<撮影の合間4>

 


それは異例のことだ。
脚本もなしに、メインキャストの顔合わせだけすると言われてロックオンは首を傾げつつスタジオへ向かった。
普通脚本が来て、それから顔合わせでとりあえずドラマで誰が何の役をするかだけはわかっている。
それも一切合財が、不明。
事務所から「ガンダム新作のメインキャストに抜擢されたからいってこい」で指令は終了だ。

機動戦士ガンダムシリーズは常に高視聴率をとる人気シリーズであり、国民的人気と言ってもいい。
新作の00は、メインキャストは公募オーディションで新人を使うと聞いていた。
よって自分は主人公サポート・補佐・指導役のあたりかあるいは敵か、できるなら美人艦長の副官がいいなあとか思いつつ、ロックオンは指定された部屋へと向かう。
やや遅れたかなーと思いつつ指定された小会議室に足を踏み入れようとした。

と。

ポン、と後ろから肩を叩かれる。
「おお、ロックオン。俺は今から野暮用が入ったから各自自己紹介とか馴れ合いとか頼む」
「はい?」
いきなりそこへやってきた監督に命令されて、ロックオンはなんなんだと思いつつ部屋へ入った。

足は踏み入れた。
そこから動かなかった。

「な・・・なっ・・・」
「こんにちは」
「・・・どうも」
「・・・・・・」

座ってたのは三人。
肩の位置で切りそろえた髪を流しているのと、横へぴょんぴょん跳ねた髪形をしているのと。



それと。



ちょこんと座って、見張った目でこちらを見上げている。
小さな。
小さな。




「せっ・・・刹那! なにやってんだこんなところで!!!」
「ろ、ロックオン・・・」
「あれ、お二人は知り合いなのかな?」
横へ跳ねてる髪型のほうのが言うと、刹那はぶんぶんと首を振ったがロックオンはすでに据わった目で刹那の襟首を掴んで引っ張り上げていた。

「刹那君、なにがどーなってどーなったのか話してもらえるかなぁ?」
「・・・」
「おにーちゃんはご立腹ですよー? せーつなクン」
「オーディション受けた」
「そーかそーか、それで受かったのか。えらいな〜・・・じゃないだろう。何でガンダムのオーディションなんか受け」

そこまで言いかけて残り二名の視線が注がれているのを思い出し、慌ててロックオンは刹那から手をはなす。
だが時はすでに遅しというか・・・もう取り繕うのは無理だ。
「えーっと・・・」
「ロックオン=ストラトス。五年前に映画、「怪盗三十面相」の探偵助手役として登場し脚光を浴びる。演技の幅が広く実力派若手として有名」
きゅ、と眼鏡を押し上げながら言ったおかっぱにロックオンは苦笑した。
「まあ、そんなもんかな。お前さん名前は?」
「ティエリア=アーデ」
「僕はアレルヤ=ハプティズムです。その――この間のドラマも見ました・・・ええと、なんていったらいいか」
「あー、気負うな気負うな。今日から一緒にやっていくんだしよ。んで、刹那な。こいつ、俺の弟」
ぐりぐりと頭を撫でながらロックオンにそう言われた刹那は、目をぱちくりさせてロックオンの袖を掴んだ。

「言って、いいのか」
「かまわねーよ、仲間だもんこいつら」
「ロックオン=ストラトスに兄弟がいたとは聞いたことがないが・・・」
眉をしかめたティエリアに、ロックオンはウインクをした。
「ま、ちょっと込み入った事情があってね。マスコミには伏せといてくれ」
「はい、秘密にしようね、ティエリア」
ね、とアレルヤに微笑まれてティエリアは無言で眼鏡の位置を直した。





「で、俺たちは何で四人でここにいるんだ」
「あれ、聞いてないんですか? 今回のガンダム00は主役が四人なんです」
「え」

主役が四人

トイウコトハ


「俺たちか!?」
「でしょうね」
「ちょっと待て! ってことはなんだ、本主役は」
「刹那ですよ。ね」
アレルヤに話をふられて刹那はこくりと頷いた。
口をぽかんと開いたロックオンはマジかよ、とつぶやく。
「そういえばお前・・・SEEDのキラにあこがれてたもんなぁ・・・」

お茶の間で毎週目をきらきらさせて見入っていた彼を思い出す。
フリーダムガンダムまで買って、とても楽しそうに見ていたっけ。
あれから五年だ。

「そうか・・・まあ、がんばろうな」
「大丈夫だ」
無表情が目立った弟だったが、しばらく見ない間に無表情さに拍車がかかった気がする。
大丈夫なんだろうかと心配になったロックオンを見上げて、刹那はつぶやいた。

「ロックオンが一緒だ」
その言葉に破顔して、ロックオンはぎゅっと刹那を後ろから抱きしめた。


 

 



***
刹那とロックオンがラブラブです。
どんなにいちゃついても問題なっしんぐ。