るんたった、と鼻歌を歌いながらシグールは草原を突き進む。
その後ろを肩を落としてついていくテッドを、くるり振り向いてシグールは満面の笑みを浮かべた。
「テッド、どうしたの?」
「……お前、は、疲れ、ないのか」
足元にはもさもさやイノシシの亡骸がごろごろと転がっている。
それは二人の歩いてきた道標のように点々としているのだが、無論これを倒したのはシグールとテッドの二人だ。
そしてここに至るまでには、それは語るも涙のエピソードがあった。
二百年の間に戦闘能力が化物レベルにまでなっていたはずの二人のステータスは、見事に当時のレベルにまで下がっていた。
アリや蚊に負けるレベルに。
そうとも知らずにグレッグミンスターを出た二人は、いきなりクロウ×三とエンカウントして、防御力が紙のようなテッドは戦闘不能に陥った。
新たなトラウマのできあがりである。
……その後のレベル上げについては触れまい。
そしてある程度のレベルにまで達した二人は、このあたりにおいては敵なしの状態になったのでが。
「シグール、せめてこう、逃がしてやるとかさ」
「僕に喧嘩売っといて、無事でいられるとでも?」
「…………」
せめて本能で逃げてほしいと祈るテッドだった。
「おお、今度はイノシシが二匹」
「……なあ、もう紋章使おうぜ」
「そのことなんだけどさー。使ったら、やっぱりウィンディが来るのかな」
「あー……そういや使わないようにしてたっけ、当時」
「……忘れてないでよテッド」
「クイーンアントで使ったせいでウィンディに見つかったんだっけか……別に今度は城からの呼び出しに応じないで逃げればいいだけだろ?」
「そうなんだけどー」
イノシシに打ち込んだ棍をひらり回転させて二匹目も叩きのめしたシグールは、小首を傾げてテッドに笑顔を向ける。
こういう時は碌な事を考えていないと経験から知っているテッドは、げんなりとした色を更に濃くした。
「ちょっと色々考えてさ」
情報はある。
経験としての知識もある。
力はまだ足りないけれど、これからつければいいだけの話だ。
「せっかくどこの誰とも知らない人のおかげでもう一度歴史を繰り返すことになったのに、まるっと同じじゃつまらないと思わない?」
「……近衛兵続けるのか?」
それはない、とシグールは首を振る。
「解放軍は入るよ。もう一度赤月を倒してトランを作る。ウィンディも倒す。だけど、テッドもグレミオもマッシュも絶対死なせない。オデッサだって助けてみせる」
「テオ様はどうすんだ」
「……父さんは頑固だからなぁ」
くしゃりと苦笑にシフトさせた表情を見て、テッドは溜息を吐いてがしがしと頭を掻いた。
どうせならできる限りの最適な手を目指すのが自分達だろう。
腹を決めて、テッドは笑った。
「お前、テオ様似だもんな」
「そうだよ。僕も頑固だもん」
「だったらテオ様も助けるって断言しとけ」
「…………」
「お前の目の前にいるのが誰だと思ってるよ」
「……テッド」
「お前達の参謀様だぜ?」
「そうだった」
頼りにしてるよ、と普段の笑みに戻ったシグールに、応とテッドも胸を叩いた。
「ようし目指すぞ僕の僕による僕のための二週目!!」
「…………」
あれ、さっきまでのしんみりした空気どこいった。
「好き勝手していいってあったもんね!」
「……そうだね」
「というわけで今回テッド捕獲イベントなしでよろしく」
「捕獲言うな」
至極楽しそうなシグールに、ちょっとシリアスが入ったかと思ったテッドはがっくりと肩を落とした。
「とりあえずはいよるねんえき狩りにいこっか」
語尾にハートをつけて、至極楽しそうなシグールは、いつものシグール様だった。
「今回は僕とテッドの二人分必要だから、頑張らないとね!」
「…………」
サラディに行く前に虎狼山からはいよるねんえきの姿が消えそうだ。
***
というわけで当分ソウルは封印。
目標は誰も死なないEDです……バルバロッサだけはどうしようもなさそうなんですが。