「俺はもう寝る!!」
戻った瞬間テッドは宣言して、座っていたジョウイを蹴り落とすとソファを占領して横になった。
文句は言わせない自信がある。
さっきまで寝ていたはずなのにおかしな事を言うと突っ込む者はここにはいない。
「僕も寝直すよ……」
遠い目でジョウイが呟く。もう寝ても何も起きまい。天魁星達は気が済むまでやり直したはずだ。
「今回は皆参加したけど、皆立ち位置がバラバラで面白かったよね」
「面白くはなかった」
クロスの横でお茶を飲んでいたルックが真顔で言ったが、それでも前回よりは使い倒され具合が軽く済んだのでよかったのではないだろうか。
セノは良心的である。
あくまでもシグールとの比較で、という意味だが。
「満足できました! 皆さんありがとうございます!」
すっきりとした笑顔でお礼を言ったセノは本当に満足そうだった。いい事だ。
「俺は全然よくねえええええ!」
「うるさいテッド。君だいぶいいポジションだったじゃないか!」
クッションから顔を上げて叫んだテッドに叫び返して、ジョウイは床に体育座りをして膝の間に顔をうずめる。
「僕なんか……僕なんか約束の地に来たのがシグールとかもう……どんな罰ゲームかと……」
「まさかの王様エンド☆」
「とんだ裏切りだっ……!」
歯噛みするジョウイに、張本人のシグールは涼しい顔をしている。
「あそこで『ジョウイをフルボッコにする』が選択できてしまった仕様に文句言ってよ」
「倒せばいいだけでフルボッコにする必要はなかったと思うんだけどね!?」
だいたい今回君は何してたのさ、とジョウイはシグールを睨みつける。
ジョウイはシンデレラ真っ青のスピードでエリート街道を駆け上がり、皇王になって軍を率いて整備して戦争してエトセトラとかなり働いた。今回一番働いていると思う。
ただしテッドを除く。
一方、シグールは軍主でもないし戦争にも出なくていいし、おまけにできる軍主その二がいたためにふらりと気ままにパーティインしたりとか、自由すぎると思う。
シグールは相当楽だっただろう、と言うジョウイは間違ってはいない、いないがシグールはぷりぷりと怒り出した。
「んもう! 僕は別口で大変だったんだからね!」
「交易とかモンスター狩りとかじゃないなら言ってみろ」
「クライブイベント進行してた☆」
「…………」
ああ、あの時間が過ぎると発生しなくなる「宿星すべて集めつつとかムリゲじゃね?」イベントか。
「時々ふらっといなくなると思ったら……」
通りで時々疲れた顔して戻ってきてたわけだ、とルックが合点がいったように頷く。
セノにそんな暇がなかったから代理していたのか。
……クライブもかわいそうに。
「ジョウイ、もういいじゃねぇか……もう終わった……終わったんだ……!!」
「そうだねぇ、もう巻き戻るところがないもんね」
ここにいる六人が深く関係した宿星の戦いはこれでおしまいだ。
世界では他にも宿星による戦いが起きているが、元々彼らが関わっていない戦いにこの六人が介入する事はないだろう。
「久しぶりに色々な人に会えて楽しかったです」
「だねー」
「僕は話に聞いていただけの人にも会えたりして楽しかったなー」
笑顔で笑いあう天魁星三人と比べて、残りの三人の疲労具合は何なのだろうか。
特にクロスとか今回色々よく分からないまま動いていたはずなのに、どうしてそんな生き生きしてるんだ。
「なあテッド」
「なんだジョウイ」
床に座ったままソファーにもたれかかってきたジョウイの頭を蹴り飛ばすほど非道ではなかったので、テッドは少し動いて頭を置くくらいのスペースは作ってやる。
「本当にもう、宿星の戦いはこりごりだ……」
「ああ、俺もだよ……」
「……あと、三回もお疲れ様……」
「まったくだ……!!」
これにて、テッド(とルックとジョウイ)の天魁星に振り回される日々は、一応終わった。
一応。
***
これにて「巻き戻しシリーズ」は終了です!
超好き勝手やりました! 楽しかった!
長らくのお付き合いありがとうございました。