「解放軍の戦士達よ! 終に時は満ちた!」
「友を思え、家族を思え、そして彼らのために戦うのだ!」
「人々の怒りは地に溢れ、嘆きの声は天にこだましている。今こそ、それを止める時だ!」
「死んでいった友のためにも、そしてなにより未来のために。我らは進まねばならない!」
マッシュ達の演説が朗と響く。
尚、レックナートの乱入&復活劇はなかった。今回復活する人がいないので当然だろうけど。
……それともボイコットだろうか。

「我ら解放軍の旗の下、シグール殿の下……」
「勝利を!!」
シグールが吼えて拳を突き上げると、勝利を!! と全員が拳を突き上げて絶叫する。

その鼓舞されっぷりに満足して、ひょいっと段から下りるとルックが苦い顔で呟いた。
「あんたそれ、「僕に勝利を」でしょ」
「もちろん♪」
というわけで本音をうまく隠してお決まり(らしい)の決起をやってから、シグールは軍を率いてさっさとグレッグミンスターへと攻め込んだ。
とはいえクワバの城塞はすでに落ちているので、残りの仕事と言えばグレッグミンスター周辺の帝国軍を蹴散らすだけだ。















「よっ、遅かったな軍主」
クワバの城塞から軍を率いていたテッドが馬を駆ってやってくるので、手を差し出してハイタッチした。
「お疲れテッド。僕の決起を見せて上げられなくて残念だよ」
「いや……完全に想像つくからいいわ。帝国軍はもういねぇ。ドワーフや戦士の村に忍者も加勢してくれたしな」
「ありがと、じゃあ行こうか」
「……あ、俺も行くんですね」

別にいいんだけど、とかぐちぐち言っているテッドを引っ張って、シグールは最終決戦の支度を整えた。
メンバーはもう決めてあったし、全員きっちり育て上げている。
というか育てるまでもなかった人ばかりだ。
「行ってくるねマッシュ」
「はい、ご武運を、シグール殿」
くすくすと笑って、シグールはパーティを率いて、グレッグミンスターに足を踏み入れた。





荒廃した都には、確かにかつての面影はあったけれども。
全く違う場所に見えて、切なくなる。
戦争はあのきらびやかだった都を、ここまで変えてしまうものなのだろうか。
「たぶんBGMのせいだと思うよ」
「待ってくれシグール、俺のしんみりした感想を返せ」
「安心しなよ、Uでは元に戻ってるし」
「だからお前らそういうのはやめてくれと」

パーティはシグール、テッド、ルック、ビクトール、フリックにオデッサだ。
相変わらずいるはずのない面子がちらちらしているが、たぶん皇帝は分からないしいいだろう……うん。
もやもやそんな事を考えながら、一行はさっさと猫の子一匹見えない都を通りすぎ、城の中に入る。
煌びやかな王宮の入口でシグールは立ち止まって、くるんと首をテッドへ向けた。

「……テッド」
「なんだ?」
何か思うことがあったのだろうか、いや……さすがにあるんじゃなかろうか。二回目とはいえ自分の人生を大きく変えた戦いの最終決戦である。
「アイン=ジードはどうしたの?」
「ああ、あの人ならお前らが来る前に俺がさっくり後ろからぶん殴って捕まえてあるけど」
「そのえげつなさに惚れ直すよ☆」
きらきらの笑顔で言うと、シグールはわきわきと両手を動かす。

「さあ皆……心してかかろうね……最後のダンジョンに!」
「宝箱ね!」
「経験値だね」
うきうきとした顔のオデッサとルックが言うと、ちっちっちとシグールは指を振った。
「あとお金もねv」
「「まだ金が要るんかい!!」」
思わずコケながらテッドとビクトールとフリックが突っ込むと、坊ちゃんは当然と言わんばかりに頷いた。
「所持金最大値まで頑張ろうね」
「……………………マジですか」

思わずシグールの所持金の桁数を数えて、最大値までそんなに遠くなかったことにほんのり安心しつつ、テッドは噴き出していた冷や汗を拭う。
しかしなぜ今更お金が。
ポッチを増やす必要が。
だってもう装備は最高級だし、武器も鍛え上げているし、アイテムも必要ないし、この先に店があるわけでもないし、ラスボス後のやりこみ要素があるわけでもないし、次の周にお金が引き継げるわけでもない。
では何のために?

内心首を捻っていたテッドだったが、そんな事はお構いなしに一行は先へ進むので、皆と一緒に歩みを進める。
何度も(行事とかで)来た事がある城だが、兵士がほとんどいない今は、なぜだが酷く荒れて見える。
「そしてなんでモンスターがこんなに」
「大方ウィンディが召還したのがうようよしてるんでしょ」
うざいわねえと笑顔でオデッサが放った矢が一撃で敵を消し去り、一同は頬をひくつかせた。
以前にも突っ込んだかもしれませんが、そのモンスターはシグールが何度か殴って以下略。

どんだけこの人スペック高かったんだ、と思いながらずんずん歩みを進めていくと、一箇所でシグールが立ち止まった。
「どうしたシグール」
「皆、この上が庭園だ。そこに……皇帝がいる」
心してかかるんだよ、のような真っ当なことを言うかと思ったら、シグールはずっしり溜まった金袋を取り出した。
「小分けにして渡すから。ネコババしたらメッ♪ だよ」
「は?」
テッドの手にも小さな(とは言ってもかなり重いが)袋が押し付けられ、頭の中に「?」を浮かべながらゆすってみる。
……うん、小銭がたくさんだ。
モンスターから分捕った分もかなりあるので、当たり前かもしれないが。

「これ……どうするんだ?」
「僕の指示に従ってね」
テッドの質問は当然のように無視され、一同は最上階へと足を踏み入れた。



***
さて、さくさくと沈めにいきます。