<Sister Sister>





「姉貴が結婚するより先にはしない」
ぽつりと零した妹の言葉に、ビアンキは気付いたらはやとを抱きしめてぎゅうぎゅうと頬をすり寄せていた。

やめろよ、と恥ずかしいのか抗議の声をあげるのも聞こえないふりをする。
今部屋にいるのははやととビアンキと、邪魔でしかないシャマルの三人しかいないのだから、気にする目なんてどこにもない。

母親が違うからなにかと気に障るでしょうとと小さな頃から周りには何かと言われていたが、そんな事はまったくない。
ビアンキは銀色の髪を持つ妹が大好きだ。
できる事ならどろどろに甘やかして可愛く着飾っていつも一緒にいたかった。

けれど、五歳になった頃にはやとはつなの遊び相手兼護衛としてボンゴレの屋敷に移ってしまったので、ビアンキと会う機会はめっきり減ってしまって、当時は心底落ち込んだ。
しかもしばらく会っていない間に、あんなにふわふわして可愛かった妹は、髪をざっくりと切って、男の子のような言葉遣いになっていたから、その時のビアンキの心情と言ったらとても表現しきれない。
おねえちゃん、と無邪気に呼んでくれる事もなくなって、いつの間にかタチの悪い男に引っかかって。



――ちなみに今回の顛末としては、つなから「くれぐれも殺さないでね、お願いだから」という釘を刺された上で、あの男にはポイズンクッキングの餌食になってもらった。――


そんなわけで、今日の診察はビアンキがはやとにくっついてきたのだった。

「はやとが窒息死すんぞー」
「……あら、ごめんなさい、はやと」
ついつい力が入ってしまっていたようだ。
腕を緩めると、げほげほと咳き込みながらはやとがばっと体を引き剥がした。

お熱い兄弟愛ですコト、と茶化してから、シャマルが突っ込んだ。
「だけどお前、今度は子供産むんだろう」
「…………」
今回の件で山本もやっとこさ改心したようで、だったらそのうち結婚するのかねえ、という言葉の返事が冒頭のものだったのだが。

別にビアンキは、はやとがいるから結婚しないとかそういう事はまったくない。
リボーンの愛人だった時期もあったけれど、あのヒットマンの意識が妹と同じ年の少女にしか向いていないと気付いてからはそれも止めた。
もちろん彼の事は今も愛してはいるけれど。

――だけど愛しい愛しい妹がそう言うのなら。


「大丈夫よはやと、私結婚するから、コレと」
「はぁ!? は、初耳なんだけごふっ」
コレ呼ばわりをした医者の鳩尾に肘を入れてビアンキは目を丸くしている妹に向き直る。

はやとは何て言えばいいのかと戸惑いながら、微笑んでいるビアンキに言った。
「あの、姉貴……ほんっとーにアレでいいのか? むしろアレのどこがいいんだ?」
それはあなたとあの男にまるっと返したい言葉だったりするのだが、ビアンキはそうねと適当に言った。
正直その場凌ぎなので、どこがと言われても答えられないのだ。
……付き合いはそれこそ両親と同じくらいだというのに、目に付くところをいえば。
「男としてだめなところかしら」
「……姉貴の趣味がわかんねぇよ」
「シャマルのよさははやとのがよくわかっているでしょう?」
「……あれのいいところ」
聞き返すと、はやとも小さく唸りながら頭を捻った。
お前ら酷くねぇ? と涙目になっている医者には目もくれない。

「……腕はいいよな」
「顔もいいわね。たぶん」
「……文句言いながらでも面倒見はいい、と思う」
「ほら、いいところがあるじゃない」
「そ、うだな」
まあ姉貴がそれでいいならいいや、とにこり笑った妹の頭を撫でながら、今上がった事項は覚えておこうとビアンキは思った。

 

 

 


***
シャマビアは好きですが、パラレルではくっつくかはわかりません。