<レックナート様の日記3>





××××年 ×月 ××日 水

カミングアウトされました。
まああれだけ人前でクロスがくっついてて最近はルックも嫌がってなかったのでもしかしたらとは思ってましたけど。
クロス、笑顔で報告なんかしなくてもいいんです。
しかも夕食の席で。
おかげでスープを吹いてしまいましたもったいない。
ルックがとても静かだったのが気になりましたが……大丈夫そうです。

夜は部屋に来ないでくださいねとか言われても全く行く気はありません。
というかくっついたならさっさと新居でも探して出てってください。


それにしてもセノ達といい真持ちって……いえ、何でもありません。





太陽暦×××年 ×月 ××日 水

久々に料理をしてみました。
最後にしたのはルックが来る前なので本当に久し振りだったのですが、思ったより上手くできました。
帰ってきて机の上に並んでいる料理を見て、ルックとクロスは驚いたようです。
料理できたんですねと言われましたが、これくらいは当然でしょう。

しかし、二人とも一口目で手が止まっていました。
心なし顔が白いような気もしましたが。
私も食べましたが、クロスやルック程とは言わないまでも満足できる味だったのですが……好みに合わなかったのでしょうか。
訪ねてみたら、笑顔で「僕らが作るのでレックナート様は大人しく食べててください」と言われました。
目が真剣だったので素直に頷いておきました。
まあ自分で作るより作ってもらった方が楽なのでいいんですが……そんなに不味かったんでしょうか。





太陽暦×××年 ×月 ××日 水

ルックがどこからか女の子を連れてきました。
帰ってくるなり「弟子にする」とか。
まだまだ自分も未熟だというのに何を言っているのでしょう。
けれど放り出す事もできませんし、ルックの弟子としてここに住まわす事になりました。

外見からして判断できない人間が周りに多すぎるので判別しにくいですが、まだ五歳程でしょうか。
最初はがちがちに固まっていましたが、クロスが抱え上げて笑いかけると、少し緊張が和らいだようでした。
事情も話されずにいきなりこんな辺鄙な場所に連れてこられたら緊張するのが当たり前です。

今夜は歓迎会だと言うことでクロスはケーキを焼くそうです。
その前に汚れているから風呂に入れてあげてくれと少女を預けられました。
自慢ではないですが、子育てなどしたことありません。
……ルックの時はほら、もう十歳越えてましたし……手も掛からなかったし。
少女はセラというそうです。

ふと思ったのですが、セラの世話をルックがするはずもなくつまりクロスがするわけで……。
……どうかまっとうに育ってくださいね。




太陽暦×××年 ×月 ××日 風

テレポートで夜這いをかけようと思い立ちました。
ほとんどの人はすでに慣れてしまって突然現れても驚いてくれません。
けれどよくよく考えたら、まだ行っていない人が一人だけいました。
天魁星になる事無く三百年生きていたので私の出番がなかったのですね。

法則に則って枕元に現れたら、素敵な反応を返してくれました。
門の紋章冥利に尽きますね。
隣で寝ていたシグール共々服を着ていてくれて何よりです。
というかあの2人はそういう関係なのでしょうか。
これでそうだったら真持ちは本当に……いえ、考えるのは止めておきましょう。
後日クロスにカメラを渡されました。
これで何を撮ってこいというのでしょうか。






太陽暦×××年 ×月 ××日 土

ルックが家出しました。
星の動きから、行き先はおそらくハルモニアでしょう。
それも定めなのですから受け入れなくてはなりません。

けれどルック、貴方はとても重要な事を忘れているのではないでしょうか。
世の中星の動きなど全く意に介さない者達がいるのを。

どうしてセラは連れて行ったのにクロスを連れて行ってくれなかったのですか。
もしくは、せめて私の安全の為に手紙くらいは残していってくれてもよかったのではないでしょうか。
お陰で貴方がいないと分かった途端に物凄い勢いで詰め寄られて、寿命が百年程縮んだ気がしました。
グレッグミンスターまでテレポートで送らされたので、これから何を彼等がするのかは検討がつきます。

