<ターニングポイント(前)>

 



ぽかんとして綱吉は口を開ける。
行きたくねぇのかと言われて、ぶんぶんと首を横に振った。
「ううん、行きたい!」
頬張っていたどら焼きを飲み込んで首肯する。
中に入っていたのは粒餡と生クリームとうぐいす餡だ。
それぞれ五個はあったはずなのだが、気がつけば残り二個ずつになっていた。
「お前……どれだけ食べるんだ。昼食ったばっかだろうが」
椅子にXANXUSが近づいてきて、手を伸ばされる。
口元を拭われて、指を見た。
「ついてんぞ」
「ありがと」
XANXUSは綱吉の頬を拭った指を舐める。
生クリームがついていたようだ。

「でも、オレ普通の電脳に入っていいの?」
綱吉は通常電脳には入るな、と。
XANXUSからきつく言われていた。
そんなに猛烈に入りたいとも思わなかったが(訓練で半死になるので)、入りたいか? と言われたらもちろん入りたい。
「俺と一緒ならな」
「わーい」
椅子から立ち上がる。
オンラインになるのは大体ソファーなのでそっちへ歩いていく。
XANXUSに背中を向けて数歩いったところで、後ろから腕が巻きついた。
「なに?」
首をひねって見上げると、XANXUSは黙ったまま見下ろしてくる。
赤い目は何か言いたげだったが綱吉にはわからない。
「XANXUS……?」
「言っておくことがある」
「なに?」
とりあえず座ってろ、と言うとXANXUSはするりと綱吉から腕を離した。

言われたとおりにソファーに座る。
手持ち無沙汰だったのでテレビをつけたが、流れるニュースはどうでもいい。
本来、学校に行っている時間だったしここずっと訓練の時間帯だった。
平日の昼間のテレビなんて。

「飲んどけ」
「わーい」
マグカップからほかほか湯気が出ていた。
適温にしてくれているのはわかっていたので、受け取って啜る。甘い。
「……ん? なにこれ」
「黒砂糖だ」
へー、と相槌をうってもう少し飲む。甘い中に違う味があっておいしい。

隣にXANXUSが座ったので、飲みながら話を聞く。
「お前のチップとナノロボが取り出された理由は知ってるか?」
「ううん」
「携帯がまだ手元にないのも」
「あ、そういえばそうだね」
溜息を吐かれる。携帯に関してはいささか本気で忘れてた。
「電脳に入るときチップは自動的に認証を受ける。それで誰がどこからアクセスしているかがわかる」
「うん」
「……綱吉」

低い声で名前を呼ばれる。
隣を見ると、XANXUSの目が落ち着かなげに彷徨っていた。
少しの違和感。どうして? と思うがわからない。

「綱吉、お前のためだから言う」
綱吉はカップをテーブルに置いた。
たぶんXANXUSは大事なことを言おうとしている。
「……お前の両親が殺されたのは」

聞きたくない。
そのことは忘れていたい。
ちょっとどこかに行っただけなんだ。
戻ってこないなんてはずはない。

「綱吉!」
強く名前を呼ばれる。
ぎゅうと目を閉じていたことに今更気がつき、ゆっくりと目を開けた。
「綱吉。辛いのは、わかる。だが、聞け」
「い……いやだ……」
拒絶しかない。
今まで。今まで二週間。
綱吉が笑顔で居られたのは忘れていたからだ。見なかったことにしていたからだ。
「綱吉――今日はお前を「戦争」に連れて行く」
「……」

耳をふさぐ。目を閉じる。
だけどXANXUSの声は響いた。酷い、酷い。
「どうしてお前は戦う」
「お、オレは」
逃げたいだけだ。
その理由をXANXUSにリボーンに探しているだけだ。

「お前の両親が殺されたのも。こんなところに閉じ込められているのも。今まで一般電脳に立ち入れなかったのも――全部」
「ヤダ!」
聞きたくない。
聞きたくないから目を塞ぐ。耳を覆う。全部拒絶する。
知りたくない。
わかっている、だけど知りたくない、教えられたくない。

