<さる日本人の話 〜After Story〜>
俺、小川聡史ことサトは、もとはただの不良だった。
アメリカでマフィアの世界に足を突っ込み、先日ちょっとした事情によりボンゴレファミリーに入る事になった。
あんまりにもいろんな事が立て続けに起こったもんだから、正直理解しきれてない。
なくても飛行機はイタリアに着く。
イタリアの光景は、馴染んだアメリカとも久々に戻って懐かしく感じた日本とも全然違った。
ここがイタリア。
ここにボンゴレが。
・・・・・・いやいや、こんなんでびびってどうすんだ俺。
「サト、どうした?」
ガラス越しにイタリアの風景を見ていた俺にタケシが声をかけてくる。
その後ろにハヤトとツナがいた。
飛行機では俺だけがエコノミークラスだったから(当然だ、第一ボンゴレ十代目と幹部が一緒に乗ってたら途中で緊張で力尽きる)何があったか知らないが、ツナの顔色が悪い。
「・・・あぁ気にしないで少し酔っただけだから」
俺の視線に気付いて棒読みでツナが答える。
その目は空ろで、確かに酔っているように見えた。
けれどツナの顔色は、車に乗って屋敷に向かうにつれどんどん悪くなっていく。
助手席から俺はバックミラー越しにちらちらと窺うが、運転しているタケシもツナの隣に座っているハヤトも何も言わない。
乗り物酔いなら車に乗ったら余計に重くなりそうだし、この二人の言動を数日間見ただけでもツナが乗り物酔いでもしているものならすぐに車を止めそうなものなのに。
ますますツナの顔色が悪くなって、蒼白という表現がぴったりだ。
これはさすがに止めた方がいいんじゃ、と俺が言い出す前にタケシが車を止めた。
俺の方を向いてにやりと笑う。
「着いたぜ」
「・・・・・・・・すげぇ」
すげぇとしか言いようがなくて俺は呆然と見上げた。
そりゃあイタリア全土をたばねるマフィアのドンが住む屋敷だから、きっとでっかいんだろうなぁとは思ってた。
大きさだけだと想像よりはこじんまりとしていたけど、なんかボスの屋敷って言われると納得できる。
なにより庭がでかい。
・・・さっきくぐったでかい門みたいなのが敷地の入り口だったのか?
「着きました、十代目」
「・・・・・・・・・・・・・・・やだなぁ」
ぐったりとした表情でツナが車を降りてぼそっと呟いた。
ハヤトが眉を寄せて溜息をつき、タケシは苦笑して肩を竦めてみせる。
俺は三人の様子に首をかしげていたけど、急にバタンと扉が開かれてそちらに視線がいった。
立っていたのは三人の男。
一人は短い髪にマフィアらしい黒スーツで、手にはなぜかトンファーが持たれ、肩には何か黄色い塊がくっついている。
黒スーツのもう一人はなんだか南国果実を彷彿とさせる髪型をしていて、さすまたのような棒を持っていた。
三人目はスーツの上にでっかいマントを羽織ってて、首のあたりにカラフルな羽をいっぱいつけてた。
顔に傷があって目つきも悪くていかにもって感じだ。
・・・こっちの方がボスっぽい。
そして俺は、三人の姿を見た瞬間にツナの顔が更に白くなったのを見てしまった。
「オカエリーオカエリー」
きいろい塊が甲高い声で鳴いた。
鳥だったのかあれ。
ていうかしゃべるのか。
「オカエリーツナー、ヒバリーオコッテ、ルー♪」
ぱたぱたと飛んできて、タケシの頭にちょこんと止まる。
「おかえり綱吉」
「待ってましたよ綱吉君」
「わざわざアメリカまでごくろうなこった」
「・・・・・・・・・・・・愛のあるお迎えをありがとうございました。というわけでマーモン、ボーナス奮発するからタスケテ」
顔を引き攣らせてツナが言うと、どこからか子どもみたいな声が響いた。
声はするけどどこにいるかは分からない。
「もう三人から分割でもらってるんだ。君を逃がさないようにってさ」
「山本も隼人も俺を助けようよ!」
「頑張れツナ」
「申し訳ありません十代目、今回ばかりは俺もそちら側です」
「ちくしょう!! ボスをなんだと思ってるんだ!」
「ぐずぐずしてないでとっととおいで」
「そこに座ってくださいね。もちろん日本人らしく正座で」
びしっと指差されたそこに、ツナは半泣きの表情で座った。
・・・・・・・・・・あれ、ツナってボンゴレ十代目なんだよな?
