<愛してる、って>



「……ルーク」
それから先の言葉をガイは紡がない。
ただ、頬に指を滑らせて、赤の髪に指を絡ませて。
少し男らしくなってきた顎をなぞって、丸みを失ってきた鼻に触れて。

確かめるようにただ、何度も触れている。
閉じ損ねたカーテンの隙間から忍び込んでくる月の光に照らされている少年に、ただそうやって触れていた。

唇で一文字目を形作って、それ以上は動かさない。
短い言葉だから言うことは簡単だ。
だがそれを言うかどうかは、別だ。

「俺の可愛いルーク」
かわりに落とした酷く甘い。
「今度のお前は、いつまで俺を――」
腰をかがめて顔を近づけると、ガイの金髪がさらさらと触れた。
「おやすみルーク、いい夢を」
祈るような姿勢でそう呟いてから、ガイは頬に触れるだけのキスを落とすとそっと立ち上がる。
とっくに火が消えていた蜀台を持って、足音を立てずに部屋を出て、静かに扉を閉める。


「…………」
暗い部屋に残されたルークはゆっくりと目を開けた。
ガイがキスした頬を片手で押えて、反対側の手はぎゅうと毛布を握りしめる。
「なんだよ……」
呟いて、ぎゅうと目を閉じると寝返りを打った。






「ルーク」
名前を呼ばれたので振り返ったルークをじっと見下ろして、ガイは嬉しそうにただ微笑む。
長いその沈黙を疑問に思ったルークが問いかけたところで、答えが返ってくるわけでもない。
「なんだよまったく」
答えない相手に焦れて睨みつけると、くすりと笑った。
「可愛いなと思っただけだ」
「……ガイ」
いい年した男を捕まえて何を言っているんだ、と呆れ半分で突っ込むと、本当にそう思っただけなんだと涼しい顔で言ってくる。
それにルークがあきれて首を振っていると、短くなった髪の先をすくいながら、今度はそれをもてあそびはじめた。

「だから、なんだよガイ」
「大好きだよ、俺の可愛いルーク」

じわりじわりと耳に登ってくる熱を自覚しながら、ルークは自分の髪をもてあそんでいるガイの手を掴んで引っ張ると。
少し乱暴に口を寄せた彼の耳元で、照れと自棄で言い返した。


「愛してるってくらい言えよ」


そう言ってぱっと身体をはなせば、珍しく顔を赤くしたガイが見れたので、今はそれで良しとした。





***
方向が変わった地震のせいだ。
最初はユリフレだったけどたまにはガイルク両想いなネタにしてみた……してみた?

一週目に見えて二週目。一週目のルーク→ガイの感情はもっとどろどろ。