ずるずるとこのまま。
このまま、XANXUSとここで、箱庭みたいな世界で。
リボーンに扱かれて、美味しい食事を食べて、ベルやマーモンと遊んで。
スクアーロにちょっかい出して、ディーノが一緒に来て。
たまにジョットとセコーンドが来て、意地悪をして帰る。
XANXUSと二人でテレビを見ておやつを食べて、どうしようもないことを言って笑う。

それでいい。
それでいい。

「綱吉!」
怒鳴られる。ぐいと耳を押さえていた手をつかまれた。
「や……」
「今手の中にあるモンで満足してんじゃねぇ! 学校はどうなんだ、行きたいところもやりたいこともあるだろうが!」
「いや……」
両手を拘束されて綱吉は首を左右に振る。
拒絶するしかない、無駄なことでも。
「綱吉」
目を開けたくない。XANXUSの目を見たくなかった。
責められている。呆れられている。


「目を開けろ」
「う……」
逆らえない声色に綱吉はゆっくり瞼を押し上げる。
それから見上げた。
「……XANXUS……?」
怖い顔でも呆れたような顔でもなかった。
ただ綱吉の手を拘束していたのをやめると、XANXUSは肩に手を置いた。
「お前は狙われてる」
「……」
「お前の両親も、狙われていた」
「そ、んなの。そんなの、言われたってっ!」
「だから居場所がわかるようなことはできなかった。だからチップとナノロボを別のに変えた。アレはその気になればお前をある程度追跡できる」
「え――」
「普通は国際的な犯罪者にしか使わねぇが……国が関与するレベルじゃねぇとな」

思いも寄らない方向へ話が転がっていき、綱吉は思わずXANXUSを見上げた。
「どういう、こと?」
「……つまりお前は。あのクソジョットの血縁者ということだけで、狙われている」
「――え」
それ、だけで?
しかし綱吉の解釈が正しければ、綱吉の父親がジョットの従兄弟で――綱吉はさらにその息子だから……
かなり遠い親戚になる。
母親の従兄弟の顔どころか名前もしらない。
そんな遠い血縁者の命まで狙うなんて――

「……じゃ、じゃあXANXUSは?」
「はあ?」
怪訝な顔をされたが、思い当たった可能性に綱吉は震えた。
綱吉ですら狙われるということは、ジョットにもっと近いXANXUSはもっと狙われるのではないか。
「XANXUSは危ないんじゃないの?」
「――まあ……」
「じゃ、じゃあやっぱり電脳はいいよ!」
綱吉、ともう一度呼ばれる。


目を合わせてしまう。
いけない、と思うのに。

「綱吉、悲しくねぇのか」
赤い目から目が逸らせない。
逸らしたくても、動けない。
「悔しくねぇのか。お前の両親が、どれだけ理不尽に殺されたと思ってるんだ」
「オレ、は――オレは」
言いたくなかった。
認めたらきっと弱い綱吉は壊れてしまう。崩れてしまう。
だからずっと、見ないフリをしていたのに。
それは弱い綱吉のせめてもの防衛だ。

「――ったく」
舌打ちされて、思わず赤い目を見ていたはずが揺れる。
違う――XANXUSが動いた。

正面から抱きしめられる。
どういう意味なのかわからなくて困惑して、綱吉はXANXUSの体を押そうとした。
「XANXUS、なに――」
「めんどくせぇなお前は」
笑われているわけでもなく、怒られているわけでもなく。
その中間でもなくて、綱吉は混乱する。
どうして抱きしめられているのか。彼の言葉の意味は?

