それを掴む手が震えた。
「・・・あの、老いぼれ・・・!」
歯噛みをして、彼の犬歯は唇まで噛み切った。
<ゆりかご>
引っ掴んだ紙を燃やし尽くしたかった。
だがこれを消したところで、事実は消えない。
「ザンザス様!?」
「どけぇえ!!」
叫んで護衛を追い払った。
怒りに任せて部屋の扉をぶち開ける。
そこには、静かに座る九代目の姿があった。
ボンゴレ九代目、ゴッドファーザー。
「どういうことだ!」
「ザンザス・・・」
「どういうことだ! 俺がてめぇの実子でないなら、俺は、俺はボンゴレ跡継ぎにはなれないということは!」
「ザ、ザンザス」
狼狽した老いぼれに掴みかかる。
軽々と持ち上げたその身体の軽さに驚きつつ、詰め寄った。
彼の武器である杖は、まだその手に無い。
「何でソレを隠していやがった!!」
響いた怒号に、九代目は息子の顔を見つめた。
「知らなかったら俺は・・・つなを見捨てていたかもしれないんだぞ!」
沢田つな。
初代の直系。
まだ、九になったばかりの幼い少女。
彼女が、十代目候補の筆頭であり、唯一であった。
ザンザスが十代目になりえない以上、絶対の唯一。
「もっと早く言えば!」
あの銃弾に自分の心臓を打ち抜かれても守ったはずだ。
けれど自身も十代目候補であるという自覚が、わずかにザンザスの動きを鈍らせた。
共倒れになることはできない、それこそ相手の思う壺だ。
だから、彼は銃弾の勢いを、自身の腕を犠牲にして止めた。
しかし、結果としてつなは負傷した。
ザンザスの胴体を通していれば、つなにはかすり傷だってつかなかったはず。
「ザン、ザス」
「ゆるさねぇ・・・」
低い声で怒りを噛み潰す息子の姿に、九代目はその目を細める。
「・・・病院へ、行っておいで、ザンザス」
「っ」
「仕事は、いい」
ふっとザンザスの拳から力が抜ける。
九代目を床に下ろしてから、背を向けた。
「テメェが」
「・・・・ああ」
「つなをイタリアへ呼ばなければ」
「・・・すまない」
「俺を騙し続けていなければ」
「・・・・・・すまない」
頭をたれた九代目を見ず、ザンザスは部屋を出て行く。
まっすぐに、部下がいるはずの部屋へ入っていった。
「おい、カスザメ」
「う゛お゛ぉ゛い! つな嬢は無事か!?」
無言でスクアーロの座っている椅子を蹴りつけた。
足が折れて、彼はあっけなくしりもちをつく。
「なにしやがるん」
「いくぞ、仕事だ」
「つな嬢はどうするんだよ!」
テメェがいってやらねーでどうすんだ、と言ったスクアーロに、ザンザスは静かな怒りの声で答えた。
「つなに傷をつけた奴らを、のさばらせておく気か」
「・・・・・・だってよぉ! マーモン」
「同意。ルッスーリアとベルはもう向かってるよ」
「用意がいいな」
当たり前じゃないか、と赤ん坊は唇を吊り上げた。
***
はやとは半狂乱でつなに付き添っていると思います。
ていうかザンザス、骨抜きだなお前。