<ごちそうさま>
 




とてとてと歩いてきて、短い手を伸ばして上に乗ろうとした。
しかし呆気なく破れ、むすっとした調子で歩き回っているマーモンを、XANXUSは気まぐれに歩み寄って抱き上げソファーの上に乗せてやった。
「ありがとボス」
ちょこんと座った術師は可愛らしい声でそうお礼を言って、にじにじと少し奥へと体を進めた。

「そういえばさ、ボス」
正面のソファーに腰掛けたXANXUSに、マーモンは問いかける。
「ツナヨシのどこが好きなの?」
「……は?」
「うん、だからツナヨシのね」
「繰り返すな」
苦い顔で言われて、へーとマーモンはフードの奥の目をくりくりと動かした。
ボスが照れている。珍しい。

「だっていつもはおっちょこちょいちょい……っていうか、ダメだし」
「最近はそうでもない」
「顔も別に美人じゃないし」
「美人だろうが」
「……えっと、ボス、視力落ちた?」

マーモンなりの気の使い方だったのだけど、XANXUSは眉をひそめて足を組む。
「テメェこそどこ見てんだ。美人で可愛くてちょいとぬけてるけど、強くて……なんだ」
ぺらぺらと恋人自慢を始めたXANXUSに、マーモンは温い視線を向けてただ一言、言った。
「なんか、ごめん」

とりあえずぞっこんなのはよく分かった。









ソファーの前でうろうろしていると、綱吉が寄ってきてマーモンを抱き上げる。
そっとソファーの上に乗せてもらった。
ありがと、と言えばへにゃと笑って「マーモンは可愛いなあ」と言いながらぐりぐり頭を撫でてくる。
普段ならば払いのけるところだけれど、ソファーに乗せてもらった分は許容してあげよう。

「そういえばさツナヨシ」
「なに?」
隣に座ってマーモンの頬をぷにぷにしている綱吉にも、先日のボスに対してと同じ質問をしてみた。

「ボスのどこが好きなの?」
「う……うーん。カッコイイし? 意外と優しいし気がきくし、なんかオレ、XANXUSの真っ直ぐすぎるトコっていうか、あの頑固なトコとか結構好きなんだよね。オレが流されがちだしさ」
うんうん、と自分の言葉に頷く綱吉に、またもや温い感覚を抱きつつ、マーモンは突っ込んだ。

「あのさ……それはボスの欠点であって長所ではないんじゃない?」
「……うーん、オレは長所だと思うよ? あばたもえくぼかもしれないけどね」
そこまで自覚しておきながら、それでも綱吉は笑った。
「それでもいいかなって思う。オレはXANXUSが好きだし、好きな人のことはカッコイイって思っていたいから」
もはや何を言っても無駄なのかもしれない。
ボスもツナヨシもどっちもどっちだ。

そう思いつつ、マーモンは一応自分の同類としてのあのヒットマンの話題を出してみた。

「カッコイイというならリボーンはどうなのさ」
「リボーンはサドじゃん」
「……ボスは違うの?」
アレとソレのどこが違う。
「XANXUSはぜんぜん違うよ? そりゃあヴァリアーの皆には仕事上ちょっときついかもしれないけど、オレには優しいよ? この間も休日つぶしてチビたちの面倒見るの手伝ってくれたし、その後でオレの見たかった映画連れて行ってくれたし」
「…………」
たぶんリボーンもそうしたいんだろうけどできないだけなんだろうな。
そう思いながら、マーモンはそうなんだとだけ返した。



なんだか今日はお腹がいっぱいだ。





 

 

 

 

 


***
短くザンツナ。
マーモンを小さい子にしたので、ツナ学生時代になりました。