「ザ――」
「泣けよ」
「い、いやだ」
「泣けよダメツナ。しょうもないことでびーびー泣きやがって、こういう時に泣かねぇでどうすんだ」
「オレ、だって」

つっかえつっかえ反論しようとした、けどできない。
泣けとXANXUSは言う、だけどそんなことをしたら。

「オレ、ヤ、なけない」
「綱吉」
抱きすくめられる。
空気が全部出て行きそうだ、苦しい、痛い。
「ザ、ザス」
「泣け」
「い、たい」
息が出来なくなって、綱吉は涙を零す。
痛い――苦しい。
「ふ、え」
胸が痛い、締め付けられる。
違う、これは抱きしめられているからで――

「吐き出せ」
「っあ」
大きな肩にしがみついた。
壊れそうなほど、悲しい、哀しい。
悔しい、憎い、情けない、後悔ばかり。

どうしてどうして。
どうして死ななくてはいけなかった。
実感などない、だけど認めなくてはいけない。

「イヤだよ、なんで、なんで父さんと母さんが」
「……そうだな」
「何で死んじゃったの。オレ、まだ何もしてあげてない。まだ何も恩返ししてないのに」
言いながらぼろぼろ涙が落ちてくる。
それはザンザスのシャツにしみこんでいく。
「くや、しい。殺されて、くやしい」

かなしい。置いていかれてかなしい。
理不尽だ、こんなの理不尽だ。
高校卒業して、大学に入って、卒業して就職して。
いつかお嫁さんをもらって、それからたくさん親孝行をしようと。
そう思っていたのに、どうして、こんなところで。

「ごめんなさい……」
不出来な息子のままだった。ダメツナのままだった。
もっと喜ばせてあげたかった、もっと誇りに思ってもらえる子供になりたかった。
めったに家にいなかった父親、いつも笑顔だった母親。
二人とも優しかった――とても、優しかった。
「ごめ、ごめんなさい。オレ、ダメツナで。何にもしなくて、何もできなくて、なにも」
何も間に合わなかった。
何一つ、返せなくて。


涙を零して、呟くと、だんだんと理解できてきた。

――ああ、両親は本当に、死んだのだ。










目が張れ上がるぐらい泣いて、漸く綱吉は落ち着いた。
抱きついたままのXANXUSから体を離すと、なんだか急に寒くなってそれぐらい長くくっついていたのかと思った。
「え……えへ」
少し照れくさくて視線をそむけると、頬に手を当てて引き寄せられる。
「な、に――」
軽く、一瞬だけ。
互いに触れて――掠めて、離れた。
「ざ、XANXUS……?」
思わず唇に指を当てる。今のは。
今のは――
「家のにオンラインしろ。連れて行ってやる」
「あ、うん」

深く考えることを投げ出して目を閉じる。ソファーに沈み込んだ。
意識を電脳に飛ばす――白い部屋。
「XANXUS……?」
どこ、と口にするがXANXUSは――いた。
「XANXUS!」
そういえば電脳で彼と向き合うのは初めてだ。別に何が違うわけでもないのだけど。

「オペレーション、カマレオンテ」
「何……!?」
部屋が途端に灰色に変わる。
天井だけ白く残って、目の前にいるXANXUSも。

「ざ、XANXUS!?」

いや、違う。
茶色の髪、同じ色の目。
顔もぜんぜん違う。凡庸な男。
服も違って――これは、いったい。
「落ち着け」
す、とXANXUS――だと思う、声まで違う――の手が伸びる。
綱吉の額に軽く指が触れると、一瞬XANXUSが揺らいで――戻った。
黒い髪に赤い目、厳つい顔、シャツにズボン。
「い、今の、は」
「俺のままで外に出歩いたら、いくら所在を隠しても意味がねぇからな。アレはカモフラージュだ。他のやつらにはああ見える――というか電脳での俺はああいう形で存在している。お前には俺の本当の姿を重ねて見せるようにしただけだ」
「え、じゃあ、つまり、XANXUSはあの男の人みたいな? でもXANXUSはXANXUSで?」
混乱して頭を掻く。
その手がさらりとした感覚に当たって、目を見張る。
「な……」
「やっと気がついたか」

