<名探偵ヒバードの事件簿1>





無言で指を差し伸べる。
だがそれはぱふりと頭上に落下し、そのまま髪をかじって支えにしつつ、けしけしと肩の上に降りてきた。
「ねえ、素直に指に止まったら?」
そう言ってもそれは意に介した様子はない。
ただつぶらな目で見上げるだけであった。
「ほんとに、君は気まぐれだね」
「ヒバーリ!」
「わかってるよ、餌がたしかここに」

内ポケットをまさぐって、雲雀はわずかに眉を動かす。
反対側、ない。
外のポケット――ない。
ズボンのポケット、ない。
引き出し……ない。

「ねえ、自分で引っ張り出してないよね」
「…………」
「ちょっと」
肩の上のだんまりの鳥をつつくと、ふわっと揺れる。
しかし、内ポケットの餌袋を鳥が自力で取れるとは思えなかったので、もう一度朝からの行動を思い起こす。

確かに朝、自分の手で餌袋をスーツに忍ばせた。
内ポケットに入れたのも確かだ……拳銃の横に入ってるはずなんだけど。
とりあえず上着を脱いで椅子にかけて作業をしていた。
一度だけ手洗いに立ったが……。

「…………」
拳銃に異常はない。
餌袋だけ消えるなんて、どういうことか。
「見てたでしょ、犯人は誰?」
肩の上に止まる鳥を見やると、鳥はそのまるっこい嘴をぱかりと開けて。

「クフフフフフフ」

「…………」


オーケイ、犯人はわかった。
雲雀恭弥は無言で練習用のトンファーを引っ掴み、ヒバードを肩に乗せたまま部屋を出て行く。
「どこにいるかわかる」
問いかけると鳥はぱたぱたと飛び立つ。
素直にその後をついていけば、中庭で何かやっているパイナップルの姿が目に入った。

「あ、れ? こんにちは雲雀恭弥」
「何してるの六道骸」
「これですか? ちょっとしたお茶目です☆」
クフフフフ、と笑った骸が手にしていた縄の一つに、ヒバードがよじ登り。
そして鳥の自重で綱が下へ引っ張られ。
「あ、ヒバードいけません!」


パカ


「……これは何」
低い声で問う雲雀が指差しているのは。
「えへ☆」
鳥捕獲セットだった。
中にばら撒かれているのは雲雀が持っていたはずの餌。
ついでに足元に落とし穴。
ここまで見ればバカでもわかる。

骸による、雲雀拿捕作戦である。
ヒバードを囮に使おうとしたあたりがせこい。


「よくもこの僕をハメようとしてくれたね……」
「ミードリタナビク〜」
ホバリングするヒバードのすぐ横にいた骸は、可愛らしく鳴くヒバードに目を奪われていた隙に、思いっきり雲雀の一撃を喰らって水平にぶっ飛んだ。


「ふん、帰るよ。おやつの時間だ」
飼い主の肩の上に着地したヒバードは、上機嫌にこう鳴いた。
「スッキリカイケツ!」



 




***
ささやかな事件をヒバードが 解決します。
ヒバード「が」