だけどどうやら日本人らしい(喋ってる言葉が全部日本語だ)二人の出す威圧感は尋常じゃなかった。
「で。僕がいない間にずいぶんと楽しい事してきたみたいじゃない」
「いや、別に楽しくはなかったデスヨ」
「しかも僕おいてきぼりですよ。屋敷にいたのに!」
「や・・・だってお前だしたらややこしいことになるし・・・」
「それで一人で行くなんてあんまりじゃぁないですか!」
「・・・お前連れて行ったらヌーボファミリーまでつぶしかねなし・・・」
「ああ、それはそれで面白そうだよね」
「だから連れて行かなかったんですよ! わかってくれました!?」
「分かるつもりはない」
「まぁいいや……もちろん僕らが楽しめなかった分君が楽しませてくれるんだろう?」
笑顔でじゃきっとトンファーを構える。
あれ、なにこれ、暴力沙汰? つーかどういう展開?
ツナはゆっくりと立ち上がって、ただ一人傍観していたカラフルな羽をつけた人を見た。
なんか覚悟を決めた男の目をしている。
「XANXUS、暴力の罰はヤメテクダサイ・・・」
・・・・・・・・・・・・・・・。
「・・・今度仕事回すって事で免じてやらぁ」
「・・・哀れみの視線どうもアリガトウ、さすがXANXUS。じゃあお相手しますよお二人・・・・そんなに「共闘」したいとはおもいませんでした」
「・・・・・・・・まぁ不本意だけど」
「三つ巴ですね・・・クフフフフフ」
「最初から誰か連れてけばこんな事にならなかったんじゃねーか…」
「・・・・じゃあ次はXANXUSをつれていきます」
「僕じゃないんですかΣ( ̄□ ̄|||)」
「骸は手当たりしだい殺すからダメ」
「えー!?」
「・・・・この中で俺の命令をマトモに守ってくれるのはXANXUSなんだもんよ」
「あ、そう。じゃあ今の君は遠慮なくかみ殺していいんだね。ついでにそこの植物と負け犬も咬み殺す」
「クフフフフ、望むところです」
「誰が負け犬だ・・・・・・」
「言葉通りさ。この間僕に負けてるしね」
「今度は勝ってやらぁっ」
「俺に無断で戦わないで・・・ってその時の被害報告書来てないけど」
「「・・・・・・・・・・」」
「まさか、隠してたとか?」
「「・・・・・・・・・・・・」」
ぶちんと何かの切れる音がした気がした。
グローブをはめたツナが、あの時と同じ、オレンジの炎を額に灯して目を細めた。
「・・・・・・・・・・・・・・・・殺る」
「・・・・・・避難勧告だしとくか」
「ヒナーン、ヒナン♪」
「サト、手伝え」
「は、はい!」
ハヤトに声をかけられて俺は慌ててその後につき従う。
正直これ以上ここにいたくなかった。
オーラが怖い。
綱吉「そこに直れ守護者&ヴァリアーどもおおおおお!!!!」
ツナの怒号がイタリアの青空に響き渡った。
***
メッセの会話から。
玄関の場面のセリフはほぼメッセの内容です。
こうして書いた気分になってネタが消化されていくのです。