<やきもち?>



「いや、何が入っているのかと思ってな」
「まあ待て、そういう時は慌てず騒がず冷静に笑顔で聞けばいいんだ」
「そんなことしたら相手に失礼になるだろう」
「……お前、相手にそんな紳士的態度貫く必要ないと思うんだけど……」

ベンチに腰掛けて話している二人の元へ、フレンと一通り打ち終えたルークは走っていこうとして足を止める。
「ルーク、どうしたんだい?」
フレンが声をかけると、ルークはぷうっとその頬を膨らませてタッとベンチへと走っていく。
「ガイ!」
「ん、どうしたル……おわっ!?」
駆け寄ったルークは手にしていたタオルをガイの顔に放り投げ、顔面すれすれでそれをキャッチした彼は何するんだとタオルを持って立ち上がる。
「お前汗まだちゃんと拭いてな……どうしたルーク、ほっぺが膨れてるぞ」
「ガイ、最近ユーリとばっか話してる」
むすっとした表情でボソリと言われた言葉だったが、ガイはその言葉に相互を崩す。
「あー、あ〜っ、お前ほんと可愛いな!」
「ちょ、離せよ!」
ぎゅうと顔を抱きかかえられてルークはあたふたと両手を動かす。
ガイは赤い頭を抱えて嬉しそうに目を細めて、開放する寸前に軽く頭頂部に口づけた。

「すねるなよ俺の可愛いルーク」
「すねてねえっ」
やっとガイから解放されたルークは頬を染めながら、彼の手からもぎ取ったタオルを頭からかぶって表情を隠す。
ルークがガイにとてもよく懐いているのは知っていたし、彼は時折子供っぽさを大いに発揮する事もあるので、それほど驚くようなやりとりではない。
いつもそばにいる使用人兼親友がユーリに取られたような気がして、ちょっと気に食わないのだろう。

ひらりとルークがかぶっていたタオルが取られる。
なにすんだよ! と声を上げたルークの頭をにやにやと笑うユーリがぽんぽんと撫でて言った。
「なんなら会話に入るか? ナタリア姫の料理対策の話だけど」
「あー……」
あれは対策いるよなーと頷いたルークに、「そうだろ?」と笑うユーリの顔が。





「……ルークはずるい」
呟いた声が自分の声ではないみたいで、フレンはぞくりとした。
こんな冷えた声なんて出たんだ、と自分で自分に驚く。
でも誰も聞いていないのだから、かまわないと思って毛布にくるまってもう一度呟いた。
「いいな、……ずるいな」
自分もあんな風に頬を膨らませて、幼稚な独占欲を装って言い放つことができたら。
そうしたらユーリはガイがしたようにフレンを抱きしめて笑ってくれるだろうか、そんな気はまったくしないけど。
……昼間にルークの言っていた事なんて、フレンだってずっと思っていたのだ。

今晩、ユーリはこの部屋にいない。
ガイと一緒に酒を飲みに行くと言っていたけど、きっと目的は酒じゃない。
それならここでやればいいし、フレンだって飲まないわけじゃない。
それはもちろん察したからついて行くなんて言わなかったけど、言えなかったけど。
「女の人じゃなくて……僕にしてよ、ユーリ」
呟いた言葉は空しくて悲しくて、フレンは顔を枕に埋めた。



俺の可愛いルーク、とガイに愛してもらっているルークが。
ユーリの優しい笑みを向けてもらっているルークが。
うらやましくて、妬ましくて、――眩しい。

「ユーリ、ユーリ……ユーリ」
枕がじんわりと冷たくなったけど、顔を上げることはなくフレンは睡魔が思考を奪ってくれるまでそのままじっとしていた。





***
こちらはまだくっついておりませんユリフレ。
(ガイルクがくっついてるかっていうとくっついてないんですよこれで)