<4.5:裏話1>
「スペルビ! ザンザス!!」
「……」
「どっからわいてきやがったぁ゛……」
扉を開けた瞬間に蜂の巣にされると思わなかったのか、ドアを全開にして部屋に入ってきたディーノは二人の姿を見つけるや盛大に叫んだ。
まさかここにディーノがやってくるとは思わなかったから、ザンザスもスクアーロも少なからず驚いた。
というか見張りはどうした。
「う゛お゛ぉぉい、見張りはどうした」
「なんかすんなり通してくれた」
「……あとでかっ消す」
米神に手を当ててザンザスが眉間の皺を更に深くする。
スクアーロとしてもディーノがやってこられると非常に面倒な事になるのが分かっていたから、頭を抱えたい気分だった。
「てめぇ、よくここがわかったな」
「家光から聞いた」
「……」
「……」
あいつか。
あのヘルメットに作業着というふざけた恰好でいやがったあいつか。
家光に対しての殺意が芽生えるのを自覚しつつスクアーロは重ねて問う。
「で、何しにきた」
「なんで俺に教えてくんなかったんだよ!」
「教えたらてめぇどうしたよ」
「……」
黙りこくったディーノに溜息を吐いて、スクアーロは右手で頭を乱雑に掻く。
今回のリング争奪戦で、なんとしてもつなにリングを継いでもらわなければならないのだ。
今回のリング争奪戦は、言ってしまえば「出来レース」。
ザンザスにリングの継承権はなく、九代目も門外顧問もザンザスも、つなが十代目になる事に異論はない。
だからリングを奪おうとするのもつなにそっけない態度をとるのも全て演技でしかないのだ。
わざわざザンザスが反旗を翻したのにはまた色々と理由があるのだが、シリアスなものから笑うしかないようなものまであるので口には出さない。
この争奪戦によって、つなと、その守護者の実力を試そうというのも九代目の意向らしい。
そんなわけで思いっきり悪役を演じているわけだが、それを事前にディーノに教えていたらどうなっていたか。
十中八九余計な騒ぎを起こしただろう。
ついでにつなに最後まで黙っておけるとも思えない。
「これはボンゴレ内部の問題だからなぁ゛。同盟とはいえキャバッローネの出る幕はねーぜぇ」
「……そうかもしれねーけど。本気でザンザスがつなを嫌いになったのかと」
思った、と言う前に、ザンザスの鋭い一瞥でディーノは口を噤む。
そんなことありえねーよなー、と乾いた笑いを浮かべるディーノ。
これ以上ボスの機嫌を悪くされてはたまらないと、スクアーロは口を開いた。
「で、どこまで聞いたんだぁ?」
「リング争奪戦がつな達を強くするためだって事と、あとザンザスが自分が守護者になれなかったからってス」
だぁん、と。
ディーノの頬を掠めるように銃弾が通って壁にのめりこんだ。
「……」
「それ以上余計な事を言ってくれるなぁ゛……」
「黙れカスが」
「……すみませんでした」
素直に謝って、ディーノは日本式の土下座をした。
***
裏話というか。
地雷をどれだけ踏めば気が済むのか跳ね馬は。
(オマケ)
「で、お前どーすんだぁ」
「なんかつなの雲の守護者のカテキョーすることになった」
「……雲の守護者」
「どんな奴なんだろなー」
「(報告書には戦闘狂ってあったなぁ゛……)……せいぜい鍛えてやれやぁ゛」