<I love youを伝える10の方法>







>嵐

「愛しています」
素直にそう言って、彼の前に膝をつく。
何度も繰り返したなれた動作で彼の手を自分の手のひらの上に乗せ、唇を寄せた。

「愛しています、十代目」

それ以上の言葉は出てこなくて、震えた唇を柔らかい皮膚に押し付けた。


「愛しています」

見下ろしてくる琥珀の瞳が少し揺らいで。
この言葉に対する返答を待った。






>雨

「好きだぜ、ツナ」
笑って言った、けれどすぐに真顔になった。
「ダチのじゃなくて、好きだ」
何も言わない相手の肩を抱き寄せて、耳に口を寄せた。

「男として、お前を愛してる」

熱っぽい声でささやいて、わざとらしく吐息で耳を撫でて、腕を離す。
見上げてきたその表情にはどんな色があるのか。
無言で微笑んで返答を待った。






>雷

「好きです、ボンゴレ・・・いや、ツナ兄」
幼い頃のように名前を呼んで、けれど視線を合わせない。
ちらりと前髪の後ろから窺って、何も言わないから必死に言葉をつないだ。
「ツナ兄、優しくしてくれて。ダメなオレにも優しくしてくれて」
目じりを涙が伝った。
懸命にそれを指でぬぐって、拳を握った。

「大好き、ツナ」

その言葉が届いたのかどうかはわからない。
昔と変わらない穏やかな笑顔を見上げて。
祈るような気持ちで返答を待った。






>霧

「クフフ・・・のっとりたいぐらい好きですよ、綱吉君」
反応がない相手にクフと笑ってから、困ったような顔をして前髪をかき上げた。

「ああ、いけませんね。こういうときぐらい本心でしゃべらなくては」
そういって、彼の後ろまで歩いてきて、ぴたりと足を止めて。
ゆっくりと肩に両手を回して、抱きかかえる。
「・・・のっとれないぐらい、惚れこんでしまいましたよ」
クフフ、と耳に唇を寄せる。

「さあ、君の返事をください、僕に諦めさせてください」

ねえ、と懇願しながら濡れた頬を寄せる。
絶望の淵に立って返答を待った。






>雲

「・・・・・・どうでもいいよ」
溜息をついて、背中を向ける。
けれど足を踏み出すことはなかった。
「僕が告白したって、何の意味もないでしょ」
その背中は動かない。
「だって君は、いつも群れているもの。群れない僕の傍になんか、こないじゃない」

わずかに肩が震えた。

「・・・・・・ねえ、もし、言えたら、隣に来てくれる? 好きだよって言ったら、君は僕の傍にいてくれるの? 沢田綱吉」

振り向かずに返答を待った。







>黄

「一度しかいわねーぞ」
いつもは拳銃を向けるところだったが、丸腰で相手の前に立つ。
挑発的に見上げてみれば、困ったような笑顔で見下ろした。

「オレのものになれ、ツナ」
答えない相手に、焦れて歩み寄る。
昔と同じ手を引く、今では自身と同じ硝煙の臭いがした。
「いや、お前は昔からオレのモンなんだ」

断言して返答を待った。






>藍

「君は好きだよ、お金くれるし」
しょっぱなからそう言って、子供らしいふにふにした手で腰の辺りに飛びついた。
「基本的に優しいし、人使い荒くないし」
顔を摺り寄せてから、ゆっくりと自分の手でフードを取った。

一番可愛く見えるような角度で、上目遣いに見上げた。

「大好きだよ、ツナ」

少し力をこめて返答を待った。






>青

「オレについてこいコラ」
そう言ってから、もう一度言葉を捜した。
「・・・お前は必ず守ってやるぜコラ」

つかつかと歩み寄って、まだ自分より高い位置にある肩を引き寄せようとする。
手が届かないことにもどかしさを感じて、眉をひそめた。

「愛してるぜツナ、コラ!」

バンダナの下から見た彼の顔は記憶と変わらない。
初対面の弱弱しい印象だけが消えていて。
見つめながら返答を待った。






>晴

「沢田ーっ! 極限愛しているぞ!」
大声で叫んで正面から抱きつく。
むぎゅうという声が聞こえたが、気にせず力をこめた。
「ぎっ・・・ギブギブ! 死にます、死にますよ了平さん!」
「む、そうか、すまんな! 沢田への思いのたけをこめたのだ!」
「どんな思いのたけなんですか・・・」

抱かれ跡(?)がついていそうな自分の腕をこすって、綱吉は溜息をつく。
しかし彼は自分が犯した失態に気がついた。
「・・・しまった、口利いちゃった」
まあ了平さんは番外だからいいだろう、多分。
一人頷いて、勝手に切り上げることにした。





>?

「で、判定はどうだ」
「うーん、ハイレベルなのは山本とヒバリさんかなあ。日頃の自分とのギャップをアピールしてたしね」
XANXUSの横にデデンとある黒板の上の方に二人の名前を書き込んで、そうそうと綱吉はその少し下にランボの名前を書き入れた。
「ランボも頑張ってたし」
「逆に最下位はどうなるんだ」
うーん、と唸って綱吉はチョークを口に当てた。

今年の新年度祝いは綱吉就任ということもあり、一味違った趣向になっていた。
あるお題にそって各自挑戦することなのだが・・・そのお題が何かについては今更言うまでもないのだが、最下位にはもちろん死――よりちょっとマシな程度の罰ゲームが待っている。

「了平さんは論外としておいて、マーモンは可愛かったし、隼人はそれしかないのかって思ったけど、良く考えたら愛してますはさすがに今までに無かったし」
骸は不気味だったけど、あの演技力には脱帽したし、コロネロも健気なカンジでよかったし。
「・・・じゃあ決まったじゃねーか、最下位」

ううむ、と唸った綱吉は結局名前を書くのを辞めた。
「どうした」
「だってさ、演技でもあんなふうに言われたらうれしいし」
罰ゲームはなしにして、優勝だけ賞品にしようかな。
そう言った綱吉はしかし、より大きい壁にぶち当たった。

・・・山本と雲雀、どっちか選べっていうのか。

「うう・・・決められない」
頭を抱えて唸った綱吉。
あと五分もすれば結果発表で、みんなの前に結果と共に出て行かなくてはいけないのに。
「おい、綱吉」
「なんだよXANXUS、今考えて――」

振り返った綱吉の頭を捕まえて、鼻が触れ合うほど近くで彼の目を覗き込む。
息が止まったような顔をしている彼に喉の奥で笑って、そのままの場所で囁いた。

「俺にはお前だけだ、綱吉」
「・・・!」
「俺とお前と、世界がそれだけならいい。腐ったボンゴレなんて捨てちまえ」

それ以上彼が何か言う前に、上体を少しだけ動かして相手の唇へ。

近づいて。

「つっ!」

悲鳴に近い引きつった声を綱吉があげるのと、XANXUSが痙攣めいた笑い声を上げるのが同時だった。

「ははは・・・あはははははは」
「ザッ・・・XANXUS!」
顔を真っ赤にした綱吉に、相変わらず笑いながらXANXUSは彼の手からチョークを奪うと、自分の名前を黒板の一番上に書きなぐった。
「これでいいだろう」
「・・・お前ね」

呆れたように笑った綱吉を見下ろして、彼に手を差し伸べて引っ張り上げて立ち上がらせる。
「で、綱吉」
「何だよ、そんなに賞品が欲しかったの?」


「返答は?」

「・・・・・・お前と俺だけの世界とか、怖くて仕方ないんだけど?」


心底嫌そうな顔で返されて、XANXUSはまた腹を抱えて笑った。





 




***
ギャグでした。