<適齢期>
コツコツコツ。
男にしては細い指(と言われるのを本人は気にしている)にゴツい指輪がはまっている。
余計に指が華奢に見えたりするが、とりあえずその指が苛々とテーブルを叩いていた。
もの言いたげに見上げてくる視線に、XANXUSは視線をそらそうとして失敗する。
「ねえ、不公平じゃない」
「・・・何がだ」
ボンゴレ十代目は、優雅に日本茶をすすりながら、挑むような眼光を向けてきた。
「XANXUS、今幾つ?」
「31だが」
「普通、俺の結婚よりお前だと思うんだ。なんで俺にばっかり」
「・・・そりゃお前、俺にガキができても跡継ぎにはならんかだろーが」
昔は上層部の一部すら知らない極秘事項だった。
今はチェルベッロ機関の関係もあって、ファミリーの大半が知っている。
それでもXANXUSは九代目の息子として扱われているし、綱吉も親戚の兄貴分の扱いをしているので、特に対応が変化したわけではない。
「愛人を適当に孕ましといてもいいんじゃないか」
「冗談。俺はそんなことしたくないし・・・」
「かといって結婚したい女もいない、と」
「いない」
俺が知るかよと当然のように言い捨てられて、綱吉はぶすくれた。
正直、まだそんな時期じゃない。
ぜんぜんそんな時期じゃない。
なのに門外顧問(実父)に「孫はまだかツナ!」といわれ九代目に「早く子供の顔が見たい」とせがまれた。
父はともかく九代目、あなたはXANXUSにせがんでください、俺じゃなく。
そしてできれば父もXANXUSにせがむべきだと思います。
「俺今、23なんだ。まだ結婚適齢期じゃない」
「お前が死んだらボンゴレの跡継ぎがいなくなる。せっつかれんのはあたりまえだな」
「じゃあXANXUSやってよ」
「・・・俺はボンゴレの血を引いてねぇだろう。ボンゴレリングにも拒まれたっつーの」
「ボンゴレリングなんて壊しちまおうかな」
「・・・・・・てめぇ、たまにむやみと豪胆だよな」
溜息をつかれてそれは明らかに呆れていたので、綱吉は「実は別の未来の俺はやっちゃったんだ」とは言わないでおいた。
きっと知らないほうがいい。
「まあ、そのうち嫌でもガキは出来るさ」
嫌そうな顔をした年下のボスの頭をぐしゃぐしゃとかき回す。
いささか乱暴にやったので、髪が数本抜けて指にくっついてきた。
「よし、こうしよう。XANXUSが結婚したら俺も子供を作る」
「う゛お゛ぉい!」
思わずスクアーロのまねをしてしまったXANXUSが、前のめりに突っ伏したのも無理はない。
もしここで綱吉が「子供を」だったら、XANXUSとしては譲歩できるぎりぎりだった。
ガキなんか適当に作って、適当に金を渡して育てさせればそれでいい。
それでボンゴレ十代目が子供をつくる気になったらそれでいい。
・・・しかし・・・結婚・・・
「俺には「堅気」並みに無縁そうな言葉だなおい」
「あっはっはー、だよね」
つまりそれは。
当面する気がないと。
そういうことだな十代目。
しかしヘタにこれ以上せっつくと、九代目から強制的に結婚させられそうな気がしたので、XANXUSはこの件に関しては全面的に綱吉の味方に回ることを決意した。
***
そんなこともありました。(待