※2007年の2月に「バレンタインでチョコをあげるなら誰か」投票をやりました。
1位になったら夢小説。結果は当時の浅月の日記より抜粋。





テッド→ダントツの80個獲得。
コメントも多かったです、愛されてるね旦那。
意外と本命宣言もあって驚きでした。

リーヤ→……あらためて人気を実感しました65個。
大好きって言ってもらえてよかったねリーヤ。

シグール→人気投票とチョコとはまた別らしい45個。
それでもコメントの熱烈度ではダントツだと思います。

クロス→最後まで安定していました21個。
ただこの人コメント少ないんです。
淡々と個数だけ増やしていく……もしかしてホワイトデー目当てなんでしょうか……。
それともルックの報復が怖かった、とか?

ルック→19個。コメントも穏やかです。
このメンバーの中ではセノに並んで甘党なので、結構喜んでたりするかもしれません。

ラウロ→なんだかんだで15個。
コメントに「女王」ってあった時は噴き出しました。
でも間違ってない、間違ってないよ!

ジョウイ→2個ももらえました(待
今のままでいい、とコメントも頂き、つまり今年も体を張って頑張ってねということですね(違うから

セノ→2個。
たぶんチョコをあげる対象というよりも、一緒に作ったりとか味見をしてもらったりする立場なんでしょうね・・・。

リアト→2個。
おそらくセノと同じ、かな?「頑張ってね」みたいな意味合いの貰い方で(笑


 

などという結果になったため、1位の人の夢を書いてみました。
可愛らしい主人公ではありませんのであしからず。
なお、主人公の名前は「リーフ」です。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

※テッド夢です。

 

 

 

 

 



あのひと。
いつも他愛のない話をしながら、買い物をしていく。
笑顔ばっかりの、あのひと。



「こんちはー、あれ、今日はリーフなのか」
「ええ、いつもの?」
んー、とカウンターの前で考え込んで、テッドはむむむと眉をしかめる。
「今日は特別なんだよなー」
厳しいけどなー、パンは焼きたてじゃないと文句言うだろうしなーとぶつぶつ言いながら商品を見比べている。

しばらく前にグレッグミンスターに越してきたと聞いた。
街のはずれの、小さい小屋に一人で住んでいるって。
戦争孤児なんだって父さんは言ってた。
行き倒れになっていたところを、テオ将軍様が拾ったんだって。

「やっぱこっちの」
悩んだ挙句そう言ったテッドに、ここのパン屋の売り子娘のリーフは笑って紙に包む。
「はい、どーぞ」
「あーっ、十ポッチたりねーっ!」
財布をひっくり返して、ポケットを引っ張りだして、わたわたしながらテッドはそれでも十ポッチが見つけられない。
「……ま、まけて?」
と上目遣いに言ったテッドに、リーフはにっこり微笑んだ。
「いつものなら八ポッチ安いから、二ポッチまけてあげるね」
「えーっ!」

頼むよーと言ったテッドに、リーフは包んだパンを脇において、古いほうのパンを取り上げる。
それから唇を尖らせて、わざとらしく彼の物まねをした。
「「頼むよー」こっちも経営厳しいんだから」
「うう……な、なっ、一生のお願い!」
パン、と手を合わせて頭を下げたテッドをちらと見て、リーフはため息をつく。
「だぁーめ、一昨日それ肉屋のオバサンにしてた」
「……うぐ」
な、な、な、とテッドはずずいと顔を近づけて懇願する。
「今日だけ! 今度絶対埋め合わせするから! 今日だけ!」
「なんで?」
純粋に疑問に思ったから聞いてみると、テッドはぱっとその顔を輝かせて答えた。
「ダチが家に来るんだ!」
「ダチって……え、マクドール家の坊ちゃん?」

眉をひそめたリーフに、そーそー、とテッドは笑顔で頷く。
「だからさ、アイツ無駄に舌肥えてるし、少しはマトモなもの用意しておきたいし」
な? と言ったテッドに、リーフは安いパンと彼の頼んだ高めのパンの間をしばし睨み。

「――交換条件」
「何!? なんでも聞く!」
「来週の日曜日、空けといて」
「いいぜ! さんきゅ、ありがと、感謝してる!」
包みを受け取ったテッドは、満面の笑みでパン屋を後にした。





さて。
予定は空けさせたし。
たぶん彼はわかってないのか興味がないのか。
――まあ、いいわ。
その自覚のなさを後悔させてやる。





場所も時間も指定していなかったが、リーフの言った日の朝早く、いつもなら店が開く時間にテッドはもうそこに立っていた。
「よ」
はよー、と言った彼に、店に来たリーフは呆れた。
こんな朝早くから来るやつがいるか。
大体今日は店は休みだっつーの。
「早すぎ」
「え、だってリーフ時間言ってなかったし」
遅いよりはいーだろ? と言われてリーフは溜息を吐く。
まあいいか、昨日で準備はほとんど終わっているし。

