無言で綱吉は立ちつくした。
聞いてないぞコノヤロウ。
<アルカンシエル>
今日はオフだったのだ。
そんな綱吉を起こしに来たのは獄寺であり、時計を見ればいつものオフよりは若干早かったものの、むしろ獄寺が沈痛な面持ちだったのが気にかかって起き上がった。
そのまま適当に朝食を食べ、部屋を出たところで山本と遭遇し、彼は無言で綱吉の肩を叩いた。
疑問に思いつつ廊下を進むと、珍しく戦っていない雲雀と骸に出くわし、二人して無言で綱吉から視線をそらしやがった。
嫌な予感が超直感的にひらめき、即座にクロームに連絡を取ったが別に二人が破壊行動を起こした事実はないらしい。
胸をなでおろしてオフを満喫しようと外に出ようとしたらランボが現れ、一人で外に行くのは危ないからやめてくれと屋敷に引っ張り戻される。
そうしてすねた綱吉に、了平がまっすぐな笑顔を向けてくれた。
彼曰く、客人がちょうどそろったところだという。
そんな予定はないのだが、ディーノさんあたりかなとアタリをつけて客間に足を踏み入れた。
「やあ、綱吉」
「久しぶりだな、コラ」
「何で僕がこんんところに・・・」
「文句があるのかパシリ」
「まったくだぞ」
迎えてくれたのは。
マフィア界最強最凶そろい踏み。
アルコバレーノsだった。
そして綱吉のその時の心情が冒頭である。
守護者sのいやんな対応の意味が良くわかった。
知ってたなてめーら。
「おいダメツナ。せっかく来てやったのになんだその顔は」
帽子の下から剣呑に光る目をのぞかせてリボーンが言う。
「もっと歓迎してくれてもいいじゃないか」
フードに隠れて表情は見えないが、マーモンもといバイパーが笑う。
「お前が足を向けないから来てやったんだぞ」
ゴーグルを引き下げたラル・ミルチが睨む。
「はるばるきてやった俺たちに感謝しやがれ、コラ」
にやりと口元を持ち上げたコロネロは得意げに鼻を鳴らす。
「・・・オレは巻き込まれただけなんだ」
ひっそりと主張したスカルの溜息は黙殺された。
「固まっちまってるぜコラ」
「一発ブチかましてやれリボーン」
「言われるまでもねーぜ」
リボーンが愛銃を取り出す。
目標に狙いを定めて引き金においた指に力をこめ。
「待った!」
硬直していた綱吉がようやく声をあげた。
チッと舌打ちが聞こえた気がするのは気のせいですか。
「な、なにやってんだよお前ら!」
呆れたように言った綱吉に、てめーこそ何言ってんだといわんばかりの視線を全員が向けた。
「来てやったっていってるじゃないか」
「何でそんなにえらそうなの!? てゆーかお前らの誕生日でもないしクリスマスも祝い事もないぞ!?」
はあ、とリボーンがため息をついた。
察しが悪いなとスカルがぼやく。
「綱吉、今日は何日だ?」
「5月4日。あ、明日はヒバリさんの誕生日だけどあの人は群れるのが嫌いだからパーティとかはしな・・・」
「誰があいつを祝いに来るんだ」
苦々しい口調で言ったスカルがいやな思い出があるらしい。
「まだわかんねーのかコラ」
「まったく相変わらず鈍いね、5月5日って他にあるだろ」
そのマーモンのご丁寧な一言でわかってしまった。
理解してしまった。
気がついてしまった。
「ささ、小遣い頂戴」
「ボンゴレの情報」
「間諜の仕事」
「大暴れできる依頼」
「最高級の依頼」
おっけーわかった。
つまりお前らは。
遠く離れた日本の習慣であるこどもの日にかこつけて
たかりに来たと。
しかも後半四名、それはとてもほいとよこせるものじゃない。
あれだろう、お前らここしばらく仕事もらえなかったことを恨んでるんだろう。
ついでにラル、君の仕事は俺の管轄じゃなくて親父の管轄です。
「「つーなよーし」」
十歳前後の見目良い子供達が、一斉に綱吉に向けて両手を差し伸べた。
「「ちょーだいっ」」
頭痛を堪えるような顔をしていた綱吉は、米神に当てた指を離すと仕方ないなあと言いたげな微苦笑に変わった。
「・・・・・・・・・マーモン、現金か振込みか小切手か指定しなさい。スカルは紙一枚分で勘弁してください。ラルは新興ファミリーの内偵の仕事を回すよ。コロネロはこないだ見つけた郊外にある麻薬密造施設の破壊でもしてもらおうかな」
すらすらっと要求のものを口に出した綱吉に、四人の少年少女は満足げに頷いた。
中央にいたリボーンが綱吉を見上げてにやりと不敵に微笑む。
「で、オレへの依頼はなんだろうなあ、ツナ」
「・・・・・・今度渡米する俺の護衛じゃダメデスカ」
予想外の回答だったらしく、リボーンは軽く眉を上げる。
数秒考えて満足だったらしく、にやと笑った。
「おめーがどーしてもって言うならな」
「どうしても」
躊躇なしに答えた綱吉に、リボーンは不満げに唇を尖らせる。
それからすうとその目を細めて、試すような口ぶりで聞いた。
「オレ以外つれていかねーならな」
「XANXUSが同行予定ダケド」
・・・ああ、あれか。
ふふんと笑ったリボーンはくいっと帽子を目深くおろした。
「受けてやるぞ」
「良かった」
屈託なく笑ってぽんぽんとリボーンの頭を帽子の上から撫でた綱吉は、そのままじゅんぐりに自分よりだいぶ小さいアルコバレーノたちの頭を撫でる。
「でもよく来たな。特にコロネロとか遠かっただろ。昼は好きなもん用意させるからな」
「ボンゴレフィットチーネ」
「焼きそばパン」
「とりあえず一番高いもの」
「パフェ」
「・・・野菜」
口々にてんでばらばら、しかも妙にハズれたものを頼みやがった一同に、綱吉は動じることなく、ただ相変わらずだなあと苦笑した。
***
ラルとスカルの好みは捏造です。