「……んっ、ぁ、ひゃ、ぁん」
途切れ途切れに響く媚声を唇で塞いで、跳ねた痩躯を押さえ込む。
しっとり濡れた茶の髪の毛ごと頭を抱きしめると、いやいやと首を横に振る。
「もっとほしいか」
低く低く囁くと、小さく唇を動かして要望を伝えた。





<夢も希望もない>





疲れ果てたのかうとりうとりとしている綱吉の髪をかき上げてから、XANXUSはくるりと体勢を変えると後始末をし始めた。
とりあえず萎えた股間にくっついているコンドームをとると、ところどころに付着している茶色いモノには触れないように、慎重な手つきでそれを袋に入れ、口を縛る。
「最低だ……」
背中でそう呟かれ、XANXUSは眉を上げて振り返る。
横たわっている綱吉はXANXUSに背を向けて、ぼそぼそ呟いていた。

「人が明日休みだっていったら問答無用で風呂に連れ込みやがって……」
「トイレの方がよかったのか」
べとべとになっら体を洗うため立ち上がると、横たわっている綱吉が真っ直ぐ手を伸ばしてくるので、溜息を吐いて抱き上げる。
「よくねぇよ。なんでお前は常に浣腸を常備しているんだ」
「テメェが持ってねぇからだ」
「なんで俺が持つんだ」
真顔で返した腕の中の綱吉を見下ろして、XANXUSははんっと鼻を鳴らした。

そのままぺたぺたと歩いて豪勢な風呂場に綱吉を連れたまま入る。
ちなみに扉は足で開けた。この男は相当行儀が悪い。
「嫌なら抵抗すりゃあよかっただろうが。女じゃねぇんだ、押し倒して即突っ込んでんじゃねんだぞ」
XANXUSは浴槽に綱吉を横たえる。
「ふざけんな、やられてることはそれより酷い」
「ここに引っ張りこんだのも服を脱がしたのも、浣腸したのも、それを洗い流してローション使って穴をほぐしたのも、全部抵抗したら逃れられたぜ」
特に最後が。時間がかかる。
最初と比べたらずいぶん短縮されたが、それでも必須のステップだ。


シャワーの温度を確かめたXANXUSが、浴槽に座っている綱吉の体にそっと湯をかける。
ぺたりと座り込んだままで、XANXUSを見上げた綱吉が唇を尖らせた。
「だいたい、お前のせいで大変なんだ」
「何がだ」
綱吉の愚痴と文句は行為の後の恒例行事となりつつあったので、XANXUSは軽くあしらいつつ聞いてやる事にする。
どうせいつもの仕事の多さと自由度の少なさについての愚痴だろう。
前回は概ね、年齢と外見が不釣合いな事だったが。



「おならが出るんだ」



真顔で放たれた一言に、XANXUSはシャワーを持つ手を止める。
雫はぱしぱしと綱吉ではないところに降り注いで、温かい雨を欲した綱吉が前のほうに手を伸ばす。
「お前に突っ込まれたせいで腸活動が活発になるのか、それとも出し入れで空気が入るのか……とにかくおならが出るんだ。半端じゃないんだ」
真顔で繰り返した綱吉は、真剣に困っているようだった。
「歩く度におならだぞ。よく考えたら括約筋が緩んできてるんじゃないのか」
「…………」
なんとも返しがたく、XANXUSは黙り込んだ。

隠すほどの事でもない。XANXUSも綱吉も男と付き合ったのは初めてだった。
よって、きっちり衛生とか体の事とか考えて行為を行っているものの、長期にわたった場合の弊害などはよく知らないのである。
よく知らないでやるなとも言いたいが。

「真面目な話、規格外の太さのお前のを突っ込まれてんだぞ。俺が大腸癌になったらどうしてくれる」
「……それは困るな」
大腸癌=セックスできないという事に気付き、XANXUSはようやく反応する。
「だろう? 他にも痔とか脱腸とかああ恐ろしい。この若さで人工肛門は避けたい」
「感染症には気をつけてるがな」
相手は妊娠しない男なのだから、生でも大丈夫なんじゃないかと思わなくもなかった。
しかしXANXUSも馬鹿ではない。大腸に大量の細菌が生息している事と、陰茎の粘膜はいろいろなものを通してしまう事はよく分かっていた。
よって彼は調べ、ベストな男同士のやり方を研究したわけである。

