<霧の戦いの場合>



会場はぴりぴりとした緊張感に包まれていた。
リング争奪戦第四戦。
ここまでは、雷戦で大空のリングを剥奪されたものの、戦績では二勝一敗と綱吉達が優勢だ。
XANXUS側としても綱吉側としても、落としたくない一戦な故に、気が入るのは分かる。
分かるが。

「クフフフフフ! 負けませんよこのちまフード!」
「南国果実が吼えるな」
体育館の中央部分で、骸とマーモンが毒舌の応酬を繰り広げられていた。
なんというか、毒舌の応酬だ。
なんでそんなに険悪なんだろう。お互い初対面なはずなのに、と綱吉は痛む米神を押さえていた。

骸が現れると思っていたら突然やってきた「クローム髑髏」と名乗る少女は、戦闘開始の合図の直後、その姿がぶれて、骸が姿を現した。
正直綱吉やリボーンには何がなんだか分からない。
分からないのだが、獄寺や山本は呆れたように首を振り、そして少し離れたところで雲雀が汚物を見るかのような目で眺めていた。

「そもそも雲雀さんが見にきてくれたってことがびっくりだよなぁ……」
「ファミリーの自覚が出てきたってことじゃねーか? それよりあの骸……有幻覚じゃねーな」
「え」
「あの骸、本物だぞ。クロームに見えるように幻覚を作っていたんだ」
「……なんでわざわざ?」
「復讐者の目を逃れるためだろーが」
試合開始直後から思いっきり晒してたら意味がないんじゃなかろーか。
綱吉もリボーンも、骸の真意がさっぱり分からず首を傾げていた。




「負けないよ……今度は」
「クフフ、無様に破裂させてあげますよ」
ひとしきり言い合って満足した……のではなく、たぶんこれではキリがないとお互い悟ったらしかった。
ぐるり、と世界が歪み始める。
幻術師同士の戦いが始まる……と、幻術の恐ろしさを知っている者達は身構え。

即座に目を逸らした。
「……あいつ、馬鹿だろ」
「ぐるぐる回るのなー」
「……幻術にかかりやすいんだから外出とけよ」
「いや、どんな戦いするか気になってたし……なぁ……」
山本すら言葉を濁す戦いの内容とは。


「こんなのあんまりです!」
「殴れるものなら殴ってみるんだね!」
骸の周りをパイナップルが飛び回り、パイナップルを頭に載せた髑髏がくるくる回り、パイナップルを手にしたツナが同じくくるくる回っている。
もちろんあたりに漂うのもパイナップルの香りだ。
まさにパイナップル地獄。
「な、なんで俺……」
綱吉の呟きに答えてくれる者はいない。

骸はパイナップルの中心で何かと葛藤している。
その脳天に、巨大なパイナップルが出現し、そして骸を押しつぶした。
それにて試合終了。



「…………」
「…………」
「…………」
「……馬鹿じゃないの」
唯一吐き出された雲雀の声が、どことなく震えてきた気がした。




結果:○マーモンvs骸×

 

 




***
雲雀さんは笑いを押し殺すのに必至です。
おそらくリング戦として最悪だろう。