<前世の続き>



「なーXANXUS」
ベッドの上、背中合わせにお互い書類を眺めていたのだが、沈黙を破ったのは綱吉だった。
「なんだ」
律儀に答えたXANXUSは、目を通し終えたのを横に投げる。
「お前、ボンゴレセコーンドに似てるって言われてるじゃん?」
「たまにな」
実際すごくよく似てると思う、と言って綱吉も目を通した書類を脇に積む。
「そして俺が遺憾ながら初代に似てるとよく言われる」
「本当に遺憾そうだな」
不敬罪にあたるんじゃねぇかとからかってやると、いやにもなると呟かれる。
「そのせいで無駄なプレッシャーカウントレスだ。まあそんな事はさておいて」

クリップでまとめた書類を全部床へ放って、綱吉はくるりと身体を回転させる。
XANXUSはまだ手元の書類に視線を落としていたので、その広い背中に飛びついた。
「兄弟だったんだろ?」
「らしいが」
首に腕を回してきた綱吉の言葉に頷く。頷きついでに、未読の書類を混ざらないように重ねて床にぽいっと投げた。
「似てないよなぁ」
「何が言いてぇんだ?」
先の見えない会話にいらついて返すと、なんでもー? と笑った。

くすくす笑いながら綱吉はXANXUSの髪に頬を摺り寄せる。
大きな身体にすっぽり包まれるのも好きだが、こうやって後ろから抱きしめて首に顔を埋めるのも好きだ。
「俺はお疲れなんだ」
「半分書類見てやっただろうが」
「だからちょっと思ったんだけどさ」
綱吉の倍はあるんじゃないかという勢いでがっしりした背中に体重をかけながら、唇を皮膚の薄い首に寄せる。
「兄弟じゃ、こういうことはできなかったんだろうなってさ」
「…………」
「だから生まれ変わって、こうしたかったのかなってな」

そう思ったんだ、と呟かれて、XANXUSは自分の首に回されている腕を掴むと、そのまま体位を反転させる。
一瞬にして組み敷かれた綱吉は、その薄茶の目で見上げて、笑う。
「こういうことか?」
「かもなって話」
「テメェにしちゃあ上出来な誘い文句だな」
くつりと笑って、綱吉がさっきしたように彼の首に唇を寄せる。

「本当に、そう思ったんだ。偶然だと思うか?」
「さぁな。どうでもいいし、生まれ変わりとか気持ち悪ぃ話だ」
身体を起こして綱吉のシャツのボタンを外していると、ポツリと彼は呟いた。
「ま、何でもいいんだけどさ。今、お前がここにいるから」
細められた目に一瞬見とれて、居心地の悪さをごまかすように乱暴な口調で言い放つ。
「……テメェ、そんなに俺を煽って、明日は強制休暇にされたいのか?」
「元々明日はオフだよ。だからってわけじゃないけどな」

伸ばした指で彼の頬に触れる。
浅く残る傷に、耳に、落ちてきた髪に。


彼もこんなことをしたかったのだろうか。
それとも――してしまったのだろうか。
(案外、謎の引退の理由だったりして)
一人そう思って、うっかり辻褄が合ってしまう前に考えるのをやめようと思った。

綱吉だって、二人が前世の続きにいるとは思っていない。


 



***
前世ではないです。