結局何がフラグだったのかは分からなかったが、祠が光ったので一同は未来に戻る事になった。
村長にシグールが何かを説明しているのを、一同はちょっと離れた場所で見ていた。
子テッドはこれでお別れだよと話してからというもの、名残惜しそうに皆の回りを離れない。

話が終わったのだろう、最後にシグールが深々頭を下げる。
世話になったお礼とかなら、と思ってテッドが近づくと、言葉が聞こえた。

「勝手なお願いかもしれません、でも……テッドにそれは継承させてください。今すぐ村を出す必要はないでしょう。でも……でも、紋章を受け継がなかったら、僕はテッドと会えないから」
「はい、わかりました。村を守ってくださって、ありがとうございます」
「僕がしたかっただけですから」

もう一度頭を下げてこちらへ走ってきたシグールを、何も聞いていないふりをしてテッドは迎えた。
「よぉシグール、お疲れ」
「テッド、聞いてたでしょ」
涼しい顔で言われて、ぎくりとなったが、あえてシラを切るのはシグール相手には無意味だったので潔く認める。
「最後ちょっとな。その……お前がそんな風に思っててくれて……俺は、嬉しい」
照れくさくて視線を逸らし、頬を引っかきながら言った台詞に、シグールはさっくり返す。
「うん知ってる」
「待て! ここはもっとしっとりした台詞くれ!」
「僕はテッド「で」遊べるから今の生活気に入ってるよ」
「せめて「と」にして! なんで「で」なんだ!? これ始まってからお前俺に冷たくないか!?」
「さて皆、戻るよ」
「俺の抗議を聞いてくれぇええ……」

ガクリと肩を落としたテッドを無視して、一同は子テッドと最後の別れを惜しんでいる。
なんとものんびりしているが、祠の光がいつ消えるか分からないのでそんなにゆっくりもしていられない。
テッドは子テッドを抱き上げると頭上に持ち上げた。

「頑張れよ」
高い高いをしながら微笑むと、大きな目でまっすぐにテッドを見た子テッドは頷く。
「うん!」
「あっ、テッドずるい! 僕もするー!」
さっとテッドの手から子テッドを奪ったシグールは、ぎゅうぎゅう彼を抱きしめて笑った。

「テッド」
「なあに?」
「ここでさようならだけど」
「ぼくはつれていってくれないんだよね」
「うん。でもいつか会えるから。必ず会えるから。僕は君を待っているから、探しにきてね」
「うん! わかった!」
元気な返事をした子テッドを下ろして頭を撫でて、立ち去ろうとした時に「がんばるね!」と子テッドは言った。

「がんばって、大きくなったらシグールおにいちゃんみたいになる!」
「俺は?」
自分を指差したテッドを子テッドはじっと見て。
「テッドお兄ちゃんはヤだ」
思いっきり首を振った。

「ぷっ」
「ブッ」
「ブフッ」
「あははははははははははははは」
「皆、笑っちゃテッドが可哀相だよあはははははは!」
「…………………………………………お前ら、笑うな」

思わずよろけたテッドだったが、よろけてる暇もなくツッコミに回る。
そんな一同を不思議そうに見ていた子テッドだったが、祠に入っていくときは全員に平等に「さよならー!」と言いながら手を振ってくれたので(たぶん)、許す事にする。










「許せねぇのはてめぇだ星辰剣!!」
戻った瞬間、剣に足蹴りを喰らわせたテッドの心境は、他の五人も察するに余りあるだろう。







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しんみりする暇はこのシリーズではありません。