<ドラクエ\パロ〜女神の果実〜>





ふわりと落ちてきた光る木の実を受け止めたつなは、表情の読めない目でそれを見つめる。
かがやくその実はとても綺麗で。
とても綺麗で……残酷だ。

最後の敵は人間に絶望し、神に絶望した元高位の天使だ。
天使は上級天使の命令には絶対に逆らえない、だからその堕天使を天使界の者は誰も倒せない。
人間と天使を見守り続けてきた女神は、天使では倒せないのだから、人になれ、とつなに言ったのだ。

「つな」
ふわりとザンザスの腕がつなの腰に回された。
小さく顔を動かしたつなに居た堪れなくなって、ザンザスはぎゅうと抱きしめる。
「つな……つな、クソ女神の言うことなんか聞く必要はねぇ」
「……」
「テメェが犠牲になる必要がどこにある。ただ人のことを思って、懸命にやってきたお前が、どうしてまた、こんなことを」
「ザンザス、泣かないで」
「泣いてねぇ」
「オレ、人の心は読めないけど、ザンザスの心だけはわかるよ」
そう言って、つなは果実を持っていない方の手を胸に当てる。

「理不尽だね」
「ああ、だから従うことは」
「女神様も、これしかないって思ったんだろうね」
「つな……」
いつもと変わらない淡々とした口調に、変わらない表情。
そんな慈母のような笑みを浮かべた顔は、嫌いだ。

泣いて笑って、怒って拗ねて。
そんな表情が大好きなのに。
ここにくるたび、つなは「天使」の顔をする。


沈黙を破って、ずっと考えていたことを、口に出す。
「俺達がやる」
「え?」
「俺達がエルギオスを倒す。テメェは戦わなくていい」
ザンザスたちはもとより人間だ。
つなが戦う必要はない。三人で、ザンザスとユニとディーノで戦えばいい。
「だから、人間になる必要はない」
「……ザンザス、聞いて」


ザンザスの腕の中、つなは身を固くした。
どうしたのかと怪訝な表情で見下ろすザンザスを見上げて小さく笑って、つなは世界樹を見上げる。

「女神様、オレ、世界を救ってきます」
「つな!」
「だから――オレの浅ましい願いは、見なかった振りをしてください。オレの、醜い夢を、許してください」
「つな?]

頭を垂れていたつなは、そこでにこりと笑った。


「ザンザス」
「なんだ」
「やくそく、していい?」
震えるその声に、ザンザスは頷く。
「なんだ」
唾を飲み込んで、つなは言った。


「エルギオスを倒したら、ザンザスの故郷に連れて行って」
「な……」
ザンザスの緩んだ腕の中、つなは懸命に爪先立ちになってぎゅっと彼の胴体に抱きつく。
顔を胸に埋めて、呟いた。
「それから、ずっと、傍にいて」
「つな……」
「これがオレの、浅ましい願い。醜い夢。天使であることなんて、オレはとっくに捨ててた。あんなにウォルロ村の人に感謝してもらったのに、オレは、あの人達を裏切るよ」

だってオレは、もう、人間になるんだ。
涙声でそう言ったつなは、手の中の果実を握り締める。

「オレがこれを食べたら、人間になる理由は簡単」
この果実は、願いをかなえる果実。
食べた人の願いをかなえる果実。
「オレが、人間になりたいと、思っているから……!!」



なんて酷い守護天使なんだろう。
亡き師は、つなが立派な守護天使になる事を願っていたのではなかったか?
今まで教えてきてくれた、支えてきてくれた仲間を全部裏切って。
守るべきであったはずの人間になって、きっと人間を傷つける事もあるのだろう。
守るべきだった村の人を捨てて、天使という存在に課された使命も捨てて。

「オレは、たくさんの人なんて、守りたくないよ……!」
叩きつけるように、つなは叫ぶ。
天使達が神聖視する世界樹の前で。
「人間の中で、人間として、ザンザスの隣で、生きたいよ!」
それはきっと、裏切りなのだろう。
彼の中の何かへの裏切りなのだろう。
「つばさも、わっかも、いいよ、ザンザスと、いっしょが……いいよぉ……」

「……泣くな」
強い力でザンザスはつなを自分から引き剥がして、その顔を覗く。
赤く染まった目尻に口付けてから、その唇へと動かした。
「つな」
「っく、ひぇ、っく」
「つな、泣くな。大事な話があるから、ちゃんと聞け」
「な……なに?」

零れる涙をぬぐって、ザンザスは膝をつく。
それでちょうど同じ高さになる二人の視線が交わった。



「つな」
白くて小さな手の甲に、唇を寄せる。
「世界を救ったら、俺と結婚してくれないか」
「え……」

見開かれた琥珀の目に、ザンザスはくつりと笑う。
大きく開いた目にはみるみるうちに涙が盛り上がった。
「ほ、ほん、と」
「ま、天使でも大人しく返す気はなかったが、人間になるなら何の問題もねぇ」
「オレ、一緒にいていいの!?」
「今言ったことを聞いてたのか」
「う、うれしい……」
ぽろぽろと涙を零すつなの額にチュと口付けて、それでも泣いているのでザンザスはその軽い身体を抱き上げる。


「早くそいつを食べろ、とっとと俺のモノになっちまえ」
小さな耳にそういうと、つなはボッと首まで真っ赤にさせた。







***

なんで「願いをかなえる果実」の女神の果実を食べて人間になるんだ主人公!
という捏造補填。

あれだけ一般人(トカゲ)を強くする果実なんだから、主人公をラスボス以上の高位の天使にする、という解決方法はなかったのか。
なかったのか。

それにしても捏造したい放題です、ああリボーンキャラでムチャやってマジよかった。
ていうか本当に美味しいんですけどこれ。どうしましょう。


ルーラ覚えた時はなんかそっけなかったので、おもいっきり容赦なくとっぷりとラブラブにしてみました。
甘すぎて蜂蜜を吐く。
告白から騎士の誓いから婚約からお姫様抱っこからなんでもやったよ。