ありがたくて涙が出る、とは最初の行為が終わった後の綱吉のセリフだ。

「というわけでできれば控えてくれるとありがたい」
「我慢できるならな」
切り替えしたXANXUSの言葉に、綱吉はうぐぐと顔をゆがめる。
今回は本当にXANXUSが綱吉を引っ張り込んだが、この前は綱吉が自らXANXUSを誘ったのは二人の記憶に新しい。
「だって……気持ちいいんだ」
認めた綱吉は湯のせいかなにかのせいか、頬を桜色に染めている。
「お前もやってやろうか。前立腺は本当にヤバいぞ」
「別にかまわねぇが。そんなに好きなら前立腺癌には気をつけろよ」
「ああそれは大丈夫。肉食なお前の方が確実に先だ」
「…………」
真に事実だったのでXANXUSは黙る。
「それに、幸か不幸かお前が毎回検査してくれてるようなもんだからな!」
自棄っぱちな綱吉の言葉に、それは間違いないなとXANXUSは思わず頷く。

「それにお前こそ気をつけろよ。治療の副作用はインポだ。男性ホルモン多そうだし大変そうだなあ」
「…………」
XANXUSは無言で綱吉の背中を洗う。
気持ち良さそうに目を細めながら、上機嫌らしい綱吉は続けた。
「まあそうなったら俺が乗っかってやるから大丈夫」
「騎乗位の趣味があったのか」
気付いてやれなくてすまなかったな、と返したXANXUSを睨みあげた綱吉だったが、彼が何か言う前に顔面にシャワーをかけられた。

「ごほっ、げほっ。なにすんだ!」
「んなくだらねぇ心配する前に、脱糞しがちな自分を反省しろ」
「してねーよ!!」
パシャンと綱吉の拳が水面を叩く。
「尻の締まりが悪ぃんだろうが」
「お前の口ほどじゃねー」
「そうか?」
揶揄するような視線で見下ろされた綱吉は、きっと鋭い目つきになってXANXUSを睨む。
それから息を吸い、静かに、静かに言った。

「リボーンに告げ口してもいいんだぞ……?」
「テメェも道連れだ」
「俺は心臓だけは動いてるだろうけどお前は確実に死ぬ」
「…………」
痛すぎる静寂がバスルームに落ちた。

ざー、とXANXUSは綱吉に頭からシャワーをかける。
それから手にシャンプーをとって、わしわしと髪の毛を乱し始めた。
「改善方法を調べておいてやる」
「逆になるって発想はないんだな」
「……今、俺様が頭を洗っている時点で最大の譲歩じゃねぇか」
「お前が俺に強いていることを思えば当然だ。痔、下痢、屁、脱糞、脱腸、大腸癌に各種炎症。俺が脱腸して病院に運ばれた時、なんて言い訳すればいいんだ?」
綱吉にしてはやけに理屈っぽく詰められて、XANXUSはなんと返せばいいか窮じたが、そんな事は臆面も出さず堂々と笑った。
「デカいの持った愛人がいる、と言っておけ」
「仕事干されたいのか」
刺々しい口調でいいつつ、綱吉の顔は緩いものだったので、XANXUSは悪くねぇがなと答えて、洗った綱吉の髪を無理矢理手櫛する。

「俺を暇にして毎日抱いてくれって意味だろうが」
「おい、状況悪化するだろ……」
呆れたように笑った綱吉はXANXUSの顔を引き寄せて目を閉じる。
珍しいその接触にXANXUSは拒む事なく、顔を寄せた。










***
実際アナルセックスは大変みたいです。
特に、感染予防が。

まあ基本的に
・感染する
・裂ける
・さまざまな疾患のリスク増大
の三点に関しては見なかった振りをしてエロを書いていきたいと思います。

じゃないと総受けをしている子が可哀相です。