「ふぃー……」
溜息を吐いてテッドはマクドール家のソファーの上にひっくり返った。
別のソファーではシグールが全く同じ格好をしている。
ちなみにルックもソファーに座ってぐったりしていた。
「三人揃ってこうだと、気色悪いな」
素直な感想を述べたジョウイの手からビール瓶をひったくって、テッドはガブリと飲み干す。
「お前もやればわかるわ! シグールに引っ張りまわされ突っ込みを入れツッコミの腕ばかり磨き!」
「ツッコミはテッドの特技なんだからしょうがないだろ」
「でも二百年前に戻ってやり直しなんて、不思議な話ですねえ」
クッキーを持ってきたセノに一言礼を言って、シグールはぽいとそれを自分の口の中に投げ入れる。
「だねえ、まあ僕は面白かったからいいけどね。フリックとかフリックとかネクロードとか湯葉とかウィンディとか」
「言っとくけど、僕はそんなに面白くなかったからね……?」
クロスに頭を撫でられているルックが舌打ちと共に呟くと、楽しめるように頑張ったじゃないかとシグールが唇を尖らせた。
「こう見えてもより快適に二週目を送る工夫をしてたんだよ僕は」
「どこが?」
「わあ、ルックって僕のことそんな風に思ってたんだー」
「もう宿星じゃないから言わせてもらうけどね傍若無人軍主!! あんた自分がどれだけムチャやらかしたか自覚あるの!?」
「あったらやらかさないと思わない?」
「それは……………………確かに」
「頷いちゃだめだルック! 心を強く持て!」
上半身を持ち上げたテッドはそれだけ叫んで、再び横になってしまう。
随分と疲労が溜まっているのだろう。
聞けば三人ともひたすら走り回っていたらしいから、そこそこぬくぬく生きている今から思うと殺人的な忙しさだ。
あの頃のようにもう若くないという事だろうか。
「お前がいれば俺はもっと楽だったんだっ……」
テッドの唸り声に、ジョウイはきらめく笑顔を向けた。
「生憎僕はやり直したいとは思っていないから」
御疲れ様でしたとにっこり笑ったジョウイに、僕はやり直したいけどねえとセノが呟く。
その一言にジョウイがフリーズして、ルックが悲鳴を上げた。
「もう嫌だよ! 僕は嫌だ!」
セノがやり直すという事はUだ。
ルックも宿星だ。
「あっはっはっは、大丈夫だルック、セノはシグールほど人使い荒くねぇから」
自分は関係ないと余裕綽々のテッドが笑うと、ルックは分かってないねと眦を吊り上げる。
「僕が嫌なのはシュウだよ!!」
「「………………」」
「ああ……」
「シュウか……」
「そりゃシュウは……」
「……ヤだよなあ」
「僕も苦手だよ……」
口々に同意する一同に、それ見たことか! と叫んでルックは隣に座っていたクロスの膝の上にゴロンとねっころがる。
「僕はもう嫌だ」
「はいはい、そんなスねないのルック」
さらさらとルックの髪を梳いてから、クロスは笑顔で爆弾発言をかました。
「僕もやり直したいなぁ、テッド♪」
「!?!?!?」
テッドの絶叫がマクドール家の屋敷に響いたが、広すぎる本家だったので特に近所迷惑にはならなかったのがせめてもの救いである。
***
クロスジョウイセノの出番がなかったのでここで。
これが次への序章となるか……?