<撮影の合間12>
撮影が終わっていつものように刹那に寄って行ったら、すすすと遠ざかられた。
兄離れですかとばかりにしょげてみせたら、小さくタバコ、と呟かれる。
「タバコ臭い」
「……ああ」
さっきまで撮影で煙草を吸っていたから、臭いが移ったのだろう。
何分刹那は煙草の臭いが嫌いだから。
苦手だから倦厭するのはわかるが、少しへこんだ。
「ロックオンは煙草平気なんですね」
僕はどうしてもだめなんですとアレルヤが間に入ってくれた。
見た目からして吸うようには見えなかったからそれは納得だ。
「むせちゃうんですよね……」
「でも撮影で吸う事あるだろ?」
「だからそういう時はハレルヤにかわってもらうんです。ハレルヤはたまに吸ってるから」
「……便利だなぁ、双子って」
一人で二人を演じるより、二人で一人のがやはり楽そうだ。
ハレルヤにはお世話になってますと小さく笑って、でも様になってましたよねと付け加える。
「吸ってる姿は恰好いいですよ、ね。刹那」
同意を求めるように刹那に話を振ると、ああ、と小さく返事が戻ってきた。
……姿は恰好よくても煙がだめだから結局は近づいてくれないのですね弟クン。
「昔は吸ってたからな」
「そうなんですか」
「刹那が嫌がるからやめた」
吸い殻飲み込むとやばいし子供の発育に悪い上、吸うと刹那が近寄ってくれなくなるのだ。
外で吸っても服や体に染み付いているから、結局止めた。
もともとストレスの捌け口として吸っていたから、刹那と暮らすようになってからは吸う必要がなくなったとも言える。
苦笑気味に話すロックオンに、あなたらしいですねとアレルヤも小さく笑った。
「……そうだったか?」
刹那が記憶にないとばかりに首を傾ける。
「覚えてないのも無理ねぇよ。一緒に暮らし始めてすぐの話だからお前ちっさかったし」
「そうなのか」
「でも、刹那のおかげでロックオンも健康になれてよかったですよね喫煙は体に悪いから」
「まぁな」
刹那さまさまだ、と笑いかけると、少し気恥ずかしげに刹那は唇を尖らせていた。
次の撮影の準備ができて、刹那が呼ばれる。
いってらっしゃいと見送って、やれやれと壁に背中を預けると、アレルヤが視線をセットの方に向けたままちくりと突っ込んだ。
「でも、刹那と暮らし始めた頃って、ロックオン未成年ですよね」
「……そこには突っ込んでくれるなアレルヤ君」
「まあいいですけど。本当に刹那が大切なんですね」
「そのためのロックオンだからなぁ」
のんびりと言った一言に、アレルヤは目を細める。
突っ込んで聞いていいのか悪いのか迷っているというところか。
「……それで、あなたがいいならいいんですけど」
迷った挙句、深くは触れないでおく事にしたらしかった。
別に聞かれれば答えるけれど、聞かれない限り話すような内容でもないので、ロックオンはただ笑って頷くだけに留めた。
***
そういえばこんな会話ネタもあったなと。