<拠り所>
言葉少なに行為を終えて、夫は顔を胸元に擦り付けてくる。
愛姫は彼の身体を抱きしめて、憂いに満ちた表情を夫の髪に埋める。
「すま、ねえ」
「謝られることはありませんわ、政宗様」
「……卑怯だな、俺は」
汗ばんだ男の頭を抱きしめて、そんなことはありませんときつく言う。
「そのような心持でいかがなされます。天下を取られるのでありましょう」
「辛ぇ時にwifeにすがりつくとか、みっともねぇつってんだ」
「日ごろは他の男とよろしくやっているのに、ですか。見くびらないで下さいませ」
ゆっくりと頭を撫でて、髪に指を絡める。
「愛はいつ何時も、政宗様を見限りはいたしませぬ」
愛は伊達家の者なのですから、とわずかな誇りを含んで言う。
一番大事は無論奥州の国だ。
二番大事は実家。
「旦那様、愛はどこまでもついてゆきまする」
それが彼の誇りの道である限り。
理想の道である限り。
「泥に落ちた伊達家に用はありませぬゆえ、牙が抜けた竜は見限りますが」
「そのまま首でも落とせばいいさ」
軽口なのか真剣なのか。
彼はこういうところが曖昧で困る、と時々思う。
「……sorry……」
呟いて彼は眠りに落ちる。
平素は刀を抱いて座って寝ることしかしない彼が、大人しく横たわって寝るのは数えるほどだ。
その一つは、愛姫の腕の中で。
「ふふ、よく休んでくださいませ」
子供っぽくて、戦好きで、宿敵に恋慕している二つも上とは思えぬ殿様。
けれど彼は心底国を思いこの国の未来を思い、日々憂い懸命に前に進んでいる。
その彼は今、目を閉じてすやすやと、眠っている。
横顔は整い男らしさも繊細さもあわせ持っていて、愛姫は緩やかに微笑んだ。
多少我侭で気性も荒く、唯我独尊のきらいもあるが、この美丈夫で頭のいい夫を嫌いになったことなどない。
「大好きよ、政宗」
くすくすという笑い声を共に、幼子のように囁かれた睦言を彼が聞くことはなかったのだけど。
細く白い指で頬をなで上げながら愛姫は思う。
一度ぐらい言ってやろうか、そうしたら顔を真っ赤に染めてあたふたするのかそれとも平然と「俺もだぜ」と返すのか。
どちらにしても面白そうだと、愛姫は満足げに笑んでゆっくりと瞼を下ろす。
***
情事の後(前?)に男が女にすがりつくのは好きらしいネ自分(これで3パターン目