<電撃結婚>
「つなさん、お久しぶりです」
「わあっ! 元気だった?」
「はい。つなさんもお元気そうでよかったです」
思わぬ来客をつなは満面の笑みで出迎えた。
ジョリネッロファミリーから使者がくるとは聞いていたが、その内容からしてまさかボスであるユニが直々に足を運んでくれるとは思っていなかった。
しかもγも一緒である。
……まあ、γはユニがいるところについてくるのが仕事であるようなものかもしれないが。
「あ、これお土産のケーキです。ここの、つなさんお好きでしたよね」
「うん、大好き! 覚えててくれたんだ!」
早速皆で食べよう、と顔をほころばせて、はやとに準備をしてきてくれるようにお願いする。
γからケーキの入った箱を受け取ったはやとは、相手がユニとγならば問題はないだろうと部屋を出て行った。
帽子を取ったユニが、γに横に座るよう促す。
ユニの右腕兼護衛の彼はいつもユニを守るように後ろに立っていて、それを許容しているユニなのに珍しい。
予想通りγは渋るような表情を浮かべる。
「俺は護衛なので」
「座りなさい」
「…………」
笑顔なはずなのに気圧される視線を向けられてγはちらりとつなに視線を向ける。
本来護衛が座るのはマフィアとしてはマナー違反なのかもしれないが、つなとしてはγが座ろうが立っていようが気にしないので頷くだけだ。
「……失礼します」
「今日はユニがわざわざ来てくれるなんて、どうしたの?」
「公私混同はいけないと思ったんですけど、ご報告したい事があって」
はやとさんが戻ってきてからでいいですかと首を傾げるユニに、かまわないよとつなは答えた。
しばらくして、はやとが戻ってきた。
その隣に予想外な同伴者を連れて。
「ここにいたのか」
「ザンザス!」
ぱっとつなが顔を輝かせる。
外に出ていたザンザスは、椅子に座っているユニとγの姿を見て、仕事だと思ったのだろう。
「邪魔したな」
「あの、ザンザスさん。お時間ありますか?」
退出しようとしたザンザスを引き止めたのはユニだった。
「……ああ」
「なら、ザンザスさんにも聞いていただきたいのですけれど」
「…………」
にこりと笑ったユニに、ザンザスは訝しげな表情を浮かべながら、つなの隣のスペースに腰掛けた。
ソファの後ろに立とうとしたはやとにも、ソファに座るように促して、ユニは居住まいと正す。
なんだろう、とつなとはやとも首を傾げる。
「今日は、本当はご報告したいと思って」
「うん?」
「私達、結婚します」
「あ、そうなんだおめでとう」
「ありがとうございます」
「…………」
「…………」
「……え?」
反射的にお祝いを述べてから、つなは思わず聞き返した。
「け、っこんて、誰と?」
「γとです」
ぐりっ、と三人の視線が一気にユニの隣に座るγに向けられた。
晴れやかな笑みを浮かべているユニとは対照的に、γはもうどうしたらいいのかといった具合に視線を逸らしている。
「……γ」
「……いや、まあ、その……そういうわけで」
「つなさんのおかげで皆を説得できました」
「…………」
「最後まで渋ってたのがγなんですけれど」
「…………」
当人であるγが一番渋るのもどうかと思うが、でもそりゃ渋るだろう、とボンゴレ側三人の意見は一致した。
たしかユニはこの間十五になったのではなかったか。
誕生日パーティの招待状が届いて、つな本人は行けなかったが、雪加達を送ったのを覚えている。
雪加は十三でユニとは二つ違いだよなあと全然違うところに思考を飛ばして、いやいやいやと慌ててあっちに行きそうだった思考を呼び戻した。
「は、早くない?」
「今しても後でしても同じだと思うんです」
「いや、だから変わるだろうって……」
「変わりません」
隣から口を挟んだγの言葉をすっぱり切り捨ててユニは続ける。
「それで、ボンゴレへの行く用事もありましたし、あらかじめご報告をと思いまして」
ああそういえば今日は一応仕事の名目で来ていたのだっけ。
たしかにそれはありがたかった。
もしも書面でいきなりそんな事を書かれていたら、なんのエイプリルフールだと思ったに違いない。
あれは日本独自の風習なんだっけ……?
ユニがγの事が好きなのはけっこう前から知っていたし、γも決して悪い感情を抱いていないのは気付いていたので、いつかは結婚するのかもなあなんて事は思っていた。
でもまだユニは十五だ。
つなでいうと、ようやくザンザスと付き合いだしたか出さないかくらいの頃だ。
更に言うと、γってザンザスとほぼ同じ年齢だった気がする。
いや、愛があれば歳の差なんて……いやでも……。
「γ……」
「いや、その……」
口ごもって、だから直接会うのは嫌だったんだと項垂れるγの腕を取ってユニは楽しそうに笑っている。
その笑顔を見て、まあ当人達が幸せならいいかとつな達は納得する事にした。
***
下手しなくても二十くらいあるんじゃないかと思ったんだけど、どう頑張ってもこれ以上ユニの年齢引き上げられない。
未来編のファンブック出て年齢が下方修正されて確定されたらもうどうしようもない。
ところで。
ユニの電撃発言→「γが他の女性の取られるのは我慢ならない(縁談とかくるから)」
γの渋る理由→「そのうちもっと若くていい男が現れるかもしれない」
とかいうと非常に楽しい痴話げんかができそうなんだけど(破局すれすれな)いかんせん形にできない。
その場合一番のダークホースは雪加である。当人無自覚。