<Never let yourself too go.>





穏やかな陽光の中、楽しそうにキャッチボールらしきものをしているユーリとセノ。
なんでもユーリ出身のチキュウとやらで有名なヤキュウというゲームらしいが、ジョウイは初めて聞いたのでよくわからない。
最初はボールの投げ方から戸惑っていたセノだったが、ユーリに教えられ慣れてきたのか、大変楽しそうである。
それにちょっと嫉妬して混じっているのがヴォルフラム。
……となれば、自然お役目ごめんになる面子もいるわけで。

「のどかですねえ……」
「のどかだね」
「のどかだなぁ……」
思う事はそれぞれあろうとも、口々に同じ科白を呟く三名。
「ああ、セノは可愛いなあ……」
「ユーリも可愛い」
「…………」
 口々に視界はユーアーオンリーな二人が愛しの君を褒める言葉を紡ぐ傍ら、そーいえばシグールにもあーんなかわいー時期があったなあとしみじみ過去に浸っていたテッドだったが、語る二名に現実に引き戻される。

「「テッド」」
「……なんだよ」
「ユーリが可愛いよな?」
「セノのが可愛いよな?」
「……俺に何と返せと?」

呆れ果てたテッドのコメントを無視して、二人の自慢話は延々と続く。
「ユーリは小さい頃からそれはもう可愛らしくて」
「五歳の誕生日の時のセノは、僕が渡したプレゼントを本当に大事そうに抱えて」
「十五になるのにあの純粋さ、あの芯の通った強さ」
「十四で軍主だもんなぁ、すごいよなあ」
「帝王学など何も習わなかったのに」
「おまけに一国の主だしなあ……」
延々と続けていくとタッチの差でジョウイの方が対象と濃厚な時を過ごしているのが明らかになったので、コンラートは顔の筋肉一つ動かさず、続ける。
「最近少し逞しくなったようで」
「旅ばっかりしてるからね、ちょっと肩のあたりに筋肉がついてる」
「成長するのが楽しみだな」
「セノはもうアレで完璧ですね、抱きごこち良いし」

「……あの」
「はい?」
「ジョウイ、セノとはそういう関係なのか?」
「コンラートさんはそういう関係じゃないんですね?」
「まさか、ユーリの婚約者はヴォルフラムだし」
「でも隙あらばとか思ってますね?」
「…………」
「……ジョウイ」

黙ったコンラートにテッドが汗をたらり流して諌める。
無言で微笑を浮かべたコンラートはどこかの誰かにかぶって、怖い、非常に。

立ち上がったコンラートがユーリ達の方へ歩いて行くと、セノになにやら耳打ちする。
赤くなったセノが音速で走ってきて、その勢い殺さぬままジョウイに蹴りをぶち込んだ。
「ジョウイのバカっ!! もう知らないっ!!」
「ぐ……せ……せの……」
「遺言はあるかジョウイ」
「た、たすけ、ぐふっ」
倒れたジョウイを見下ろして、テッドは冷静に続ける。
「本日昼前ジョウイ死亡、死因はセノの蹴り。享年……幾つだっけ」
「か、かってに殺さないでくださ……」
「……気絶したか」

「コンラッド、セノに何言ったんだよ?」
「いえいえ、ジョウイと仲がいいですねと」
「……何を言ったんだ」
「ユーリ、キャッチボールの続きなら俺がお相手しますよ」





「……だから、お前がコンラートに勝てるわけないだろ? しかも微妙に……」

痛いところ突いたみたいだし。

その言葉は自分の胸の内に仕舞っておいて、テッドはジョウイをそこに放置すると立ち上がる。
たぶん、日暮前にはセノが回収に来るだろう。


 

 


***
コンラートがセノに何を言ったのかは秘密です。
きっとあることない事言ったんだ。

シグールはたぶんルック・アニシナとグウェン・ギュンターで遊んでます。




Never let yourself too go.:調子に乗りすぎるな