人生とは予想外の積み重ねである。
だがたまに予想外とかいうレベルではなくなることもある。
                 ――ボンゴレ十代目


 

 


<青天につねに霹靂>

 



「う・・・うそだろ」
「うそなもんか。スパルタだぞ」
「無理だって! だ・・・だってオレ、ダメツナだし!」
ピシッ。
リボーンの持つ銃が綱吉の眉間に向けられる。
「撃つぞ」
「オレ拒否権なし!?」
綱吉に拒否権なぞあったことがあるだろうか、いや、ない。

ぴらりと模試の結果を示して、リボーンは言ってくれた。
「仮にもボンゴレの十代目が、日本の四流高校じゃ話にならないからな」
「だから! それとこれとは別なんじゃないの!?」
「何言ってんだ。別メニューでこなすぞ」
「死ぬから!」
オレ馬鹿なんだって! リボーンだって知ってるくせに!
絶叫した綱吉の訴えは当然のように届いていない、ま、当たり前だが。

無理だよ、と嘆く綱吉にリボーン先生が突きつけた要求は唯一つ。
自宅に一番近い高校を受験し合格すること。
それ一つ。
簡単であるように見えてこれはミッソンインポシブルであった。

「・・・なんでよりによって・・・」
彼の受ける高校は、偏差値70の強豪校であった。










「ツナさーん」
「ツナ君」
「よぉ、ツナ」
「十代目! おはようございます!」

「群れてるなら噛み殺すよ」

なんか穏やかではない言葉が聞こえたが、聞かなかったフリをして綱吉は高校の門をくぐった。
「っていうか、ハルまでなんで」
「えへへ、ツナさんたちと同じ高校にいきたくてー」
「・・・それと・・・」
ヒュン。
空を切るトンファーをよけ、綱吉はそのまま後ろへ飛ぶ。
「へえ、いい動きじゃん。偶然?」
笑みを浮かべた雲雀にさらに踏み込まれ、即座に右手にのみミトンをはめると額に炎をともす。
「朝から物騒だ」

耳元を掠めていく打撃に雲雀は笑みを浮かべて、飛び退った。
とりあえず目下の敵は去った。
・・・というか。
「ひひひひひばりさんもこの高校な・・・の・・・?」
「そうらしいぞ」
「って山本、知ってたら教えてよ!?」
「? ツナはそんなに雲雀が好きだったのか?」
「違うよ!」
むしろ身の安全のためだ。
「チッ、雲雀さんがいるなら対抗策を練ってきたのに・・・」

呟いた綱吉がいつのまにか投げ捨てていた鞄を拾っていた獄寺が、笑顔で駆け寄ってくる。
このあたりは中学時代と何も変わらない、変わっていない。
「十代目っ、さ、入学式にいきますよ」
「う、うん・・・」

頷いた綱吉に、出掛けにリボーンが言ってくれたトンデモ発現がリフレインしていた。

――ファミリーも増やすぞ、ツナ 増やすぞツナ 増やすぞツナ・・・

「ご、獄寺!」
「なんスか、十代目」
「・・・・・・い、いや、皆同じクラスだといいね」
「はいっ!」
「ハルはツナさんといっしょに、スイートハイスクールライフを楽しみたいですぅ!」
「あはは、皆一緒がいいよね」
「あったりまえじゃねぇか!」
親指を立てた山本の爽やかな笑顔に癒されつつ、クラス発表の掲示板を見た綱吉は、とてもステキな事実に思い当たってその場に膝を着いた。

ボンゴレ一派がクラス編成に手を出せないと思っていたなんて、それは自分の方がアホだったわけである。






***
お約束。