「外寒いでしょ、入って」
「おっじゃましまーす。お、すっげー、さっすがパン工房」
店の中を覗き込んだテッドは感嘆の声をあげ、きょろきょろとそこらじゅうを散策しだす。
「ちょっと、うろちょろしないで」
「いーじゃん、見せてくれたって」

「そこに座る!!」
「はいっ!」
ぴしっと言われてテッドは反射的に手近な椅子に腰をかけた。
ほとんど脊髄反射である。
リーフが飲み物持ってくるといって姿を消してから、喉から笑いがこみ上げてきた。
怒鳴られて座ってしまうってどうだ自分。

しばらく自分に自分で笑っていると、リーフが何かを手に持って戻ってくる。
「はい、ホットミルク」
「どーも……ぅつ゛ぁつー!?」
ぽんと渡されたカップから一口――半口――すすってテッドは悲鳴をあげる。
かろうじて中身がこぼれるのは持ち前の反射神経で防いだ。
「な……な……なんだこれ!」
「沸騰済み」
「沸騰させんなよ! 牛乳ってのはな、65度越えるとまずくなるんだよ!」
へー、とそれだけ返してリーフは竈の中を覗き込む。
飲めないほど熱いミルクは脇に置いといて、テッドは何してんだ? と聞いてみた。
「ひ、み、つ」

わざとらしく切って答えて、リーフは振り向いてにやりと笑う。
そこはかとなく見た覚えのある表情だったので、テッドは無言で椅子に座りなおす。
「で、こんな朝から俺に用ってそれ?」
「こんな朝から来たのはテッドでしょ、わたしは後でテッドの家に持って行こうと思ってたの」
「その中身くれんの?」
「まあね」
パン? ケーキ? ここの店のお前が半分焼いてるんだろ? 何でもいいな、何でもオッケー!
目をきらきらさせてまくし立てたテッドに、リーフはそれもお楽しみ、と言って竈の火を調節する。
「焼き物っつーオチはなしな?」
「パン屋の竈で焼き物なんかやったら父さんに怒鳴られるわよ」
それもそーかと頷いて、テッドはやがて漂ってくる香ばしい匂いにうっとりする。
金銭的にはかつかつの生活だから、パンなんて主食だったら万々歳、ケーキなんてのも大歓迎。

「あれ? そもそもなんで俺にくれんの?」
「テッド、鈍いねって言われない?」
「たまに」
わかっていなさそうなテッドをみて、リーフははあと溜息を吐く。
それもわざとらしく。
――そう、たぶんわかってないと踏んでの計画だし。
「それも秘密。すぐわかる。それよりホットミルク、たぶんもう飲めるけど」
「……あ、どーも」
ずず、と一旦置いたミルクをすすり、他愛もない話をすることしばし。



香ばしい香りが立ち込めた工房で、リーフは竈からそれを取り出す。
「おっ、すっげー!」
素直に感嘆したテッドに背を向けて、リーフは手早くそれを包み、ほかほかのままでテッドに差し出す。
「どーぞ」
「さんきゅ! おお、うまそー……ん?」

りんごたっぷりアップルパイ。
パイ生地で丁寧に作ったハートマーク。
これが見えないわけがない。

「テッド、今日は何の日?」
「……何の日?」
「バレンタインデー」
「あ、アーっ……あーっ……あー……」
パイを抱えたままテッドはあーを繰り返しつつ、かくかくと頷く。
「でね、女の子からプロポーズされてプレゼントもらったら、受けなきゃいけないの」
「え!?」

ほうらやっぱり。
知らなかった。

「そ、それは普通、プロポーズしてからプレゼント渡すんじゃねーの……?」
「そうだったかな?」
そらとぼけたリーフに、テッドはえーっとと汗をかきながら突っ込む。
「っつーか俺?」
「そ、テッド。何かご不満でも?」
「え、イヤ、不満ってわけじゃないですが、エーット」
んーとさ、と困ったような顔をしたテッドは、リーフから視線をそらす。
「俺は……リーフのことは、嫌いじゃないけど。だけどさ、俺はさ」

俺は、と呟いたテッドの頭をすっぱんとリーフははたいた。
「な、なにすん」
「知ってるわよ、テッドはマクドールの坊ちゃんのことしか頭にないんでしょ」
「……はい?」
「でも言っとくけど彼はいいトコのお坊ちゃんなんだから、どっかで結婚するんだかね、その時にテッドはわたしとすればいいの、わかった?」

わかった? と再度言われて、テッドはそれでもうんと言わない。
「だけど、俺は――」
「返事は!」
「……いや、だから」
「テッド、女の子にこれ以上恥かかす気? はい、は!」
「はっ、はい!」

ぴしっと背中を伸ばして言ったテッドに、よろしいとリーフは満足そうに笑った。



あの人。
いつも笑顔ばかりのあの人。
あなたが一番楽しそうに笑うのは、
わたしのことじゃないのが癪だけれど。

いいわ、いつか絶対後悔させてやる。