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胡坐をかいて背伸びをした。
もう、どうしようもない。
「うあー、やっちまったー」
詳しい経緯は置いておいて、綱吉の余命はあと十分と言うところだ。
目の前のタイマーがご丁寧にカウントダウンをしてくれる。
「XANXUSー、もーあきらめろよ」
「だな」
パソコンに向かっていた暗殺部隊の隊長はそう言って立ち上がった。
時限爆弾がある。
仕掛けた本人は解読コードを知らなかった。
ここのアジトにいた連中は全員お亡くなりになっている。
そしてコンピュータをいじって見つけた暗号はタイマーをとめられなかった。
八方塞り。
「ったく、最期がテメェとかよ」
「そりゃ俺のセリフだ。何でお前と最期なんだ」
床に座って両方とも胡坐をかいて。
淡々といつものように軽口を言い合う。
ここからの脱出口はない。全ドアが電子ロックでおまけに電源が切れたら扉が開かないタイプだ。
仕掛けられた爆弾はきっちりこのアジトを跡形もなくぶっ飛ばす程度の量はあった。もちろん避難できそうな場所はない。
「ったく……テメェが首突っ込んだ所為だぞ」
「あー、はいはい。すみません」
何度目かになる詰りを受けて綱吉は肩をすくめる。言訳する気はない。
それにしてもこんなところで終わるのか。幽霊になった状態でリボーンにとっちめられそうだ。二度殺されそう。
「皆ちゃんとやってくれるかなーっつーか十一代目とか指名してないや。頑張れ父さん」
呟きながら綱吉は目を閉じる。
怖いという感情はなかった。なんか申しわけなかったけれど。
「――っ……ぅうん!?」
ぺろりと唇を舐められる。変な違和感が引いていく。
「な……!」
目を開けると眼前にXANXUSがいた。
真紅の目の奥の感情はよくわからない。
「綱吉、テメェ処女だろうな」
「はいぃ!? 何言っちゃってんの? 狂った!?」
男に処女もクソもないだろ、と突っ込もうとしたのにもう一度唇を舐められる。
ぬるんとした感覚が、唇をなぞって、離れる。
「はぅ」
「あの家庭教師に掘られてねぇかってコトだ」
「かてきょ……ってリボーン? っつーか、掘るて……お、お、俺はノーマルだ異性愛者だフツーだ!!」
「そうか」
さくっとXANXUSの体が引く。
ほうと綱吉は溜息をついた、いきなりなにさらす気だこの男。
「……ってぇえええ!?」
思い切りシャツを剥ぎ取られる。
いや、すでにボロボロだったけど何も引きちぎらなくとも。
あらわになった腹が寒い。
……なんてのも、XANXUSが手を押し当ててくるまでだった。
「な……なにすんだ!!」
「黙ってろ」
「黙りゃあしねえ!! なにさらすんだお前は!」
とんっとXANXUSは答える代わりに綱吉の肩を押した。
そのままばたんと床に倒される――訂正、押し倒される。
「XAN――」
「黙ってろカスが」
睨まれて、唇に噛み付かれる。
押し付けられた舌を受け入れたくなどなくて、必死に抵抗をしていると、顔をいったん離したXANXUSが低い声で呟いた。
「人生の最期ぐらい素直になっとけ」
「なにが素直――んぐぅ」
ぐりぐりとねじ込まれて吸われて侵されて。
頭の奥がぼうっとして、全身に熱がこもりだす。
特に下半身にそれが顕著で、綱吉は苦しさに眉をひそめた。
「うぁ――」
ねちょりと舌が離れていく。
小さく息をつきながら、綱吉は自分を押し倒している男を見上げる。
「お前――なにこれ、今更」
「いいだろうが」
「いや――その、綺麗に死にたかったんですけど」
「安心しろ。肉片も残らねぇよ」
そういう問題じゃねぇよ。
突っ込みたかったが、XANXUSの手がすでにズボンを脱がしにかかっていたので蹴りで反撃した。
「とにかくやめろって!」
けれどもここまで戦闘でボロくなっている綱吉の蹴りなんぞ、もともと体を鍛えているXANXUSには大した事はなかったらしい。
わずらわしそうな顔をしつつも、丸無視された。
下半身まであらわにされる。
これで敵が残ってたら全員抹殺するところだが、生憎とすでにこの男にされてしまっている。
本と肉片も残らないのが救いだ、こんな状況の死体が発見されたらあの世でも悶えられる。
