翌朝、王国軍はラダトの町に現れた。
テッドもジョウイも昨日の今日だというのによく働く。
兵力を確かめるためにコボルト隊を率いて出陣したリドリーが王国軍に包囲されたため、援軍を引き連れてセノ達が出陣したのだが。

「なんでシグールまでついてきてるのさ」
「いいのー。僕はただの見学者ですー」
「…………」
「ルックだって面倒とか言いながら出てきてるじゃない」
「僕はクロスから帰り際に「面白いものが見れるからぜひ出陣するように」って言われたからね」
「って聞いたら僕もくるしかないじゃない☆」

そして、それは戦場に颯爽と現れた。
遠目でも一段と目立つのは、鮮やかな青を基調とした服だ。
ハルモニアの神官服を身につけた彼は、顔にも特徴的なものを装着していた。

「……あれは」
「猫の……仮面……だって……!?」
「「あんな神官将を送ってくるハルモニアって変人の集まりなのか?」」
同時に言った二人に、周りからも同様の反応がちらほら出てくる。思った事は皆同じらしい。

風に乗って遠くから「聞こえてる! 聞こえてるからな! 覚えてろあいつらぁぁぁぁぁ!!」という絶叫が聞こえてきたような気もするが、空耳だろう。
「いやー、まさかあんな仮面つけてるとは」
「遊んでるの、あれ」
「真面目に考察するんなら、普通の仮面よりああいう奇抜な仮面だと、仮面に注目が集まってその下の素顔へ意識がいかないから正体が割れにくいみたいだよー。それに、時々クロスと入れ替わったりしてるから、それをわかりにくくするって理由もあるんだろうね。って真面目に考えたところで笑えるものは笑える!」
「理由もなしにあんな羞恥プレイしてるんだったら、とんだ変態だよねほんと」
「もしかしたら「俺は猫派だ!」というアピールかもしれないけどね」

見学者であるシグールとルックが好き勝手言っている間にも、王国軍との戦いは着々と進んでいく。
五万と三万。数の上では王国軍の方が上だが、いかんせんルカが引き抜いた奴らは強かった。
そして宣言通りシュウとルックとルカを同じ隊に入れたせいで、当たる隊がことごとく潰されている。

「……うん、やっぱりチートだよね」
「敵の時よりはマシだよ」
無事にリドリーを救出し、目的は果たしたといわんばかりにとっととデュナン軍は引き上げた。
「追ってくるかな」
「向こうも深追いはしないだろう。……こちらの隊とぶつかってまともにやりあえないと、向こうも理解しただろうしな」
シュウの凶悪な言葉はその通りで、王国軍はこちらを深追いせずに撤退していった。

こうして王国軍とデュナン軍の直接対決は、引き分けという事で一時中断されたのだった。



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切るタイミングを見失ったのとどうしてもテッド猫面だけは表に晒したかったので短いけどこれで1つ。