<Go to Vongola 6>




あくまでそれは後日談だったが。


「クフフフフ、ちょろかったですよ」
「たまにはあんぐれーやらねーとなまっちまうぜコラ!」
「うふふ、愛は偉大な力なのよー」
「極限雑魚だったぞー!」

大変に大暴れしやがった面々が楽しげに話す横で、リーダーとされた獄寺は綱吉に頭を下げ、山本は気まずそうにそっぽを向いていた。
「ねえ、あのさ、俺、極力不殺っていったよね・・・」
本部に呼び出しを喰らった綱吉が渡されたのは書類の束。
別に処理しろというわけではなく、あくまで目を通しておけということだった。
しかしそれを見た綱吉はめまいを感じた。

ボンゴレのアジトは案外全滅していなかった。
戦闘意欲を失っていたり、そもそも裏切りを知らなかった者もいたし、怯えきった表情で武装解除してガタガタ震えている彼らを殺すほど弱いものいじめが好きな面子はいなかった。
よって被害はまあ・・・数字にすると怖いが、当初の予定とそれほどかけ離れてはいない。
だけど。
であるけれど。

「山本・・・壊滅じゃん」
「はは、なんかなー・・・わりぃな、ツナ」
「隼人、これは?」
「面目ありません! 俺の力不足でした!」

聞くまでもなく、綱吉の超直感と書類を斜め読みしたリボーンによって結論は出ている。
獄寺の方は残念ながらそんなに力加減ができる面子ではなかったのと、六道骸のせいだろう。
山本の方は・・・故意に命令を無視したとしか思えない。
「山本、どうして」
それまでへらへら笑っていた山本が、まっすぐに綱吉を見下ろす。
「残しておいたらまた、ツナが狙われんだろ、俺はそれ、嫌だからな」
「俺も山本に同感です、十代目。十代目はお優しいけど、次の事件を引き起こしかねません」

う、と言葉に詰まって綱吉は視線を左右に彷徨わせる。
それはリボーンにもコロネロにもスクアーロにも言われた。
この場にいたらたぶんラル・ミルチとかディーノさんにも言われそうだ。

「俺は賛成だがな」
冷ややかな声に綱吉は振り向く。
「テメェの甘さが争いを呼ぶなら、俺は願ったりだ。存分に敵を甘やかせ」
「てめっ・・・」
獄寺が拳を握る。
綱吉は溜息をついた。
「XANXUS・・・俺は今冗談を聞く気分じゃないよ」
「それは俺の台詞だ。マフィアは所詮そういうモンだ」
テメェのがおかしいんだよ、カス。

にこりともしない彼に指差された書類を見下ろして、綱吉は苦笑した。
「ああ・・・そう、かもね」
「どこに敵へ損傷を与えて帰った部下を叱責するボスがいるんだ」
「XANXUS日本語の語彙増えたよね」
「かっ消すぞ」
話をおもいおっきりそらそうとしたついでに目線もそらした綱吉へそう返して、XANXUSはポケットの中のものを取り出すと、それを綱吉へ向かって投げる。
ぱしゅっと受け取った綱吉は、それを見て目を丸くした。

たしかこれは。

「ボンゴレリング・・・?」
厳密にいるとそれがはいっていたケースだ。
ぱかりと開くと燦然と光り輝くリングが七つ、完成形。
けれどそれは本物ではない。
「これって」
「金庫の中で見つけた。奴らはボンゴレリングにすら手をかけていたんだ」
本物のリングはとっくに綱吉と守護者に継承されているが、公にはなっていない。
リングも偽者ではあったが、かっちり九代目が本邸で保管していたはず。
「十代目綱吉。テメェはどこまで愚弄されれば腰を上げる」
赤く光る目で睨まれて、綱吉は肩をすくめた。

「俺ってそんなに、ボスらしくないのかなあ」

「あたりめーだろ」
「決まってるよ、シシシ」
「金の払いっぷりはボスだけどあとはダメだよね」
「ツナちゃんはかわいものねえ」
「クフフ、出会った頃と変わっていなくて喜ばしいことです」
「まあ、小動物だし」
「舐められても文句はいえねぇぜ、コラ!」
「極限幼顔だからな!」
「ボンゴレは・・・まあ、その、ええ」
「・・・・・・」
「どーみてもガキだろーがぁ゛ー・・・」

「そんなことはありません、奴らはわからないだけです、十代目の素晴らしさが!」
「ツナだって成長してるもんな」
「ハッ何処がだ。体形までオソマツな幼児体形じゃねーか」

せっかくの獄寺と山本のフォローを叩き潰したXANXUSへ、綱吉が怒気をこめた視線を送る。
「XANXUS・・・!」
「事実だからしかたねーだろ。で、どーすんだツナ」
ちゃっちゃと決めろといわんばかりの家庭教師様の言葉に、綱吉は溜息をついた。
「・・・あとは、九代目に任せるよ」
これ以上は暴れて解決できそうにないしね。
自分の手でケリをつけれないのは嫌だけど。

それでも。

「こんな被害総額出すぐらいなら・・・」
そう思った綱吉はだいぶボスとしての自覚が出てきたらしい。

 

 

 






***
ざっくり完結。