心中で叫んだ。





彼はまだ目を開けない。
不安そうな表情でヨザックの膝に寝るユーリを見ていたヴォルフラムは、さっきからずっと彼の手を握っている。
ルックは壁の端の方で何をすることもなく立っているジョウイとシグールを見やると、視線をさっきからどす黒い空気を発している人物へ向けた。

「……どうした?」
「……あンの野郎」
「……うん、どうしたのテッド」
ユーリの回復を待つ最中、非常に刺々しい空気を振りまいていたのはルックでもシグールでもなく、テッドだった。
よって、免疫のない面子は避難。

「このテッド様を心底怒らせたことを地獄の果てで後悔させてやらぁ」

怖。
触らぬ神になんとやらだなと思いながら、ルックは視線を泳がせる。
ルックは臨時に備えて外で控える羽目になっていたので、ほとんど一抹を目撃していないのだが、ユーリの対戦相手にコンラートが出てきたらしい。
……すぐにアーダルベルトに変わったが。
ちなみにテッドがどっちに怒っているかと言えば勿論……。

「あのクソッたれ腹黒魔人、なぁにが「ユーリを頼む」だ……今度会ったら裁いてやるっ」
独り言というか恨み言が超ど級で物騒だ。

「……ええ、ちょっとなぁーに考えてんでしょーかねぇー……」
「ある意味あのマッチョマンの乱入もよかったのかもね」
テッド並にどす黒い空気を放っているヨザックと村田は、テッドに調子をあわせた。
「どうするんですか」
「どうするって……コンラートは明らかに操られている様子じゃなかったんだろ?」
「ああ、あれは操られている人間の行動じゃない」
村田の同意に、テッドは頷く。
「って事は自由意志だ」
「そうなりますねぇ」
「……っつーことは、責任対処能力を持つわけだろ」


「テッド……何考えているんだい?」
壁の横でボオッとしている緑バンダナ少年や、箱取替えに行っている赤バンダナ青年や、現在話題の爽やか青年をはるかに凌駕する黒い笑みを浮かべて、テッドは言い放った。


「軽く地獄を見てもらおうと思ってな」


もしやコンラート、そのまま帰ってこないんじゃあと、遠目にその情景を覗っていたジョウイとルックは思って視線を交わした。



 



 



***
短い。
(なぜならこの前が長いから

Repentance comes too late:後悔先に立たず