<Drive!>

 


カリカリとファミレスでレポートを埋めるもとい写すのに専念していた佐助が、ふっと視線を上げて時計を見ると。
「……あれ?」
「どうした佐助」
正面に座って何かを読んでいた政宗が怪訝な顔を向けてくる。
「いや……ちょっと否定してほしいんだけどさ、まだ六時半じゃないよね」
「Ya」
鷹揚に頷いた政宗に、佐助は恐る恐るの体で聞いた。

「……いま、なんじ?」
「六時二十分」
「イヤァアアアアア!」

押し殺した悲鳴を上げて、佐助はばたばたと道具を片づけだす。
「どうした」
「バイト!」
遅れちゃう! と佐助はがさがさと一切合財を乱雑に鞄に押し込む。
「今日はどこだ」
「モールの寿司屋のバイトから居酒屋!」
「シフトは半からなのか……間に合うのか?」
「無理! だけど走る!」
ごめん政宗お勘定よろしく!
ダッシュしようとした佐助に、まあ待てと政宗は片手を上げて止める。
そしてさっさと自分の荷物を持つとレジへレシートを持っていった。

それどころじゃねぇというのが佐助の本音だ。
どうせ移すならバイト先に近いファミレスにすればよかった。脳は完全に逃避モードだ。
ここからバイト先までチャリをぶっ飛ばして…………十五分。
間違いなくそれだけはかかる。どんなに努力しても十分だ。

無理。
絶対無理。
「佐助、ありがたく思えよ」
会計を終えた政宗が佐助の腕をつかんで引っ張る。
「ちょ、放して俺様」
「乗れ」

ピ、と車のロックが解除される音がする。
え? とか思っている間に皮張りの助手席に投げ入れられた。
「……政宗様、これは」
「俺の車」
「……………………いい車ですね」
「まぁな」
幸村と小十郎以外は乗ったことねぇぜ光栄に思え、と言われながら佐助はシートベルトをつける。
確かにこれならチャリよりは早いだろう……が。

「ちゃんと捕まってろよ」
「……え?」
「Ok,Let's GO!」
エンジンを入れた瞬間、政宗は思いきりアクセルを踏み込む。
「イーヤァー!?」
佐助の絶叫は後ろに流れ、車は勢いよく大通りへと飛び出した。





 


 

***
筆頭の車は黒い日本車のハイブリッドでク●ウンのト●タです(隠せよ