<ヒバードのお茶会>

 


キッチンから明るい声がして、ヒバードは惹かれるようにぱたぱたとそちらへと向かって飛んだ。
可愛らしいフリルのついたエプロンを着たハルと京子が、楽しそうにおしゃべりをしながらボールを抱えている。
中にはヒバードと同じ黄色い色をしたものが入っていた。
「あれ、ヒバードちゃん」
「おなかすいちゃった?」
「スイ、ター」
二人の声に答えて、ぽてんとハルの肩に止まったヒバードに二人が笑いかける。
その間も手が休まる事はない。
机の上には白い粉が入ったボウルや、茶色の小瓶などヒバードにとって不思議なものが沢山おいてある。
「今お菓子作ってるんだよ」
「シュークリームとガトーショコラですー」
できたらヒバードちゃんにも少しあげますね、とハルが言い、ヒバードちゃんは食べても平気なのかなぁと京子が首を傾げる。

ヒバードも京子の真似をしてくるんと首をかしげ、ぱたぱたと机の上に降り立った。
「できあがるまでそこで大人しくしていてくださいねー」
「ハルちゃん、生地ってこれくらいでいいのかなぁ」
「えーっと、本によるともっと間を空けてやらないとくっついちゃうみたいです」
本と生地とを見比べながら奮闘している二人からヒバードは体を背けて、ぽてぽてと机の上を横断する。
机の上にこぼれていた小麦粉の上を歩くと足跡がついて、ヒバードは上機嫌にぽふぽふとどんどん跡を付けはじめた。

散らばった小麦粉の上に一通り足跡をつけて満足したヒバードは、体よりもずっと大きな茶色いものがどっかりとある事に気付いた。
ふんわりと甘い匂いが漂ってきて、ヒバードはそのつぶらな目をきょろきょろと動かす。
京子とハルはシュークリームの生地を搾り出すのに夢中で、ヒバードのことは最早忘れているようだった。

とてとてと近寄ると、ほんのりと空気が温かい。
きゅ、とヒバードは首をかしげた。





「これであとはできあがりを待つだけだね」
「カスタードも完璧ですし、うまく膨らめばいいですねー」
「そうだね、皆喜んでくれるといいね」
搾り出した生地をオーブンに押し込んでスイッチを回したハルと京子は、先に焼きだしていたガトーショコラの様子を見ようと机の上に視線を移した。
粗熱を取るために皿に出しておいたガトーショコラは。
「・・・・・・・」
「・・・・・・・」
ふわっふわのスポンジ生地には、白く彩られた三股の跡がくっきりとつけられていた。

その日の特訓の合間のおやつに出されたのは、手作りならではの少し不恰好なシュークリームと、ヒバード足型付きのガトーショコラだった。


 



***
自由奔放。