<どっちがすき?>


「……で、どっちが好きなんですか君は」
「どっちも好きだよ」
何を馬鹿なことをといわんばかりの顔で言われて骸はびえびえと泣いて立ち去った。
「……意味がわからない」
呟いた恭弥。
まったくだ。



部屋に閉じこもっていじけているという不気味な生き物もといナマモノに、山本は溜息をついてから時雨金時を振りかざす。
「骸〜、開けてくれねーならぶち破るけどいーかー?」
「よ、よくないです! なんで君は昔からそういう常識がないんですか!」
慌てた声が部屋の中から聞こえてくる。
がちゃりとあけられた扉から、ひょいと顔を突っ込んだ。
「どーしたんだよー? つなも心配してるぜー?」
「いいんです! もう僕は誰にも愛してもらえないんです!」
「愛してるぜ?」
「いやです」
真顔で山本の言葉に答えて、骸はまた手に持っていたタオルに顔を埋める。
そしてびえびえ泣いた。
ちょっぴりうっとうしい。

「あのさー、幹部会議には出てくれよなー」
「だって僕は愛されてないからマフィアなんてもういやです!」
「骸ー、日本語はちゃんと話そうな?」
にかっと笑って爽やかに山本は言ってくれたが、その手に時雨金時があるのでまったく爽やかではなかった。
「ヒバリだってこまってるのなー、お前がいきなり閉じこもるから」
「きょ、恭弥は、だって恭弥がぁ!!!!」
「骸、整理して話してくれねーと」

ぐずっ、と鼻をすすって骸は言った。
「恭弥に、どっちが好きかって聞いたんです」
「どっちって」
「チョコボールと麦チョコです。それなのに恭弥はどっちもって! 酷い! 恭弥は僕の味方だと思っていたのに! どっちもチョコとして邪道なのに!」
叫んだ骸に、山本はいっそ清々しく爽やかな笑顔を向けた。
「……骸、つなからの伝言なー」
「なんですか?」

「歯ぁ食いしばれ」
「え? ……ってちょっと!? なんで刀になってるんですか!?」
「つなの超直感は当たるなあ♪」
「や、山本武! それは危ないです! 危ないですってあぶな……」



***
一度は通る道。















<骸が変態という話>

前を歩いていたつなの首筋に見えたものを骸は見逃さなかった。
ついと手を伸ばして少し上にかかっていた髪をのける。
「ひゃ!?」
びくんと肩を揺らしたつなは、とっさに距離をとって骸を睨む。
「な、なに!?」
「あ、いえ。可愛らしいものをおつけで」
「え?」

怪訝そうな顔になって首を押さえたつなはしばらく骸を睨んでいたが、彼が真顔で真実を語っているらしいと思い、それから彼がなにを見たのか理解して顔を赤くした。
「あっ、これ、は」
「いいですねキスマ」
「いうな!」
「なんでですか。愛されている証じゃないですか」
「……骸、お前ってそういうところがキモいのかも」
ひどいですね、と骸は眉をしかめてだってと口を尖らせる。
「所有の証じゃないですか」
「ヒバリさんにつければいいじゃん」
「……」
黙ってしまった骸から「関わらないほうがいい」と感じ取ったのか、つなは学校に入るとすすすと彼から遠ざかった。


突っ込んではいけない気もしたのだが、どうしても犬は突っ込んでしまった。
そのあたり彼も突っ込みの気質が強いのだろう。
「骸様……それ、なんだぴょん?」
「愛の証です!」
笑顔で振り向いた骸はシャツを脱いだ上半身裸の状態で、くふふ〜ん♪と歌っている。
鼻歌のはずなのに「くふふ」と聞こえるのは気のせいだ。
その骸の肩にはくっきりと。

「それ……だって、歯型じゃん」
「いいでしょう」
「……よくないと思う……」
遠くで千種も突っ込んでくれたが、骸の耳には入っていないらしかった。
くふふ〜と歌いながらご機嫌だ。

「恭弥はテレ屋なんです。でも僕に愛の証をくれたんですよ」
「……解釈に困るぴょん」
「まったく犬は鈍いですね! 愛の証、独占の印です! これで僕は恭弥の物〜♪」

「……骸様って常々思ってたけど、マゾだぴょん」
「恭弥が愛してくれるなら何でもいいんです」
「……」

肩の噛まれ傷を誇らしげに見つめて。
骸はでれと表情を崩した。



***
たぶんこんな寒い会話があったのですが 骸と恭弥の情事が思い描けないので はぶきました。


骸「恭弥、キスマーク」
恭弥「……は?」
骸「キスマークがほしいです」
恭弥「……」
骸「恭弥のものだってしるしがほしいです」
恭弥「ばか?」
骸「バカです!」
恭弥「……咬み殺すよ」















<フウ太の失敗ランキング>



つな「骸の失敗ランキング……?」
ふう太「うん、なんか思いついたから」
つな「……限りなくどうでもいいけど、せっかくだし聞いてみようかな」
ふう太「第3位は……」
骸「最初に恭弥と会った時、全力を出してかっこいい僕を見てもらえるように戦わなかったことです!!」
つな「自分で言うなよ……っていうかなんだよそれ」
骸「重要ですよ! そうしたらもっと僕に興味を持ってもらえたかもしれないんですから!」
つな「…………」

ふう太「第2位は、雲雀さんと知り合ったのが6月に突入してからだったこと、だね」
骸「恭弥の誕生日を1回逃してしまいましたなんてもったいない! 海より深く後悔しました!」
つな「5月に出会ってても、プレゼントなんて受け取ってもらえなかっただろ……印象最悪だし。そもそもお前当分現世でてこれてなかったし」

骸「……1位はやっぱり、僕だけ未来にいけなかったことですかねorz」
ふう太「え? ……1位は「雲雀恭弥の前でサンバを踊った」ことだよ」
つな「えええええ!? Σ( ̄□ ̄|||)」
骸「ちょ、それは!」
ふう太「最大の失敗だよね?」
つな「……骸、お前なんてことを(どんびき)」
骸「失敗なんですか!? あれは失敗だったんですか!? 恭弥はビデオ片手に見て最後に「ナイス、いっそ尊敬する」って言ってくれたのに!」
つな「それは思いっきりさけずまれてるぞ……」
骸「Σ( ̄□ ̄|||)」
つな「俺でも尊敬するよ。類をみない変態っぷりに」
骸「……orz 僕は……僕はただ恭弥君に喜んでもらいたくて」

恭弥「ああ、来年のボンゴレバースデーは期待してていいよ(出し物扱い)」
つな「わーい。恭弥さんの前でやったってことは、きっと凄い良い笑顔で、衣装はもちろんリオ・カーニバル並に本格的なんですよね?」
恭弥「どこから調達してきたのか知らないけど、女ならともかく男のあれは見苦しいよね」
つな「幻覚じゃないですか……? 男用のアレの衣装はなかなか手に入らないと思いますし……」
骸「手製です!!」
つな「……お前、まだ引く要素があったのかよ」
恭弥「……(思いだして目逸らし」










<後日談:骸サンバビデオを鑑賞後>

つな「あれ、でも恭弥さん、ビデオを撮って労いの言葉かけたってことは、笑わなかったってことだよ……ね?」
はやと「……音も音楽しか入ってないですし、そう、ですね」
つな「……これも愛?」
はやと「…………」