呆れたように言われて、足元を見下ろす。
すーすーする……ってこれはスカートじゃないか!
思わず両手を持ち上げる……ブラウスだった。
「ざ、XANXUS!」
「落ち着け。今調整する」

XANXUSの手が空をまう。
それから人差し指を綱吉の額に押し付けて――違和感は消えた。
「……あ……戻った?」
「と言うかお前がそう思えるように細工をしたってことだ」
「えっと、じゃあ今オレは女の子に見えてるってこと!?」
「俺には普段と同じだがな」
「な、なんでオレが女の子なの!?」

さあ、とXANXUSは肩をすくめる。
部屋には扉があった。
さっさと歩いていってそれに手をかける。
「ちょ、何で!」
「設定したのはボンゴレの人間だからな。大方ジョットの指示かあるいは――」
言いかけてとめる。先が気になる。
あのジョットなら悪ふざけの延長でやりかねない。
ちくしょう自分だって童顔のクセに。

言葉を一旦はとめたXANXUSが綱吉を見下ろして。
唇を吊り上げて言った。
「体形的に無理のない性別が選択されたんだろーよ」
「っう!? お前人が気にしていることをぉお!」
思わず両手を振りかざして怒鳴ったが、その手は彼の片手であっさりつかまれる。
もう片方の手でノブを回した。

「精々可愛く振舞えよ、お嬢ちゃん」
「ギャー!!」
「やりやすいように服だけ戻してやろう」
「ヤメテー!!」
悲鳴を上げて抗議したのに、次の瞬間ふわりと裾が落ちる。
スースーするカンジはしないところを見ると、武士の情けでズボンは残してくれたらしい。
「うわ、ナニコレ! ヤだ!」
「ぎゃあぎゃあ言うな。ズボンを残しといてやっただろうが」
「うう……」
「長い上着を着てるとでも思っとけ」

XANXUSが完全に扉を開ける。
ちょうどマンションの一室のようになっていて、彼はさっさと出て行ってしまう。
「うう〜……」
しぶしぶと、綱吉はその後に続いた。




















XANXUSと綱吉は商店街に来ていた。
ちなみに綱吉がいつも来る場所ではない。電脳とはいえたくさんの場所があるのだ。

かなりの数の人間が歩いているが、これも全て綱吉たちと同様にオンラインしている人達だ。
平日の割には人が多い。そう思って聞いてみると呆れたような視線を向けられた。
「今日は大型連休だ」
「……あ、ああ、ああ!」
カレンダーなんて関係のない生活をしていたから、つい。
そういえばそうでした。
「あー……あー、その、あそこ行こうあそこ」
指差した先はこじんまりとしたカフェだった。
XANXUSがものすごく思いっきり呆れた顔をする。
「……さっき昼食ったよな」
「うん」
「どら焼き幾つ食べた?」
「九個」
「で、今度は何を食べるつもりだ?」
「……パフェかな」

丁度店頭にシャーベットを使ったパフェの写真が飾ってある。
これ以上食うつもりなのかと遠い目をしているXANXUSの服の裾を掴んで引っ張った。
「いこうよ」
「まあ、いいが……」
XANXUSが一歩歩きながら、綱吉の手を握る。
(……!)
ぎゅうと握りこまれて、思わず振り払う。
XANXUSが不思議そうな顔で見下ろしてきたので、慌ててごしごしとつかまれた手を服で擦った。
「あ、えーっと」
「いかねぇのか」
「う、うん、もうちょっと見て回る」
「そうか」

あっさりとXANXUSは納得する。
すぐ傍にあった案内板を二人で見る。
「ここはずっと食べ物とかだね。あ、家具屋さんある」
「なんかほしいもんでもあるのか」
「うん。これぐらいの棚がほしい。本とか鞄とか置いとくやつ」
手で大きさを示しながら行くと、XANXUSは案内板をしばらく睨んでから頷いた。
「たぶんここが一番あるだろう。少し歩くが」
「うん」

