<名探偵ヒバードの事件簿2>
下を見ながら歩いていたせいで、うっかり頭をぶつけるところだった。
「うおっと、あっぶねー」
天井から下がっている飾りの存在をうっかり忘却していた山本は、間一髪のところで逃れた自分の額を叩く。
「にしてもどこに行ったかなー」
困ったなーと周囲を見回していた山本の頭の上に、ぼふという感触があった。
「お? どうした」
頭の上から手のひらに移動させると、それは雲雀の鳥だった。
名前はヒバード。
ナイスネーミングセンスである。
「どうしたヒバード」
「クフフフフ」
鳥の口からは大層なお言葉が飛び出してきたが、その単語で十分今何が起こっているかはわかった。
つまりまた雲雀と骸が戦っていると。
……ほんと飽きないなあの人たち。
「そうか、それで暇になったんだな。悪いけど俺さあ、メモリーチップ落としちまって今探してるんだ」
「?」
「探し物。お前も一緒に探してくれるか?」
「サガシモノ〜」
ふわと浮き上がって、ヒバードはふわふわと廊下を飛んでいく。
協力するのかしないのかはよくわからなかったが、とりあえず山本は自分の作業にもどった。
いったいどこに落としたんだろうか。
ポケットに入れていたのだが、その肝心のポケットには小さな穴が開いていた。
……この間やりあったマフィアの誰かに切りつけられでもしたのだろうか。
癪だ。
歩いてきた道を逆行しつつなのだが、あんまり小さいものなので見つからない。
中身は空なので別に見つからなくともいいのだが、落としてしまったものは回収しておきたい。
どこにやったのかなあときょろきょろしながら歩いていくと、一足先に廊下を飛んでいったはずの鳥の姿があった。
嘴を壁にあいた隙間に押し込もうと悪戦苦闘している。
「どうした、虫でもいるのか?」
笑いながら必死に動くヒバードの頭を撫でると、隙間から嘴を抜いて鳴いた。
「カミコロス!」
「あはは、邪魔して悪かった」
苦笑しながら山本は手を引こうとして、ふと眉を寄せると壁の隙間を覗き込む。
きらっと一瞬だけひかったそれを、彼の目は逃さなかった。
「ヒバード、あれ、取れるか」
「ヒバードイイコ!」
元気に鳴いて、ヒバードはくいくいと器用な嘴捌き(?)で、隙間に入っていたものを取り出す。
それはたしかに、山本が落としたメモリーチップだった。
転がり落ちて偶然壁の割れ目へ入ったのか、誰かが押し込んだのか。
真相はともあれ、無事に見つかったのだからよしとしよう。
だが戯れに聞いてみるのも悪くはない。
「ヒバード、これ、誰がこうしたかわかるか?」
「ツナヨシ!」
「……そうなのか」
たしかにやりそうだ。
綱吉ならこのチップの中が空というのもわかるだろう。
……だけど隠すなよ。
しかもこのメモリーチップは綱吉に渡すはずだったものであって。
「そーか、ありがとな」
「スッキリカイケツ!」
上機嫌にヒバードは鳴いた。
***
山本でもヒバードには無力。