「……う」
覚悟はしていたが、握りこまれて情けない声が出る。
「やぁ――っつーか……XANXUS」
「なんだ」
くちゃくちゃと弄ばれる。背筋を這う快感の中で必死に口を動かした。
「お前――なんでこんな状況で、こんな」
「ああ? 今更それを聞くか」
「今更、て……お前別に今までそんなこと――っつーかお前もノーマルと信じてた、の、に――あぅっ」
鼻でせせら笑われる。そんなにおかしいことを言ったか。
内心男を罵倒しながら快楽に悶える。っつーか上手いなおい。
「おい」
「な、ぁんだ、よ」
「――安心しろ。キッチリ天国に突っ込んでやるよ」
「最期に男とヤってたら間違いなく地獄行きだろうがぁ!」
「もれなく俺とな。綱吉」
無意味に名前を呼ばれて綱吉は閉じていた目を開ける。
しかしそれと同時にとんでもないところに指を突っ込まれて喉をそらせた。
「ちょ――なにそこっ」
「他に突っ込む穴があるのか?」
「当然みたいな顔で聞くんじゃねーよ! うや……気持ち悪……」
指は一本でも、痛いわけではなくとも、ものすごい違和感。
けれどXANXUSの指が動くと、そこから先は早かった。
「ひゃう!? あっ、あぁっ……んっ」
イった瞬間がわからなかったが、腹にぐっちょりと広がった感覚でぼんやりと悟る。
飛び散った飛沫を顔に浴びたXANXUSが、ぐいと手で拭いながら行為を続行する。
「……テメェ……良く今まで女抱けてたな」
「何だそのコメント! ――っあ、う、そこ……」
「ささやかだな、と。あとびんか」
「うるさいお前と一緒にするんじゃねえええ!!」
絶叫して掴みかかろうと腕を伸ばす。だが肩にかすっただけで体が言うことを聞かなくなった。
「やぁっ、ん、ひゃ」
腕が落ちて男の腕にすがる。
溢れる快楽に思わず爪を立てる。男の顔が愉悦に歪んだ。
「綱吉」
「やぁ……もう」
頭の中が真っ白でマヒして。流されるままに綱吉は嬌声を上げた。
誰ももう見ていない。残りの寿命はあと何十分だ。
もうどうでもよかった、かもしれない。
「ぁ……ん」
指を抜かれていきながら、うっとりとした声を上げた。
冷静にそれを見ている自分がいたけれど、もうどうでもよかった。
「XANXUS」
男の名前を呼びながら中止させた愛撫が欲しくていやいやと首を振る。
そこで視界にタイマーが入る。残りは五分。
「入れるぞ」
「ぅう……」
押し付けられたモノの大きさが予測できて眉を寄せると、ちゅっと瞼にキスを落とされる。
「安心しろ」
低音の声が響く。甘く溶ける。
「五分もありゃあ十分だ」
「くぅっ」
入口に押し付けられていたものが、ゆっくりと侵入してくる。
そんな生易しいものではなくて、むしろ引きちぎられているような感覚。口から無理やりに何かを詰められているのと似ている。
「あぅ――あ、あ、」
「……我慢しろ」
静かに言われて、舌を絡めとられる。
くぐもった声で啼き続けながら、綱吉は痛む腰を思いやることをやめた。
裂けたって構うものか。どうせこの体はあと五分もせず吹き飛ぶのだ。
「んっ」
相手に答えるように、舌を突き出して腰を突き上げる。
ズンッと鈍い衝撃と共にXANXUSが小さくため息をつく。全部入った。
入れてみれば痛みはすごいが我慢できないほどでもない。
これなら大したことないかも、とか思っていたら甘かった。
「ひうっ!?」
がず、と抜かれる。それからまた押し込まれた。
それほど大きな動きではないのかもしれなかったけど、綱吉の理性と感覚をぶっ壊すには十分だった。
「きゃふっ――ふあっ、ひゃあっ」
涙も涎も汗も一緒くたに流して、綱吉は喘いで啼いて叫んだ。
びくんびくんとマヒする指先が悲しくて、覆いかぶさってくる男の背中にまわす。
すると男は綱吉の背中に手を差し入れ、ぐいと抱き上げた。
「ぐぅ――」
抱き上げられた結果、自重でやや抜けかけていたのを深く押し込むことになって綱吉はくぐもった声を上げる。
苦しくて熱くて、腹いせに目の前にあった男の肩に噛み付いた。
「……あと二分な」
耳元で呟かれる。
噛んだ口を離して、謝罪のように口付けた。
「いいぜ、とっととイかせてくれ」
ぐしゃりと髪を撫でられる。
綱吉はしっかりと男の背中に手を回した。