本当だ、と案内板を見ながらぼんやりと思っていると、右手を掴んで引っ張られる。
「あ……っ」
「どうした」
思わず声を出すと、怪訝な顔で見下ろされた。
さすが大型連休、人の数は半端ない。
こんなところで迷ったら散り散りになってしまうだろう。発見はそんなに難しくはないけれど。
だから手をつなぐのは当然だ。綱吉だって小さい頃は母親とこういうところでは手を繋いでいた。
「う、ううん……」
この年でそんなことしなくてもいい、と言いたかったけど。
がさがさした掌が温かくて、綱吉はただ頷いた。

XANXUSにあわせて数歩踏み出す。
隣に並ぶように立って、少しだけ体を近づける。
「ざ……XANXUS」
「なんだ」
「う、うん、えっとね……」
話題が見つからない、何を言えばいいのだろう。
いつもはなんて話してた? 急に頭が白くなる。
「あー……うん、明日は桃饅頭食べたいな」
視界に移った店に並べ売りされているのを見てそういうと、XANXUSがそちらを見る。
「あそこに売ってるが」
「う……そ、それじゃヤなの!」
どうしてだ、と聞かれて綱吉は視線を逸らした。
――ええと。なんて言えばいいんだっけ。

「XANXUSの作ったのがいいもん」
「そうか」
案外あっさり納得してもらえて、綱吉は胸をなでおろす。
「うん、やっぱり本物のほうがいいしね」
「……お前の胃袋の構造が知りたいな」
目を細めてからかわれる。
そんなことを言うXANXUSも呆れるぐらい食べる。
甘いものこそ綱吉がバカみたいに食べてるかもしれないが(だって美味しいのだから仕方がない)、普通の食事はXANXUSも結構多い。
「XANXUSだって食べるくせに」
反論してみると、体の大きさを考えろ、とシンプルに一言返ってきた。
それはそうなんだけど。

「いや、よく考えたらオレって成長期だし」
だからたくさん食べていいと力説したのに、可可哀想なものを見る目で見られた。
「……あれだけ食べてこれとは」
「う、うるさい! XANXUSはもうとっくに成長期過ぎちゃったんだろ」
「まあな」
その返事を聞いて、綱吉は眉をしかめた。
そういえば、知らない。
彼が幾つかなんて知らない。誕生日も知らない。
「ねえ、XANXUS」
少し右手に力をこめて、それで自分の体を引っ張るように引き寄せた。
肩が彼に腕にあたって、寄り添うように人ごみを歩く。
「今、幾つ? 誕生日、いつ?」
「25だ」
「にじゅ……ああ、まあ、そんなかんじ」
納得できない年ではなかったので、頷いておいた。
外見は三十とも取れるけど。うん。まあそんな感じだ。

少し手を強めに握られる。
「うわ」
それからぐいと引っ張られて、気がついたらXANXUSに肩を捕まれていた。
抱き寄せられてる? そう思った瞬間に頬が熱くなる。
今、絶対顔が赤い。
「XANXUS――」
隠そうと顔をそむけると、背後で溜息を吐かれた。
「前見て歩け、頼むから」
「え?」
「ぶつかりそうだったぞ。いくら電脳つったってそれなりに痛いだろ」
「う、あ、うん」

口で言ってくれればいいのに、と思わなくもなかったけれど。
XANXUSの手が触れてた肩が熱い。
ついでに右手も発火したような気がした。なんだこれ。
「誕生日だが」
普通に歩き出して、XANXUSが続ける。
慌てて綱吉は首を振ってさっきのもやもやを振り切ることにした。
「十月十日だ」
「え!? オレ、十四日」
「近いな」
その声が嬉しげだったのは、気のせいだろうか。
気のせいかもしれない、それでもいい。
「うんっ!」
笑って綱吉はXANXUSの手を握った。
気のせいではないぐらい強く、握った。

案の定、XANXUSは視線を綱吉に向ける。
赤い目を見上げて笑った。

たぶん今は幸せだ。

 

 





***
やりたい放題の電脳です。