星の動きと星を背負う者達の力、どちらが勝るのでしょうね。
……考えなくてもわかりそうですが。





太陽暦×××年 ×月 ××日 風

ルックが帰ってきました。
なんだか心身共にボロボロな様子でしたが、誰の所業かはわかり切っていますし自業自得なので同情もできません。
……それでも生きて帰ってきた事に喜びましょう。
二度と会えないと思っていた愛弟子に再び会えたのですから。

それにしても、先ほどからルックの部屋から延々と呪詛のようなものが聞こえてくるのはなぜでしょう。
しばらくの間は書斎から出ないほうが私の身の安全的にも良さそうです。
シグール達もいることですし、あまり関わらない方が賢い選択でしょう。

ああ、落ち着いたらセノのところに様子を見に行くとしましょう。
セノならきっと快く迎えてくれるでしょうから。





太陽暦×××年 ×月 ××日 火

今日セラの『彼氏』を紹介されました。
グレミオさんの紹介で知り合った、六将軍クワンダ・ロスマンの息子とか。
名前はええと……そう、レストでした。
なかなか気立てのいい青年でした。
セラも幸せそうだったので何よりです。
私の孫弟子なのですから、やはり幸せになってほしいですから。

とりあえず、頑張りなさいと労っておきました。
最大の難関は次でしょうから。
セラへの愛を盾に頑張ってもらいたいものです。
勝てないだろうけど。





××××年 ×月 ××日 火


午後のお茶を楽しんでしたら、地平線の向こうで赤い光を見ました。
十中八九クロスの紋章でしょう。
彼等は確かハルモニアの追手から逃げるために旅に出ていたはずなのに、紋章を開放などしてよいのでしょうか。
……まあ彼等ならどうとでもなるでしょうが。
最近ハルモニアの動向がおかしいとの話なので、その撃退だったのかもしれません。

それにしてもヒクサクも何を考えているのでしょうか。
彼らに喧嘩を売ったところで勝ち目がないどころか千害あって一利なしだというのに。
そろそろボケ……? 一年中室内に篭っていたらそれも当然かもしれません。
やはり私のように日頃から健康を心がけなければ。
……いえ、私はまだまだ若いですが。


何にせよ私には関係のないことです。
ああ、そろそろマクドール家に行く時間ですね。
昨日の特製シチューは絶品でした。
今日の夕食はなんなのでしょう。





太陽暦×××年 ×月 ××日 雷

久々に誰かのところに顔を出そうと思ったのですが、最近は新しい星が現れる事もないのでつまりません。
知り合いだと夜訪れると非常に恐ろしい事が起こりそうなので、今頃どこかを旅している彼等のところは止めておきましょう。

なのでヒクサクの所に行ってみました。
考えてみると彼と最後に会ったのはいつだったか思い出せないくらい昔でした。
十年ほど前に感謝状を送ったきりでしたっけ。
現れた私を見て非常に嫌そうな顔をしながらもお茶を用意させるあたり人のいい方です。
私の分の毒見をさせようとしたらさっさと代えさせてましたが。飲むくらいの度胸を見せればいいものを。
話を聞いていると、どうやらヒクサクはルックがハルモニアに戻ってまた脱走したのは知っているようでしたが、今どこにいるかは知らないようでした。
それどころか追手がかかっているのも知らない様子。
おそらく上層部の誰かが勝手に送っていたのですね……。
ここで教えない方が後々面白い事になりそうなので黙っていてもいいのですが。
余りに一般兵が可哀想なので少し教えてあげようかとおもったところでタイミングよく伝令が飛び込んできました。
なんでもルック達を追跡していた兵士団が全滅したんだとか。
それを聞いた時のヒクサクはぜひ写真に残しておきたかったものです。
あれらに手を出すなんてなんて身の程をしらないというか無謀というか命知らずというか。
忙しそうだったので、トドメだけ刺して帰ってきました。
たまには旧知の所へ行くのもいいですね。