<雨の守護者の場合>



入学式よりも何日か経って、俺はようやくツナに気づいた。
今にして思うと勿体無いことこの上なかった。
どうして入学式で声のひとつもかけておかなかったんだと心底悔やんだ、獄寺とかに「お前の目は節穴か」としばしば言われていたけれど、なるほど俺の観察眼はこういう時には役に立たない。

けど、この頃の俺はまだツナのいいところが全然理解できない奴だったんだ。
ツナの凄いところは分かる奴にしか分からない。
だからまだ、野球しか見えてなかった俺は、「ダメツナ」のレッテルを貼られたツナに目を向けられなかった。

だからこそ――だからこそ。
入学式からの一週間以上もの時間を経て、ようやく俺はツナという人物を認識できた。



手で払いのけてしまった消しゴムがツナのところにまで飛んでいって、それを拾ってくれたツナと偶然にも目が合っていなかったら。
俺は今でもツナの凄さに気づけていなかったかもしれない。
そうして先に獄寺が来て――まあ、以前は確かにそうだったんだけども。

ツナの親友になるチャンスはいくらでもあったというのに、それを全てスルーして、自殺騒動を起こすまでだなんて起こすまでに至ったかもしれないと思うと情けないじゃねーか。

けれど幸運にも、俺は無事ツナの親友の座を獲得するに至った。
他の奴らからもツナ自身からでさえも首を傾げられるが、俺は今はただ笑って軽く流すだけだ。


衣替えを迎える頃にはイタリアからリボーンがやってくる。
その記憶に違わず、ツナはある日「家に変な赤ん坊が来てさぁ」と零すようになった。
とうとうか、と思う間もなく、獄寺がやって来た。









――隣の席にいる俺を見たときの獄寺といったらなかった!
歯を見せて笑って見せると、獄寺はあからさまに顔を顰めて「てめぇかよ」と零した。
ああ、こいつも「覚えて」るんだと思うと、妙な嬉しさが湧き上がった。

俺だけかと思ったら、そうではなかったことの親近感とちょっとした残念な思いを抱えながら、俺は獄寺に向かってよろしくなと手を差し出していた。


 

 

 

 




***
(一人じゃないってイイコトだ)