ちょっとこっち来いや、と引っ張るとスティラはこの先にあるものをある程度察していたらしい。
いい加減付き合いも長いので行動パターンは読まれているのだろう。
まあそれはこちらもなのだが。
「ちょ、ちょっと俺今から用事が」
「リーダー命令」
「圧政反対!」
涙目で訴えたスティラの意見など当然無視して部屋に連れ込む。

ぽん、とベッドの上に投げられたスティラは起き上がって左右を見まわし絶望の色を浮かべた。
すごい顔色になっているが、おそらくキッシュでも似たような顔色にはなる。
「さてと、聞きたいことはわかってるよわよね?」
ベッドの前に立って腕を組んでいるのはコットだった。
「洗いざらい吐いてもらわなきゃ、ですよね〜」
とてもいい笑顔でコットの横に立っているのはノエルだった。

二人とも戦闘の訓練は積んでいないが、女性の恐ろしさは幼少期よりミンスにより骨の髄まで叩き込まれている上、幼少期より顔を合わせている二人の恐ろしさもきっちり知っている。
知っているので逃げられないし、力で抵抗することもできない。
結果的に、二人に見下ろされているスティラは、ただ震えながら事が終わるのを待つしかできないのだった。
こちらを涙目で見てきたところで心は動かないので無駄だと思う。

「助けてキッシュ!」
「そうはいかん」
ぱたりと背後で扉を閉めて、キッシュはスティラに近づいた。
「イシルとの間にあったことを洗いざらい話してもらわないとね♪」
「ちなみに拒んだらシャルロ連れてきてもっかい聞くわよ☆」
「嘘なんかついたらどうなるか……わかってるよな?」
笑顔の三人の前にスティラはがくりとうなだれた。





林の中を息が切れるまで走り回って、スティラはすでに行き絶え絶えの状態だった。
慣れないスカートは足にまとわりついて動きを制限するし、履き慣れない踵のある靴は体力を消耗する。
さぁいよいよだ、と砦に向かうために道に出たところで、スティラはすっ転んだ。
「だ、だいじょうぶ……?」
「たぶん……」
がくっと足が変な方向に曲がった気がして、ゆっくりと動かしてみる。
痛いには違いないが、変な痛みはないのでくじいたわけではない……と思いたい。

作戦開始同時に転ぶとは情けないを通り越して、いっそ笑えてきた。
こんなんで大丈夫なのかと思い始めたところで――近づいてきたのが、イシルだった。

その時点でキッシュがすでに爆笑していた。
「おま、転ぶとか」
「慣れない靴だったんだよお前も一回スカート履いたらわかるって!」
「全力で遠慮する」
ここはきっぱり言っておかなければ、ちらっとこちらに目を向けてきた二人から逃れられなくなりそうだ。


「で?」
「で、って……。近づいてきたから、適当に応対して、砦まで連れてってもらったからキッシュ達に合図を」
「そこはもうどうでもいいから砦に連れて行かれるところまでを詳しく」
「どんな話したの? 転んでたんでしょ、手をかしてくれたりしたのよね?」
ぐいぐい聞いてくる二人にたじたじになりながらスティラは数日前の事を思い出す。

「盗賊がいるからって話をして。転んだ時に足痛くって歩きたくねぇなーと思ってたから手をかしてもらってー……あ、手ぇ切ってたみたいで、その応急処置してもらった」
「はいそこ詳しく」
間髪入れずに命令されて、スティラは戸惑いながら続ける。
「詳しくっても無理だって。布を巻いてもらっておしまいだし。その時は転んだところ見られてるは女装ばれないかひやひやだわで、生きた心地してなかったから記憶なんて曖昧なんだって」
「イシルさんの様子とか覚えてないの!?」
「ねぇよ! 顔なんてまともに見られるわけねーだろ真正面から見られてばれたらどうする!」
「ここはシャルロ君に聞くしかないのか……」
据わった目で呟くコット怖い。


「つーかなんでそんなこと聞きたがるのさ」
ぐったりと二人から逃れるようにベッドからずり落ちるように床に座り込んだスティラと目線を合わせて肩を叩いてやる。
もちろん労うためなどではない。

「そりゃ、イシルが砦の前で出会った金髪女性に一目ぼれして探してるからだ」
「……はい?」
「どうする? 告白をOKするならいつでもお膳立てしてやるぜ?」
満面の笑みで事の流れを教えてやると、スティラはそのままずるずると床に崩れ落ちて動かなくなった。





***
こんなことになった。
スティラはもてます。男性に(