<エクステ>

 



色鮮やかなエクステンションを下げたザンザスを見上げて、つなは目を丸くした。
隣の獄寺も同じような顔をしているから、少女二人には奇異に映っているのかもしれない。

「どうしたのザンザス?」
つんつんとエクステを引っ張って、つなはくりくりとした目を不思議そうに瞬かせる。
「嫌いか?」
膝を折って腰を丸めてくれている相手を見上げて、ううんとつなは首を横に振った。
「とてもきれい。ね、はやと」
「いささか派手だと思います」
相変わらずつな以外には容赦のない獄寺の言葉を、つなは慌ててフォローした。
「でも、ザンザスは髪も黒いし服も黒か白だし、色があっていいよね」
ひらひらでとってもきれい、とうれしそうに言ってくれたので、ザンザスは頷いた。










「う゛ぉ゛お゛い゛! 何のまねだぁ?」
「あらまあ、ボスってばイメチェンね」
「俺も似合うかも、王子だし、ししし」
「すさまじいセンスだね」
口々に言ってくれた部下に、ザンザスは鼻を鳴らした。
先日のつなと違ってなんだこの反応の酷さは。

「でもそれじゃあ目立っちゃうわよぅ、ボス」
暗殺者として、つなちゃんの護衛としていいの? と聞いてきたルッスーリアに同じ言葉を返したかったが、彼のセンスは今更なので流しておく。
「そうだよボス。それなら念写できなくたって楽勝で見つかるよ」
「ししし、いい的になりそー」
「うるせーカスども」

いいんだよ、と乱暴に言ってザンザスは腰から銃を取り出すと、それを机の上において手入れを始めた。
慣れた手つきで掃除をしていくのを横で自分の剣を磨きつつ見ていたスクアーロは、ルッスーリアがベルとマーモンと共にお茶菓子を取りに行って(暇なんだつまり)部屋を空けた時に、ぼそりと尋ねた。


「で、なんでだぁ?」
「しつけーぞカスザメ」
「いい的になってメリットなんてあるのかぁ゛・・・・・・あ゛」
聞き掛けてスクアーロはぱたっと口を閉じた。
思い当たるフシがあったのか。
・・・本当にこのカス魚類は勘がよくて腹がたつ。


「わざと、的になんのかぁ゛・・・?」
「黙れ、クソザメ」
かちゃ、と調整の終わった銃を向けてやれば、視線を思いっきりそらされた。










ぬるりと血が流れる。
それが髪につけたエクステを汚す。

「ざっ・・・ザンザス! ザンザス!」

幼い手が傷を押さえようとする。

「下がってろ、つな」
「だっ、て、ザンザスっ!」

ぼろぼろと涙を流す彼女を、もう一人の護衛が背後にかばう。

「後は俺が引き受ける」
「わかった」

銀の髪の少女に手を引かれて。
彼女は戦場を去っていく。


「さあ、向かって来いよ!!」


テメェらの格好の的になってやってるんだ。
この、俺様が。


ばかげた飾りを身につけて。




 

 

 

 


***
原作でもXANXUSは、
養子であることを知った→揺りかご事件 の半年の間にエクステをつけています。

パラレルはこんな理由だったらいい。
自分がつなより目立つことでつなを守ろうとしているのだったらいい。


あとがきにしか理由を明記できなかったのがイタイ。