※アニメ戦国BASARA7話ネタバレ
<蒼紅相思>
襖が細く開いて、月の明りが差し込む。
また閉じようしたのは、中にいた人物が薄目を開いたことで阻まれる。
「あれあれ? 竜の旦那、起きてたの」
「……right now。小十郎の野郎はどうした」
横たえられたままの政宗がそう問うと、佐助はするりとその体を中に滑り込ませて、枕元に膝をつく。
「右目の旦那はいっちゃったよ」
「だろうな」
「驚かないの?」
「そういう奴だ」
ゆっくりと起き上がって、政宗は枕元においてあった脇差を手にする。
いつも彼が扱っている刀と比べるとだいぶ短いそれを抱えて、ずりずりと体を動かす。
慌てたのは佐助だ。
「ちょ、動いちゃだめだって!」
「Shush」
「もーっ! なんで北の人はこぞって人の話聞かないわけ!?」
「俺の言う事は聞くぜ。てめぇの説得力がないだけだろ」
「……旦那、脇腹にもう一撃欲しいの?」
笑顔で拳を持ち上げた佐助に苦笑して、政宗は部屋の壁に背中をつけた。
ふうと息をついて、もう少しだけ動いて体を部屋の角に置く。
「ってそこに落ち着かないでよ。ちゃんと布団で」
「こっちの方が落ち着く」
「いやいやいや、病人だからね?」
「……布団なんざ普段からつかわねーよ」
「はい?」
どゆこと? と目を丸くした佐助を鼻で笑って、政宗は胡坐をかいて目を閉じた。
「どうせ小十郎を追いかけさせられるんだろうが。俺にかまってねぇでとっとと行けよ」
「あー……やっぱそうなりそう? 竜の旦那はお館様のことよくわかってるねえ。まぁわかってなかった旦那は今から怒られるわけだけど」
「屋根に穴が開かないといいな」
「まっさかー! …………とも言い切れないのが怖いところだよね」
思いっきり静かになった部屋で、政宗は気だるげに左目を開ける。
正座して神妙に座っている佐助は不気味だ。
「……で、なんだ」
「俺、旦那について右目の旦那を追いかけるよ」
「だから?」
「……お館様の守りが薄くなる。忍者隊をつけていくけど、心もとない」
「俺に戦えと?」
「手負いの旦那にこんなこと頼むのはおかしいと思ってる、けど」
Ha, と思いっきり鼻で笑われた。
何もそこまでの反応しなくても、と思ったが生憎政宗はさらに追い討ちしてくれた。
「俺がそんな義理も果たさねぇchickenだと思ってんのか? Fool, 人を馬鹿にするのも大概にしやがれ」
「まあ、そうなりますよね! 何で俺こんな責められてんの!」
ばん、と膝を打って立ち上がった佐助を、待てよと政宗は止める。
小さく微笑んで、真っ直ぐに指差した。
「ちゃんと主を守ってやれよ」
「言われなくたって……あーっ! そういうの腹立つ!」
「妬くな」
「妬いてないよ! っとにもう……右目の旦那の心配してあげなよね!」
「いらねぇよあいつは。まあ、いちおう形だけ心配しておくか」
「……旦那、心配と信頼と非情が紙一重だね」
思わず全力で突っ込んで後に脱力し、佐助はふらふらっと部屋を出た。
そろそろ向かわなければもう幸村が信玄のほうへ赴いているだろう。
ひゅんひゅんと跳ねて部屋の前の廊下に降りると、真後ろから幸村の足音がした。
「おお、佐助」
「あ、旦那……どうしたの、元気ないね」
いつもより声が半分ぐらいしかなかったので適当にそう言えば、うむと呟いてうつむかれる。
「えっ、あの、何その反応?」
「……片倉殿を、一人で行かせてしまった」
「まあ……しょうがないんじゃない?」
「俺は、迷った」
「なにに?」
反射的に聞き返した佐助だったが、数秒後すごく後悔した。
「政宗殿の思いを汲みたく、しかし武田の家宝は守りたく。俺は武田の家臣だ、武田を優先するべきことなどわかっているのに、政宗殿を」
「あー、はいはいはい! 俺様が悪かったって! もうヤメて二人揃ってそういうの!」
無理やりに幸村の言葉をさえぎって、はいはいはいと佐助は主の肩を押す。
「早く行かないと遅れたって怒られちゃうよ」
「そ、そうだな。お館様ー!」
暑っ苦しく部屋に入って行った幸村に続こうとして、佐助ははたと立ち止まる。
「……あ、布団に入れ忘れた」
***
BASARA第7話裏話。
この前:小十郎が政宗と対立して腹に一撃
この後:お館様に幸村殴られ(ry
地味にサナダテサナでした。佐助そろそろ死ぬんじゃないか(胃炎で