※アニメ第11話より
<過去との訣別>
苛立つ。
スメラギをなじったのは八つ当たりだ。
そんなのティエリアだって十二分に自覚している。
だがあたらずにはいられなかった。
失敗した。
それも致命的な失敗をした。
ロックオンに言われるまでもない、責任の全部がスメラギになるはずがない。
この、自分が。
ティエリア=アーデが。
間違いを犯した、ヴェーダの作戦に傷を――
「くっ――・・・」
壁に思い切り拳を打ちつけようと思った。
だが振り上げられたティエリアの手は止まる。
思い切り壁を叩いても気は晴れない。
手にあざを残したら、きっと。
――やめてくれ、こんなこと。叩きたいなら僕を叩いてくれ、ティエリア
きっと、アレルヤは悲しそうな顔をする。
それはティエリアの望むところではなかったので、進路を変えて彼のいる場所へ向かった。
部屋のパスコードは承知している。
勝手に部屋に入っても怒られたことはない。
「アレルヤ」
求めていた人物は部屋にいて、珍しく端末を前にしていた。
はいってきたティエリアに気がついたのか、ちらりと視線を向けると手際よく作業を終了させモニターを消す。
報告書を書いていたのだろうか、そう思いながらティエリアは違和感に気がついた。
報告書を書く時、アレルヤはいつもカップ一杯のコーヒーを横に置く。
それは彼の癖のようなもので、無論忙しい時は飲んではいないけれど、今はひと段落して気分的にはともかく物理的には暇だ。
「・・・やあ、ティエリア。どうしたんだい」
穏やかな笑みの中に動揺があった、気がした。
ティエリアは人の表情を読み取るのにまったく長けていない。
だけど、なにか違和感があった。
「アレルヤ」
「ん?」
「・・・いや、いい」
「そう?」
首をかしげたアレルヤに、ティエリアは眉を寄せた。
普段なら。
普段なら、ここで、どうしたのと言って。
そばに来て話を聞こうとしてくれる。
だが今日のアレルヤは違う。
どうして今日は違うのか。
ミッションのせいか、いや、それはもう解消したと思った。
後々に引きずるたちではないはずだから、他に理由があるのだろうと思う。
「アレルヤ」
軽く床を蹴って近づく。座ったままの――いつもなら立ち上がって迎えてくれる――彼の首に抱きついた。
「てぃ、ティエリア!?」
上擦った声を上げた彼の口をふさぐ。
「勝手に決めるな。説明しろ」
いきなり言われてアレルヤは動揺する。
今作っていたのは作戦プランとそれに付随させるべき資料。
「・・・まいった、君にはお見通しなんだね」
アレルヤは微笑んで端末の電源を入れなおす。
スクリーンに表示された文字をティエリアにも見えるように、少しだけ自分の位置をずらした。
「人類革新連盟軍超兵特務機関・・・」
最初に表示された文字を音読して、ティエリアは眉を寄せた。
「君は・・・」
「そう、僕は・・・僕の過去は、そこに今も」
目を伏せたアレルヤの頬をティエリアはむにゅとつまんだ。
「てひぇ、てひぇりあ?」
無表情でいた彼の反応に戸惑ったアレルヤの頬を、ティエリアはそのまま数度引っ張った。
スメラギの部屋から出てきたアレルヤは、ティエリアに微笑んだ。
「・・・GOサインがでたよ」
「そうか」
「ついてきてくれて、ありがとう」
微笑んだアレルヤの手を、ティエリアは握る。
細かく震える指先を隠すように。
「ごめんね・・・覚悟をしたのに」
「過去は誰にでも存在する。君は払拭する決意をした。それは賞賛に値する」
真顔で告げられた言葉に、アレルヤは肩を震わせた。
「ありがとう・・・ティエリア。ありがとう」
その言葉がどれだけ自分に勇気をくれたか。
きっと彼は知ることがないのだけど。
***
最高のデレの回でした。
何度見直したかわかりません。(たぶん5回以上)
アレティエのための11話。
終わってしまえばあの恐怖の一週間を笑い話にできます。
「それでこそガンダムマイスターだ」と言ったティエに萌え。
数話前の前言を綺麗に撤回している彼に萌え。
うふふふふ、しばらくアレティエは画面に出なくていいわ、いちゃついてなさいカメラの後ろで!(最高に上機嫌