<平凡が非凡>
うん、予想内だった。
全然予想内だった。
獄寺に始まり、山本に京子ちゃん、ハルまでいる。
そんなこと、予想内だ・・・うん。
ボンゴレ(というかリボーン)にクラスわけがいじれないなどとは思っていない。
それより問題は。
「・・・・ねえ、クローム」
「はい、ボス」
「何で君が、ここにいるのかな・・・」
にこりと微笑んだ少女は、ボスと同じクラスで嬉しいです、と言ってくれる。
美少女のクロームにそう言われるのはまんざら悪くはない。
悪くはない、が。
「たしか、オレの一つ下だったよね?」
「大丈夫です、勉強がんばります」
「・・・うん、そう」
まあそうならいいんだけどね。
遠い目で呟きつつ、綱吉はいままで逃避していた現実に眼をむけることにした。
視線の先。
「・・・・・・・・・なんで・・・骸までいるの・・・?」
綱吉の斜め前の席に座り。
にこやかな笑顔で女生徒(一般人)のお相手をしていたのは。
間違いなく寸分違わず、六道骸本人だった。
「だって、骸様も高校生活がしたい、って」
いけませんでしたか、と困ったような顔をしたクロームにNOといえるほどツナは強くなどない。
「いや、まあ、うん」
マフィアのファミリーを一つつぶしておいて。
逃走不可能と呼ばれた監獄から二度も脱出しておいて。
さらに現在、本体がモロに捕縛されておいて。
ついでにすでに輪廻をめぐるほど転生しているんじゃなかったのか。
何で今更高校生活なんだお前。
「へーえ、六道君って山本君とか獄寺君とも仲いいの!?」
「ええ、ちょっとした縁で」
「キャーッ、じゃ、じゃあこんど獄寺君のこと紹介してよ! 山本君は人当たりいいけどさあ、獄寺君はなんか口がききにくくって」
「でもそんなところがクールだよね!」
「クフフ、いいですよ」
(・・・ホント、何しに来てるんだこいつ)
本体が監獄にある以上、ここにいるこいつは有幻覚である。
わざわざ力を使ってまで何をしてるんだ。
と、最初に教室でみて疑問に思ったのだが、数日間なにもないので(雲雀との接触は現在ない。すばらしいことである)純粋に学生生活を楽しみたいのかもしれないと思い直した。
(そんなに、普通の学生をしたかったのかな・・・まあ、普通の生い立ちじゃないしな)
骸が隣にいるだけで綱吉の生活は自動的に「非凡」になるのだが、心優しきボスはそんなことは気にせず、それより骸がせめて平和に過ごせるならとか、そんなことを考えていた。
「ねえねえ、六道君の好きなタイプは?」
「そうですね、小柄で細身で、小動物のような人が好みです」
(へえ、そうなんだ・・・じゃあクロームとはやっぱりそういうのなのかな?)
話を盗み聞いていた綱吉がちらりとクロームへ視線を走らせたが、その瞬間ばっちり目があって、慌てて視線をそらす。
「えーそーなのー? カワイイ系?」
「そうですね。可愛くて、けれど強い。そんな方が好きです。ね、沢田君」
唐突に笑みを向けられて、綱吉は全身の毛がざわりと逆立った。
ちょっと待て。
「特に色素が薄めでちょっとぐらい間が抜けて」
「・・・・・・」
骸の笑顔を真顔で受け止めて、綱吉は思いっきり手にしていた消しゴムを投げられたらよかったと本気で思った。
残念ながらそれはならなかった。
綱吉は平和な時間を高校で送りたいと、まだ思っていたからである。
「そうだねえ、そんな子がいたらいいねえ」
微笑み返して無難な言葉を打ち返しておく。
なお綱吉は骸がこれっぽっちも真実を語っていないのを知っている。
こんな遠まわしな嫌がらせを言うぐらいなら、雲雀さんみたいに正面から咬み殺しにきてくれたほうが楽なんだけど。
「クフフフ。まったくですね。でもすぐ傍にいるかもしれませんし、希望は持っておきましょう」
「・・・骸さあ、人の神経逆なでするのうまいよね」
過去にそれでブラッド・オフ・ボンゴレを覚醒させられた覚えがある。
そういえば綱吉がこの道から引けなくなったのは骸のせいでは。
そうだきっとそうに違いない。
感謝するべきか否か、答えは間違いなく、否である。
「クフフフ、君は相変わらず面白いですね」
「骸は相変わらず自由だよね・・・」
「もちろんです。では失礼します」
「え」
どこに行くの、と無言で問いかけてきた綱吉に、骸は楽しそうに笑うと女生徒に一礼をして踵を返す。
「クフフフ、応接間でしたっけ」
「行くなー!!」
沢田綱吉15歳。
入学4日目。
雲雀恭弥と六道骸の戦争との戦争に介入し、「非凡」と認定を受けた。
グッバイオレの平和で平凡で平穏な高校生活。
***
ハロウ、骸が共にクラスメイト。
そうまでして押し込んだのには理由があります。
犬と千種は違うクラスに居ると思います。