<レッドストーン>
きょろきょろと左右に視線を向けながら、リアトは本拠地内を歩き回っていた。
さっきから探している相手がなかなか見つからない。
今日の遠征メンバーに入っていなかったから、どこかにはいると思うのだけれど。
普段いそうな場所を回ったけれどどこにもいなくて、やっぱり外に出かけているのかもしれないと思いなおしかけたところで、大声で名前を呼ばれた。
どこからの声だろうと人気のない廊下を見渡し、それが窓の外であったと気付く。
「リアトさん!」
「あ、リナ」
窓の外に身を乗り出すと、下でリナがぶんぶんと手を振っていた。
やっと見つけた、とリアトは顔を綻ばせる。
リナに聞こえるように声を張り上げると、小走りにその場を離れた。
階段を駆け下りてさっきの窓の下までいくと、リナはそこに立って待っていてくれた。
晴れやかな笑みを浮かべて、リナは会えてよかったと言う。
「リアトさんが私を探してたってウィナノに聞いたから、探してたの」
「え、そうなの?」
「なかなかリアトさん見つからなくて出かけちゃったと思った」
「僕も動き回ってたから……」
途中で擦れ違って余計に会えなくなっていたらしい。
探してもらって悪い事しちゃったなぁと苦笑いを浮かべる。
「何の用だった? どこかに出かけるの?」
今日も頑張るよー、と言ってくれるのは嬉しかったけれど、今日はそれが目的ではないのだ。
今になってわざわざ探して渡さなくてもよかったのかなとも思う。
けれどあんまり時間が経ちすぎるのもどうかと思ったし、すぐに渡したかったのだ。
「あ、あのね」
リアトはポケットからそれを取り出す。
小さな紙の袋の上から触って中身が入っているのを確かめてから、リナに差し出した。
きょとんと首を傾げたリナは、自分を指差す。
「あたしに?」
「うん」
不思議そうに袋を受け取ったリナは、丁寧に袋を開けて中身を手の上にあける。
それは、赤い小さな石が等間隔にあしらわれているシンプルなデザインのブレスレットだった。
陽に梳かして見れば、中央の石にだけ施された彫りが金色に浮かび上がる。
「わぁ、可愛い」
「この間ナポリスに行った時に露店で見つけたんだ」
「でもなんで?」
「前にすごく心配かけちゃったお礼っていうかお詫びっていうか……」
露店で見つけた時に、リナに似合うと思ったのだ。
けれど単純にそれだけの理由を言うのは気恥ずかしくて、以前リアトが落ち込んでいた時に喝を入れられたのを思い出して、引っ張り出してきたりしている。
あの時のお礼をしなきゃと思っていたのは本当なのだけれど。
リナは気にしなくていいのに、と言いながら、嬉しそうに頬を上気させてリアトに笑みを向ける。
「嬉しい、大切にするね。ありがとう!」
早速手首につけるリナを見ながらリアトはなんだか胸がどきどきした。
満面の笑みを向けられると、わけもなく顔が熱くなって、ブレスレットを通した手首を掲げて似合う? と尋ねるリナに対して、リアトは頷くのが精一杯だった。