<名探偵ヒバードの事件簿3>
六道骸と雲雀恭弥は犬猿の仲であり、顔を合わせるたびに喧嘩三昧である。
だが他の守護者同士はおおむね仲がいいので喧嘩とかはあんまりない。
……ないはず。
「てっめー、山本! どこにおきやがった!」
「だから俺じゃねえって言ってるだろ、お前がまた置きなおしたんじゃないのか」
「なんだと!? 俺の管理がいい加減だってのかよ」
「だから、落ち着けって。よく探せば見つかるはずだ」
ヒバードが着地したのはテーブルの上。
そこからだと、必死に本棚をあさる獄寺と、懸命にファイルの中を確かめる山本が見られた。
「あ、ヒバード。この間みたいにさ、探してくんねーかな」
「なにアホ言ってんだ! 鳥なんかに探せるわけねーだろ!」
くわっと怒鳴った獄寺の一言に、ヒバードは飛び立つと獄寺の頭の上に着地して。
その嘴で彼の髪をくわえ。
「あいたたたたたたた! やめろこの鳥!」
引っ張った。
ついでにむしった。
「いたいっての! おい山本この鳥どけろ!」
「ははは、ヒバードはやんちゃだな」
「やんちゃだな、じゃねーよ! いたいいたいっつーの!」
獄寺の手がヒバードを床へ叩き落とす。
叩きつけられる前に飛び上がったヒバードは、今度は獄寺の腕に着地して。
「っギャー!!」
思い切り皮膚をついばむ。
というかつねる。
鳥類の嘴の力は案外強い。
ペンチで挟まれる程度には痛い。
それをやられると、さすがにたまらないらしい。
「この鳥類……果てろ!」
「うぉいバカ! 逃げろヒバード」
ちゃきんっ。
山本がとっさに導火線を切ったおかげでダイナマイトは爆発しずにすんだ。
ヒバードは一旦飛び上がり、獄寺の背後に回る。
「獄寺、ヒバードに謝れよ」
「何で俺が鳥類ごとき……」
眦を吊り上げて抗議していた獄寺が、泡を吹いて倒れる。
あまりの痛みに声も出なかったらしい。
「こらこら、やりすぎだぞヒバード」
「ヒバードイイコ!」
「まあ、獄寺も自業自得だけどさ」
倒れた獄寺の首には、赤い跡がついている。
……本気で首をかんだなこの鳥類。
「さて、俺はツナに渡す書類を捜さなきゃいけないからそこらへんで遊んでてくれ」
な? と山本に言われたヒバードは、床に降り立つとてとてとと倒れている獄寺に近づき、彼の服の間にもぐりこんだ。
暖かいのだろうか。
「さて、どこにやったかなー……」
うーん、と唸った山本は、がさごそとヒバードが立てる音を気にせず、もう一度机へ向かう。
この辺に置いたと獄寺は主張していたんだけども。
「おっかしいな……」
「ミッケ!」
「え?」
響いた声に振り向いた山本が見たのは。
ヒバードの愛らしい嘴によって細かく裁断されながら、獄寺の頭の上に散らばっている。
書類だった。
「ミッケ!」
「ああ……うん、たしかにこれだ。なんだ、獄寺が持ってたのか」
切れ端からそう判断すると、山本は無駄に爽やかな笑みをヒバードに向けた。
「ありがとなヒバード」
「スッキリカイケツ!」
紙をびりびり破くのがそんなに楽しいのか、そう鳴くヒバードの嘴には紙がくわえられていた。