※史実ネタ
「政宗様」
いかがいたしますか、と小十郎が尋ねる。
若干十八にして家督を継いだ政宗は、まだ幼さの残る顔を無表情にして黙り込んでいた。
「政宗様」
「……殺せ」
「顕綱様は、愛姫様を歓迎された」
「小十郎。二度言わせんな。全てだ」
しん、と静まり返ったそこに、伊達政宗は立ち上がる。
「聞け野郎共!!」
張り上げる声は城にまで響く。
「城の者は全て、たとえ犬畜生ですら容赦するな!!」
<撫で斬り>
血潮で埋まった城を歩きながら、政宗はようやく刀を納める。
その後ろを歩いていた小十郎は、わずかに溜息をついた。
「政宗様……」
「生存者はいねぇな」
「……はい」
政宗は自ら先陣に立ち、鉄砲をも使用した。
この城には伊達家の親類もいる。奥州は親類縁者が多い土地なのだ。
小十郎の知る顔も多く、彼らはほとんど降伏した。
ひれ伏し伊達への忠誠を誓い、殺さないでくれと命乞いした。
せめて妻や子供は、そんなことを言う者もいた。
政宗は顔色一つ変えず、一言も発さず、切り捨てた。
嫌だ嫌だと泣き叫ぶ子供も、子供を切るのかと呪う母も。
歩けないほど弱った老人も、幼き頃に訪ねてきてくれた文人も。
誰も彼も、逃げ出した鳥ですら切り捨てた。
「最上義光へ書状を送れ。数を丁寧に記しておけよ」
「はっ」
「dead しかいねぇなら問題ないだろう。しばらく一人にしろ」
「……はっ」
立ち去った小十郎がいなくなってから、政宗は壁に手をついて小さく笑う。
「はは……はじまったぜ」
見えない右手を片手で覆い、眼帯を取り外す。
産みの母が嫌悪した目を、風にさらした。
「さあ、Partyをはじめようぜ」
奥州に引きこもる気などさらさらない。
南へ、都へ、攻め上ってみせよう。
足元が揺らぐ。
「……ち、ざまねぇ」
壁に当てた手で体を支えて、政宗は崩れ落ちる。
手から眼帯が落ちたが、気にすることもなく血にまみれた床に座り込んだ。
「……」
口から殺した人の名前がこぼれる。
だが後悔などない。
「赦してくれとは、いわねぇさ……」
自嘲の笑みをこぼして、政宗は固くなった血を指先で触る。
「だが見ていろ。必ず――」
諸国の牽制は成功するだろう。
政宗の名前は轟くことだろう。
幼子だの小童だのは言わせない。
「俺が」
奥州筆頭、
「伊達政宗だ……!」
***
家督を継いでわりあいすぐに、親戚縁者のいる城で皆殺しってすげぇな伊達……!
殺害数1000って。なんというBASARA。
っつーかBASARAでもそれ無理だ。
えー、残念ながら政宗の口調以外は大体史実です。