<上か下か>


 
最初は少し離れた場所で会話をしていた二人だったが、会話のついでのようにフレンがユーリの隣に腰をおろしてから、だんだん会話が途切れがちになる。
体格がさほど違うわけではないので、すぐ横を向けばある顔に軽く触れて、数回唇を重ねる。

「……なあフレン」
「なに?」
いつもならここでユーリが手早くフレンの服を剥ぐところだったけど、今日はその手を止めて彼はフレンを見つめていた。
「最初からそうだったけどさ……お前、下でいいのか?」
「いいのか、って」
何度も抱いておいて今更、と言いたげな視線がユーリへと送られる。
いや、そこは自覚もしている。

「ほら、お前も俺も男だし。お前も俺をその……抱きたくなることがあるのかって思ったんだよ」
少しだけ言いにくそうにしてから、それでも結局言ったユーリを見つめ返して、フレンは首を傾けた。
「僕がユーリを抱きたいかってこと?」
「ああ」
「抱きたいって言ったら抱かせてくれるの?」
やや予想外な返しにユーリは一瞬眉を寄せたが、聞きだしたのが自分である手前返答は返さなくてはいけない。

「どうしてもってなら、いい」
「え……なんで?」
「なんで、って……」
きょとんを通り越して、明らかに驚いているフレンにユーリの方が困惑した。


ユーリもフレンも男である。
ユーリがフレンを抱きたいと思うことがあるのだから、当然フレンもユーリを抱きたいと思うことがあるはずではないのだろうか。
それともそんなに気持ちいいのか、それならそれでいいんだが――
「抱きたいのか?」
「……抱いていいの?」
「だから、どうしてもって、んなら」
どうどうめぐりになりそうな応答を繰り返すと、フレンは「だってさ」と呟いてからユーリの肩にぐりぐりと額を押し付ける。
待ってくれそれ可愛い。

「僕……経験ないし」
「まあ、そりゃないだろうな」
ユーリとどうこうなる前は経験値ゼロのフレンだ、経験があったらユーリは泣きたい。
「だから上手くないし……それに」
頬を染めてユーリをちらっと見上げたフレンは、またすぐに顔を伏せて消えそうな声で呟いた。

「僕を抱いてくれてるユーリの顔見るの……すき」
「どうしてお前はそうやって俺を煽るんだ」
理性ぎりぎりのところでユーリが溜息混じりに呟くと、フレンはつうっと手をユーリの胸に滑らせてから唇をちょっと持ち上げる。
「わざと、だよ?」
良くわかった。
もう知らない。
「明日は休みか?」
「うん、午前休。午後は会議だけど」

ねえユーリ、とさらに距離を縮めてすり寄ってきたフレンを抱きしめる。
「積極的だな、どうした?」
「わからない」
「まだ夕方だからな」
「じゃあ、後で夜食作ってね」
「……わかったよ」

ユーリは慣れた手つきでするするとフレンの服をキスの合間にはがす。
自身の服も脱ぎ捨てて乱暴に床に落としてから、舌を絡めながらベッドの上に押し倒した。

「あのね、ユーリ」
長い黒髪に指を滑らせていたフレンが、視線を会わせずに呟いた。
「僕のこと考えてくれてて、僕だけ見ててくれるから、抱いてもらうの、すき」
その呟きにユーリは答えることなく、むき出しになっている鎖骨に歯を立てた。





***
何が書きたいかよくわからなかったけど、フレンはユーリを独占したい。