<闇に探す>
太陽が空の端に沈んだ頃、ようやく自室に戻ってきたフレンは、のろのろとベッドへ向かって足を進める。
どさ、と成人男性一人分の体重をいきなりかけられたベッドが悲鳴を上げるが、フレンはそんな事はどうでもよかった。
目を固く瞑って、肺が空になるまで息を吐き出す。
吐息に交えた声は、最初は何の音にもならなかった。
けれど一度紡いでしまえば、後は息をするよりも簡単に声になる。
「……ユーリ」
会いたい。
「ユーリ、ユーリ」
会いたい、会いたい。
何度も何度も名前を呼ぶ。
その裏側に音にならない願いを乗せて。
今頃どこにいるだろうか。
下宿先でラピードと一緒に寝ているだろうか、酒場で飲んでいるのだろうか。
どこで、何をしてるのだろうか。
いつだって一緒にいた。
朝起きる時も、夜眠る時も。
嬉しい時も辛い時も楽しい時も悲しい時も。
ユーリの感情は手に取るように分かったし、何を考えているかを汲み取る事だって容易にできた。
物理的な距離が開いていても、寂しさも怖さも何もなかった。
だけど今は分からない。
分からない事が怖い。
ユーリの心が分からなくなったのは、フレンがユーリに抱く感情がユーリがフレンに抱く感情と異なったから。
こんなにも怖いのは、感情だけでなく体すら離れてしまったから。
そして、それと同時に二人が歩む道も。
「ユーリ」
何度目か知れない名前を呼んで、フレンは力なく最後の息を吐き出す。
会いたいと口にしたら、きっとたまらなくなって会いに行ってしまうだろう。
会いに行ってしまえば、きっと傍を離れられなくなってしまうだろう。
それじゃだめだと思う自分と。
それでいいじゃないかと思う自分と。
どちらの言葉に従えばいいか分からなくなって、フレンは更に目を固く閉じて、闇の中に彼の色を探した。
ねぇ、僕はどうしたらいい。
「――教えてよ、ユーリ」
***
フレンの基礎イメージ。
よくわかりませんが謝らないといけない気がします。